第25回写真「1_WALL」審査会レポート
公開最終審査会レポート
2022.8.31 水
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8月31日(水)、今回で最後となる25回目の写真「1_WALL」公開最終審査会が開催されました。「1_WALL」は、一次審査、二次審査を通過したファイナリストが個展開催の権利をかけてプレゼンテーションを行い、その場で審査員が審議し、数時間後にはグランプリが決まる若手作家発掘のためのコンペティションです。
今回の審査会はファイナリストと審査員奨励賞受賞者、審査員のみで開催され、その様子をライブ配信する形で進行しました。本レポートでは、審査会の様子をポイントを絞ってお伝えします。「1_WALL」展の開催および、写真部門のグランプリ受賞者の選出は今回がラスト!ぜひ最後までお楽しみください。
FINALISTS
※プレゼンテーション順・敬称略
JUDGES
小原真史 / Masashi Kohara(キュレーター)
須山悠里 / Yuri Suyama(デザイナー)
高橋朗 / Sayaka Takahashi(PGIギャラリーディレクター)
津田直 / Nao Tsuda(写真家)
※五十音順・敬称略
審査会当日、一次審査を通過した20名の中から二次審査によって選ばれた5名のファイナリストが、ガーディアン・ガーデンに集まりました。そして、審査員による作品チェックが行われ、いよいよ審査会がスタートしました。
プレゼンテーション&質疑応答
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荻野良樹「黄色い砂を探して」
山神信仰と風景の関係性に興味を持ち、活動を行ってきた。山神が祀られている地域の撮影と、信仰に対する聞き取り調査が活動のベースだ。自宅がある平野部では、近くに山があるわけでもないのに、山神が多く祀られている。詳しく聞いてみると、祖父が80年前の祭りの様子を教えてくれた。団地がある場所は、昔は山で、祭りになると山から取ってきた黄色い砂を道や軒に撒いていたのだ、と。撮影や調査を続けているが、未だ祖父の言っていた黄色い砂には出会えていない。今回は、記録的要素の強い写真とテキストに鑑賞者が触れることで、信仰とは何かを考えられるような構成にした。個展では、見えざる山神という存在を写真とテキストで可視化し、博物館のような空間を作りたい。
Q. 須山:この活動は、どうなったら終わりを迎えるのか?
A. .荻野:今はまだ終わりが見えていない。山神の話を聞いている人は70代、80代の高齢の人ばかりなので、その人たちから話が聞ける間は、できる限り活動を続けていきたい。
Q. 高橋:テキストを冊子にまとめて展示しているが、壁に展示することは考えなかった?
A. 荻野:今回は写真に集中してもらうために、壁に展示することは考えなかった。
Q. 野口:写真は全て同じサイズ、並列に並んでいるが、これはなぜ?
A. 荻野:全ての風景が、ここで暮らす人々の身体の先にあるものと捉えている。つまり、全てが意味のあるものなので、全て並列に見えるように展示をした。
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本吉映理「is becoming」
生まれ持った身体と、自身の内側に違和を抱えている人を撮影した作品。私自身もそのような違和を持っていたことが、作品作りのきっかけだ。一見すると通り過ぎてしまいそうな、とりとめのないものに見える景色は、私や彼らが、他者や社会と交わる中で揺らぎを感じ、確かに選び取ってきた意志のかたちである。その選択の先で、何にも依らない自分になれるはずだ。今回は、概念的な一つの言葉で表現されてしまう前の感覚的な部分を撮影したいと思い、作品制作を行った。個展では一段でレイアウトを組み、実際に街中で通り過ぎるような感覚の展示にしたい。彼らが持つ時間や空間、日常的な情景を含め、鑑賞者との距離を縮め、接点を作る中で彼らが持つ強さや揺らぎを鑑賞者に提示できればと考えている。
