3.2能動素子(2)ダイオード
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◎ダイオードの特徴
ダイオード(diode)は,整流作用をもち,電圧に応じて電流が非線形に(急激に)変化する半導体素子である.
※整流作用:電気を一方向にしか流さない働き
※ダイオードといえば現在は半導体素子のみであるが,過去には2極真空管型のダイオードが存在した
半導体ダイオードはP型とN型半導体を接合(PN 接合)したシンプルな構造である.
P型半導体側をアノード(陽極),N型半導体側をカソード(陽極)と呼ぶ.
両極間に電位差が印加されると,電位差の正負によって電流の有無が生じる(図3.21).
(a)アノード側電位 > カソード側電位 ⇒ 流れる(順方向)
(b)アノード側電位 < カソード側電位 ⇒ 流れない(逆方向)
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図3.21 アノードとカソード
◎ダイオードの見方と命名規則
一般的なダイオードの見方を 図3.22 に示す.
ダイオード本体に印(帯)のある側がカソードである.
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図3.22 ダイオードの見方
ダイオードの型名には命名規則がある(図3.23).
旧来は"1S + 登録番号"だったが,種類が増えたため,"1S"と登録番号の間に用途を示す記号が加えられた.(用途記号がないものもある)
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図3.23 ダイオードの命名規則
◎発光ダイオード(LED)
LED(Light Emitting Diode)はダイオードの一種で,可視光発光する.
LED の用途としては視認・照明デバイスの他にも,フォトセンサ,フォトカプラ,光ファイバ通信の部品などが挙げられる.
最近では数 W クラスの高輝度高出力な LED が開発され,低消費電力な照明デバイスとして建築から自動車まで照明の世界を塗り替えつつある.
https://gyazo.com/dfe589c237e3cf9aba344b5114916c3fhttps://gyazo.com/67b2105c6c720525ae955b5f1b0cc18a
図3.24 LED のピン配置と記号
LED は様々な形状のものが存在するが,一般の回路構成部品としては,図3.24(a)の弾丸型が馴染み深い.
図に示すように,足の長い方がアノード(陽極),短い方がカソード(陰極)である.
回路記号は図3.24(b)が旧記号,(c)が新記号である.
一般のダイオード同様,アノードの電位をカソードよりが高くすると順方向電流が流れ,LEDが点灯する.
印加電圧と許容電流によって適合する型番があり,規格表にまとめられている.
よく用いるタイプの LED では,1mA 程度の電流から発光が視認できるが,通常は順方向電圧 2V 前後,順方向電流 5~20mA 程度に設定して回路設計することが多い.
※後述のようにLEDの定格電圧は低いので電流・電圧には留意
◎ダイオードの規格値
表3.6 に,本実験で使用するいくつかのダイオードについて,ダイオード規格表や光デバイス規格表に記載された重要な値を抜粋する.
表3.6シリコンダイオードと発光ダイオードの規格表
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注意しなければならないのは,表3.6 からわかるように,シリコンダイオードは最大定格電圧 VR が 30[V]~35[V] であるのに対して,LED の最大定格電圧は 5V 程度と低いことである.
このため,LED はダイオードの仲間でありながら,電圧や電流が大きく変動する信号の整流用途には使用できない.
◎ダイオードの $ I−V特性
ダイオードに印加された電圧がある値になると急激に電流が流れ出す.この電位はダイオードの種類によって大きく異なる.この特性を静特性と呼ぶ.
図3.24 に,数種類のダイオードの静特性($ I-V 特性)の例を示す.
https://gyazo.com/fb3bae707a813f22d7f45bc264c5660a
図3.25ダイオードの静特性
グラフは,ショットキーバリアダイオード(SB),ゲルマニウムダイオード(Ge),シリコンダイオード(Si),LED(赤),LED(黄),LED(緑),LED(青)である.
急激に電流が変化する一般的な値を挙げておく.
table:表3.7 電流が変化する印加電圧
ダイオード種類 電圧[V]
ショットキー 0.2 程度
ゲルマニウム 0.2 程度
シリコン 0.6~0.7 程度
LED(赤/黄/緑) 2.0 程度
LED(青) 3.0 程度
※ただし実際の製品の値は様々
一般に,ダイオードにかかる電圧 $ V_D と流れる電流 $ I_D は,以下の式によって表わされる.
$ I_D = c \cdot I_S \cdot \left\{exp\left( \frac{qV_D}{mkT}\right) − 1\right\}
$ I_S : 逆方向飽和電流 [A]
$ m : エミッション係数 > 1
$ q : 電子の電荷 = $ 1.6 \times 10^{−19}[C](クーロン)
$ T : 絶対温度 = $ 273 + 室温 [K](ケルビン)
$ k : ボルツマン定数 = $ 1.38 \times 10^{−23}[J/K]
$ c : 補正項
図3.25 のように種類により特性が変わるのは,逆方向飽和電流 $ I_S やエミッション係数 $ mがダイオードの種類によって異なるためである.
※$ I_S: ダイオードに逆方向電圧(逆バイアス)をかけたときの,本来流れないはずの微弱電流.接合面の断面積に比例する.電流量は千差万別
※$ m: 理想係数とかダイオード係数とも呼ばれる.再結合電流成分がなければ"1"=理想ダイオード.空乏層内に不純物や欠陥があると 1 以上.
エミッション係数 $ m は通常 1~2 の値をとるが,間接遷移形の緑色や青色 LED などでは 3 近い値になる.
※小電力用汎用 Ge ダイオードは $ m \simeq 1,Si ダイオードで $ m \simeq 2
$ I_D の限界近い高電流領域になると,接合部分以外の直流抵抗成分 $ R_Sが電流を制限するようになるため,電圧増加に対する電流増加は緩くなる.
※上式には含まれていない$ R_Sはダイオード構成材料の種類・不純物濃度及びその構造に依存しており,通常は数Ωのオーダー