トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス
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概要
中東にあるらしい国”ウクバール”をめぐる物語。
語り手は作者であるボルヘス本人であり、友人の作家ビオイ・カサーレスも登場する。
おすすめポイント
虚構が現実を浸食していく面白さ。
本作は、語り手であるボルヘスと友人のカサ―レスが、存在するはずのない国家”ウクバール”に関する項目を百科事典で発見するところから始まります。存在するはずのない国家が、あたかも存在するかのように書かれ、これまでそんな言及がなかったはずの本にもいつしか”ウクバール”に関する言及が出現する。そして虚構の存在であったはずの”ウクバール”は歴史上に実在した国家の名前として自分以外の人間が記憶していることにボルヘスは気づきます。
現実の脆さと、虚構による現実の浸食というSF的で幻想的な発想を、語り手をボルヘス自身としたことによるメタ性で固める。物語をより的確に伝えるにはどのような構造が必要か。発想の面白さを短くまとめた物語でパッケージングした、短篇のお手本のような作品です。
この”虚構による現実の浸食”というアイデアは、グレッグ・イーガン「ルミナス」とともに円城塔さんへ多大な影響を与えています。 次に読むSF
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