【殺陣の知識03】殺陣の三原則
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◆すべては安全のために
殺陣は芝居なので,稽古でも本番でも怪我をしてはいけません.
武器を使うので危険がともなうからこそ,怪我をしないことを前提に,技術体系が作られています.
殺陣の原則は以下の3つです.
1. 大きく振りかぶらない → 自分の後ろに刀を突き出すのは✘!
2. 寸止め → 当てる時には止めるつもりで振る
3. 打突の前に声 → 相手の動きのきっかけ
1. 大きく振りかぶらない:
振りかぶりは,上段を使う動きの中でたくさん出てきます.
一対一ならともかく,多人数の立ち回りになると,振りかぶって回る時などは後ろの人を危険に晒します.
横から見て30度が限界だと覚えて下さい.振り上げるときや振り向きざまなどは勢いがつくので,真上で止めるくらいのつもりでちょうどいいです.
後ろに振りかぶるよりも上に刀を構える方が見栄えもよいです.
2. 寸止め:
殺陣の技の中にはあえて距離をとって振るものがあります.
山形,突き,切り上げ,抜き胴
これらは振り切ってよいです.
これら以外は刀同士がぶつかります.
横面--横面受け,真っ向--柳/鳥居受け,鍔迫り合い等
このときに思い切り当てると刀が折れたり,勢い余って相手に当たるリスクが高いです.
なので,当たる技はすべて「寸止め」です.
とはいえ,勢いがあれば当ります.それは仕方がないですが,あくまでも気持ちは寸止めです.
★格好よく寸止めするコツ: 当てるときに 右肘をしっかり伸ばす.
← こうするとそれ以上刀が走らないので止めやすい
3. 打突の前に声:
殺陣では声を出してから攻撃するのが原則です.
剣術や剣道では不自然ですが,打突・攻撃の直前に「エイ」「ヤァ」などの声を掛け,合図にします.
相手は正面向いているとは限りません.無言でただタイミングだけで振り回すのは怪我の元です.
声を攻撃の合図にすれば,相手がどこを向いていようと,その声の方向から攻撃が来ることがわかり,それに合わせることが可能になります.
映像では緻密な手合わせをして細かいカット割りをするために,声なしで連続技を出したりします.
※また成功するまで何度でも撮り直しします.
しかし舞台や演舞では,声がなければ殺陣の振り付けは成立しないと思って下さい.
以上の3原則は,殺陣師がだれであれ,守られるべき項目ですので,頭と体に叩き込んで下さい.
以上です.
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