3.1受動素子(5)その他の受動素子
$ C,R,L以外の受動素子を簡単に紹介しておく.
流された電流を抵抗値として記憶する素子は 1971 年,第四の受動素子の存在が米Leon Chua によって数学的に予見されていた.
2008 年,HP 社の R.S. Williams が率いる研究チームが作成に成功し,記憶する抵抗器からメモリスタ (memory + registor) と命名された.
理論提示以来,実現まで実に 37 年かかったことになる (基礎研究を継続する意義がここにある).
2010 年,メモリスタによって演算装置と記憶素子を単一のデバイスに統合できることが確認され,小型でエネルギー効率の良いデバイスを開発できる可能性が期待されてた.
2020 年現在,ディスクリート素子としての製品化にはこぎつけていないものの,メモリスタを使って脳型集積システムを構築し,人工知能の能力を飛躍的に向上させようという研究などが広がりを見せている.
メモリスタの回路記号は正式には未定だが,比較的多くの文献で図 3.2 の記号が使われる.
https://gyazo.com/5d6aca1629c1ae23a6d4eba685263dfc https://gyazo.com/bda4e9e744e5b6072632e3e84ebc0b9f
図 3.12 メモリスタの例 図 3.13 メモリスタの記号
コイルの電磁誘導を利用して,交流電圧の振幅を変換する.
交流電圧変換,回路や線路間のインピーダンス整合,電気回路間の電力転送などに利用される.電源回路では必須の素子と言える.
一次側と二次側で,電気的な絶縁が可能なことも特徴.
回路記号はコイルを向かい合わせた形になる.
https://gyazo.com/47a7444d87f907ce243f643dc7927326https://gyazo.com/015c470960ada3dbd0139b3127b85afd
図3.14 トランスの例(WikiPediaより) 図3.15 トランス回路記号
※quartz crystal unit または crystal unit
石英の圧電効果を利用して高い周波数精度の発振を起こす受動素子.
クロックを使う情報回路など,電子回路にとって非常に重要な素子である.
https://gyazo.com/efb4ff21c5f6e4226076f38322ba486b https://gyazo.com/faaaf27227b6c4b37d9e19ab57c90bc7
図3.16 水晶振動子の例 図3.17 水晶振動子の回路記号
※piezoelectric element :ピエゾ素子とも
圧電体に加えられた力と電圧を相互変換する(圧電効果・逆圧電効果).
アクチュエータ,振動センサの他に,マイク,スピーカ,着火装置,発振回路,燃料噴射ノズル,プリンタなど,技術的応用範囲は多岐にわたる.
圧電素子の回路記号は水晶振動子と同じ
※というより,水晶振動子も圧電素子の仲間
https://gyazo.com/7af94e4992c783f9c4082bc6f002f858
図3.18 圧電素子の例(放電装置):
温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体のこと.
温度を測定するセンサとして,-50℃~150℃程度までの測定に用いられる.
https://gyazo.com/47a138cd2e96121f01b35afcc406b8d1https://gyazo.com/d9e180c4fe650d7058ef5fb0f63e0db6
図3.19 サーミスタの回路記号(左が新記号,右は旧JIS記号)