トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス
https://gyazo.com/90959a8349a3b2b5643c879abaf61a4b
ホルヘ・ルイス・ボルヘス作/鼓直訳
岩波文庫・短篇集『伝奇集』
https://www.iwanami.co.jp/book/b248478.html
概要
中東にあるらしい国”ウクバール”をめぐる物語。
語り手は作者であるボルヘス本人であり、友人の作家ビオイ・カサーレスも登場する。
おすすめポイント
虚構が現実を浸食していく面白さ。
本作は、語り手であるボルヘスと友人のカサ―レスが、存在するはずのない国家”ウクバール”に関する項目を百科事典で発見するところから始まります。存在するはずのない国家が、あたかも存在するかのように書かれ、これまでそんな言及がなかったはずの本にもいつしか”ウクバール”に関する言及が出現する。そして虚構の存在であったはずの”ウクバール”は歴史上に実在した国家の名前として自分以外の人間が記憶していることにボルヘスは気づきます。
現実の脆さと、虚構による現実の浸食というSF的で幻想的な発想を、語り手をボルヘス自身としたことによるメタ性で固める。物語をより的確に伝えるにはどのような構造が必要か。発想の面白さを短くまとめた物語でパッケージングした、短篇のお手本のような作品です。
この”虚構による現実の浸食”というアイデアは、グレッグ・イーガン「ルミナス」とともに円城塔さんへ多大な影響を与えています。
次に読むSF
同じ作者から選ぶ
ホルヘ・ルイス・ボルヘス「バベルの図書館」
ホルヘ・ルイス・ボルヘス「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」
ホルヘ・ルイス・ボルヘス「記憶の人、フネス」
違う作者から選ぶ
オクタビオ・パス「白」
フリオ・コルタサル「石蹴り遊び」
グレッグ・イーガン「ルミナス」
ルイス・パジェット「ボロゴーヴはミムジイ」
チャールズ・L・ハーネス「現実創造」
円城塔「Goldberg Invariant」
円城塔「コルタサル・パス」
円城塔「エピローグ」
伴名練「ゼロ年代の臨界点」
伴名練「シンギュラリティ・ソヴィエト」
#伝奇集 #卜部理玲のマイベスト