Q. 小原:展示構成の意図を教えてください。
A. 本吉:作品点数を多くすることで、彼らの豊かさを示した。実際に街中ですれ違ったような感覚になるように展示を行った。
Q. 津田:被写体ごとに、微妙な隙間を空けて展示している。全体としての見え方、個人としての見え方はどう調整した?
A. 本吉:全体を見ることで、肉体と自分の意志に、違和があることを掴んでもらい、被写体ごとの置かれている状況や選択してきたものの違いを感じ取ってもらうため、微妙に隙間を空けて展示した。
Q. 野口:前回もファイナリストとして同じコンセプトの作品を展示したが、前回と比べてどうだった?
A. 本吉:今回の方が良くなったと感じている。前回は、自分や被写体を守りたい思いから閉じた表現になっていたが、今回は、その思いを取っ払い、彼らの実際の暮らしを想像できるように展示できた。
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阿部修一郎「Hear the Place Sings」
本作品は、空間と身体、忘却をめぐる記録映像だ。舞台は、建て替えを検討している実家。家がなくなるということは、家の中での私の身体自身も失われるということと同じである。そういった身体の喪失が起こったことや、それさえもいずれ忘れてしまう。そこに恐れを感じたことが、制作のきっかけだ。忘却への抗いとして実家を撮影し始めたが、映っていたものは、床の軋み、寝室で揺れる電灯の紐など、場所のリズムのようなものだった。右のモニターは身体、左のモニターは空間を映していて、交互に見ることで、そこには映っていない何かを想像できるような展示に。個展では、身体と空間とものの映像をプロジェクターに投影し、インスタレーション作品を展示したい。
Q. 小原:左右のモニターの関係性について、どんな工夫をしましたか?
A. 阿部:廊下掃除のシーン、調理のシーンなど、長時間身体を映す時は右のモニター、それを見た後に空間だけが映る左のモニターを見ることで、何かが足りないなと感じるような構成にした。
Q. 須山:モニターの下に板が置いてあるが、それは何故?
A. 阿部:モニターだけを壁に展示すると無機質になってしまい鑑賞者が入り込めないと思ったので、鑑賞者と作品をつなぐ役割として設置した。実際に実家の廃材の一部で、縁側や廊下のような役割を与えている。
Q. 津田:スピーカーは足元に設置されている。足元から音が聞こえるようにした、その意図は?
A. 阿部:元々はスピーカーも壁に設置しようとしていたが、床の軋みなど、足元の音が制作の起点でもあったため、今回も同じように聞こえるよう、足元から音声が聞こえるようにした。
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岡崎ひなた「水面にカゲロウ」
私は、和歌山県の人口1942人の小さな村で生まれ育った。今は地元を離れ、大阪で暮らしているが、そこに今まで私が見てきたものはない。このことから、都市化することによって土地が失った何かにフォーカスを当て、制作し始めた。日本人の中に共通してあるのは、八百万に命が宿ると考える神道。しかし、現代社会では集団統治の術が宗教観から資本に変化し、アニミズムが薄らいでいると感じている。私もこの村も、資本主義の上に成り立っていて、それを否定したいわけではない。ただ、日本人がかつて持っていた美徳、文化を忘れてはならないと考えている。流れる時間の中でも、あるべき姿は私の生まれ育った村にあるはずなので、個展では、村の写真を隅々まで見てもらうため、サイズを大きくし、均等に並べて展示する予定だ。
Q. 須山:個展プランでは写真のサイズを均等にすることで、鑑賞者が、写真一枚一枚が持っている強さと対峙できる気がする。今回の「1_WALL」展では、なぜサイズを均一にしなかったのか?
A. 岡崎:鑑賞者に、村の土地に実際に入ったような感覚になってほしかったから。地図のような雰囲気にしたかった。写真の高低差は、海や山をイメージしている。
Q. 野口:写真の大きさは小さいものと大きいものがあるが、どのようにサイズを決めたの?
A. 岡崎: 個展プランでは全て大きくしたいが、今回はスペースの制限があるため、撮影している時に特に印象的だったものを大きなサイズでプリントした。
Q. 高橋:プリントしている紙はテクスチャーがあるもの。なぜ、この紙を選んだの?
A. 岡崎:色々な種類の紙で試してみたが、この紙が一番自分の見ていたものと同じような質感であると思ったから。
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家祺「Desert City」
この作品は、私の故郷を始めとした中国の5つの省をめぐる旅を撮影したもの。私の家族はかつて河北省に住んでいたが、新しい中国が設立され、祖父が強制労働をさせられることになり、地元の土地を離れた。新しい土地は貧しい地域だったが、そこで父や母は生まれ、出会い、結婚し、子どもを産んだ。祖父が移住して72年経った今、その場所は急速に発展し、都市化している。その変革は新たな変化を生み出していて、多くの人々が農村地域から都市に移住させられた。これらの新しい都市の端にある半砂漠の風景は、中国の経済発展の中で矛盾を孕んだ、現在社会の象徴である。
