寂しさについて
「続戦争と一人の女」の話
夜の空襲はすばらしい。(略)かちかち光る高射砲、そして高射砲の音の中を泳いでくるB29の爆音。けれども私には地上の広茫たる劫火だけが全心的な満足を与へてくれるのであつた。
「女」は戦争という事物の生態系をただ受け止めているのだ。私はこの「女」の気持ちがよくわかる。コロナショックの渦中、私は一人の生活者として、ウイルスという目に見えない力が日常を侵食することを恐れていた。しかしその一方で、確実にこの日常性が侵食されることに、興奮を覚えていた。(略)まったく自己がそこに関与することなく、ただ巨大な本流が世界を洗い流し、変化させていくことの与える快楽と充足だ。
三体を読んで感じるのもこれかもしれない。あと自分はよく、工業地帯の与える寂しさとか、攻殻機動隊や高速道路を見たときに感じる巨大な社会・構造物と人間との対比が好きだという話をしているけどこれに近いかも。自分は事物そのものを楽しむのがかなり得意かもしれないな。 寂しさに興奮するときは、さらにその中にいるちっぽけな自分に陶酔している感覚もある。