マイナス・ゼロ
概要
日本におけるタイムトラベルものの名作にして、“時間に憑かれた作家”広瀬正の代表作のひとつ。
星新一や司馬遼太郎が絶賛した一作。
おすすめポイント
かつての古典、さていまは?
本作は、時間SF・タイムトラベルものの古典として、長らく愛されてきた作品です。古典としての宿命として、どんなに発表当時鮮明な印象を与えた作品であっても、後続の作家たちによってその新鮮さは上塗りされてしまいます。
本作も、その古典の宿命からは逃れられません。単にタイムトラベルものとしての価値だけなら、単なる古典と言う立場にとどまるでしょう。しかしながら、それでも、この作品には素晴らしい情景描写が多数存在します。主人公がタイムスリップした先は、昭和一桁の東京。いまこの作品を読む人が絶対に経験したことのない情景が、生き生きと描かれているのが、とても印象的な作品でした。
SFと言って侮るなかれ。小説としての価値が、時代を経たことで変遷することもあるのだという好例になっていると思います。
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円城塔「烏有此譚」(脚注で本作について言及している)