Q. 須山:大きめのサイズで1枚展示している作品と、4点組になっている作品がある。この展示の意図は?
A. 昝:写真の点数が多いほどイメージが膨らむと考えたが、スペースに制限があるため、重要な写真のみ大きくしたから。その際、大きい写真は視野が広いもの、小さい写真は建物を正面から撮影したものにして区別した。
Q. 野口:写真を展示する際に額に入れようとは考えなかった?
A. 昝:額に入れようとは考えなかった。個展だったら、額に入れるのもいいかもしれない。
Q. 津田:個展では、中国の歴史的背景と作品とのバランスをどのように考えている?
A. 昝:砂漠から都市が作られる発展の過程と、都市から砂漠へ戻る変化を感じられる配置にして、このようなことは常に繰り返され、時間だけが変化するという言葉と組み合わせた展示を考えている。
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講評&審議
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荻野良樹「黄色い砂を探して」について
須山「見ていると、『黄色い砂』はそもそもないのでは?と感じる。次第に彼の本来の目的から写真が離れていくようで面白い。写真が持つ情報を獲得するというよりは、抜け落ちていく様がいい」
高橋「現実と寓話のバランスがいい。写真のセレクトも、抑えが利いていてとてもよかったが、文字情報があると、想像していた作品のイメージに近かったかもしれない」
小原「テキストの量と質がいい。退屈せずに鑑賞者に読ませるいいテキストにまとまっています。だが、そのテキストがどの写真に対応しているか知りたかったです」
津田「山神と風景の関係性という、見えにくいものを扱っている。そのことを、写真の中でもう少し表現しても良かったのかも。今回の展示作品は、輪郭のくっきりとした写真ばかりなので、何か写っているのかなと探してしまう」
野口「一点、一点の写真がとてもいい。地味な写真であるのに、鑑賞者にしっかりと想いが伝わっているところが素晴らしい。しかし、テキストと写真を一緒に見られなくなったことで、豊かさが失われたように感じる」
本吉映理「is becoming」について
小原「やりたいこともわかるし、コンセプトもしっかりしていて、とてもいい。どこまで意図的かはわからないが、曖昧に隣の被写体同士がつながる展示方法が、ポジティブに感じた。今の本吉さんであれば、内面と身体の違和に悩んでいない被写体でも撮ることができそうですね」
須山「作品を通じて、何かに躓くような印象があったが、それは取っかかりのようなものが自分の中にあって、写真と向き合った結果かもしれない、と皆さんの意見を聞いて思った」
野口「今回は自分の言葉に確信を持っていて、プレゼンは前よりもいいなと。その反面、今回の展示がいいのかわからない。前回の展示の方が強かったと思う。とはいえ、作品の内容自体は良くなっていて、作家としても成長している」
津田「前回に比べて、一枚、一枚の写真がとても良くなっている。だからこそもっと展示の中で一人一人と向き合いたかったが、今回の展示は、それができず、窮屈な印象を受けてしまった」
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阿部修一郎「Hear the Place Sings」について
須山「ポートフォリオ審査で見てはいたが、実際に会場で2つのモニターの前に立つと、ポートフォリオ審査で見た時と全く印象が変わり、最後まで惹き付けられた。しかし、何かを伝えようと工夫し過ぎた結果、抑揚がつき、退屈さが失われている。もっと極めて退屈な映像でも良いのではないか」
小原「実家をテーマにした作品を数多く審査してきたが、このような作品は初めて。身体と不可分な形である空間とそこに流れる時間や音をテーマにしていて、新鮮でした」
高橋「映像に情緒がありすぎる印象。情緒がない写真や映像も撮れるはずなので、もうちょっと考えてみてもいいかも。個展では画面が大きくなるとのことなので、見てみたい」
津田「音の扱い方がいい。足元から音が鳴ることによって、身体性が縦に伸びていく感じがする。また、この作品はいかにカメラを感じさせないかが大切なのでは。左のモニターでアップになったとき、カメラの存在を感じてしまった。とはいえ、いい作品であることに変わりはない」
野口「一次審査、二次審査時点では作品の魅力がわからなかったが、今回の展示でようやくわかった。音がいい。完成度もとても高い。ただ、その完成度の高さゆえに、窮屈さも感じてしまう」
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岡崎ひなた「水面にカゲロウ」について
須山「質問した時に言い淀む場面があったが、言葉を超えた何かを目の当たりにしていると思う。展示はスペースの関係上、作品が持っている強さが散漫になってしまった印象だが、岡崎さんにしか撮れないものを見つけているのだろう」
小原「展示もしっかりできているし、文章もきちんと書けている。撮影手法もそうだが、選び方も的確。自分の作品の面白さをちゃんとわかっているように見えます。若いのに何でこんなにまとまっているのか、と不思議に感じてしまうほど」
高橋「一次、二次審査ではピンと来ていなかったが、展示を観てなるほど、と。この作品を言葉にしようとすると言葉が逃げていくような感覚もわかるし、それは写真が持っているそもそもの魅力があるからだと思う」
野口「展示を見て、おっと驚いた。写真のサイズで強弱をつけたのは、決して悪くないと思う。何か理由があるはず。その理由を自分で見つけ、しっかり言葉にできるようになるともっと作品の強度が増すと思う」
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昝家祺「Desert City」について
高橋「この作品は、歴史に翻弄された家族の話。凄まじい風景の写真を、大きなサイズで見てみたい」
津田「高橋さんが言うように、家族がキーワードにもなっている。中国の社会的背景に巻き込まれている家族を見ることで、より社会が見えてくる気がする。額に入れて展示すると、もっと落ち着いた、どっしりとした作品になりそう」
小原「今日のプレゼンだけだと、中国の社会的な大きな問題ばかりが見えてしまう。そこに小さな家族がどのように絡んでくるのかがもっと見える写真だといいな、と」
須山「展示壁面の制約からかもしれないが、大小のサイズの抑揚が中途半端に見えた。小さくするなら、思い切って土産物の絵葉書に見えるくらいにした方が、大きいサイズの圧倒的な風景が立ち上がってくるのではないか」
野口「一点、一点の写真はとてもいいので、もったいない。大きなサイズにプリントして額装したら、もっと良い展示になったと思う」
こうして、ファイナリストのそれぞれの作品に対する講評が終了しました。
そして、いよいよ1回目の投票タイムへ。グランプリ候補に挙げたいと思ったファイナリスト2名を選んでいただきました。
1回目の投票結果
小原:阿部、岡崎
須山:阿部、荻野
高橋:本吉、 岡崎
津田:阿部、 岡崎
野口:阿部、本吉
集計すると、阿部修一郎4票/岡崎ひなた3票/本吉映理2票/荻野良樹1票という結果になりました。
そこで、上位2名に選ばれた阿部修一郎さん、岡崎ひなたさん、さらに「本吉さんも残してほしい!」という高橋さんからの熱烈コールにより、本吉映理さんを加えた3名から1名を選ぶことに。まずはその前に、この3名のファイナリストについて、選んだポイント、悩んだポイントなどを討論していただきました。
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本吉映理「is becoming」について
野口「いい仕事をしているな、と。写真を撮り続けることで、自分自身も変わってきている気がする。ここまで来たなら、もうひと息。そろそろ決着をつけて次に行った方が良いと思う」
高橋「内面と身体に違和のある人だけでなく、どんな人でも撮れるようになってきている。個展なのか、新たな場所なのかはわからないが、展示して決着をつけてほしい」
岡崎ひなた「水面にカゲロウ」について
小原「単純に、この先が楽しみな人。今後も定期的に、今、何を撮っていて、どんな作品を作っているのかを知りたくなるような作家だ」
高橋「他のファイナリストの作品もいいので迷ったが、プレゼンの内容や審査員の皆さんの話を聞いて、名前を挙げたいと思った」
津田「質問に対していい意味でつまずいている。しかし、つまずくだけでなくそこにうまく関わろうとしているようだ。言葉よりもちょっと先を写真が行っている印象」
須山「個展を見てみたくて荻野さん、阿部さんに票を入れたが、岡崎さんは一次、二次でもハッとさせられた」
阿部修一郎「Hear the Place Sings」について
高橋「本吉さん、岡崎さんに票を入れたが、阿部さんに文句はない。むしろ、阿部さんかなと思っていた。最後に議論したくて、阿部さんに票を入れるのをやめた」
野口「個展ではさらに完成度を上げて、いい展示になるだろうなと想像できる」
須山「個展でプロジェクターを使う試みがいいのかはわからないが、見てみたい。今日の審査会のアドバイスを聞いて、それをどう反映するのか、期待したい」
審査員の野口さんから阿部さんへ「個展プランの会場図の中の空白部分はどうなる予定なの?」という質問が投げかけられ、せっかくなので、ファイナリスト全員にひと言ずつ追加のコメントや感想を語ってもらいました。
ファイナリストの追加コメント・感想
阿部修一郎「空白部分は、会場でプロジェクターを投影する時に邪魔になりそうなので、何も展示しない予定の場所。プロジェクターは入口入って右の壁と、入口入って左の壁に配置し、二つの画面は両方同時には見られないような展示の仕方を予定している。身体が不在の映像を見る時に、そこに映っていない身体を想像できるようにしたい」
荻野良樹「元々、信仰に興味があったわけではなく、地域の風景が変わるところから偶然信仰のことを知り、作品を作ることになった。信仰や風景は普遍的なものだと思っていたが、どちらも時代と共にどんどん変わっていくものだと気づいた。その部分を伝える展示をできたことは嬉しかったし、今後の糧になったと思う」
本吉映理「私自身、すごくセンシティブな内容を撮り続けているという意識があって、どう撮影して、どう展示するのが彼らにとっていいことなのか模索し続けていたが、今日の審査会でどんな被写体でも撮れそう、という言葉をもらえた。今まさにそういうところに到達していると思う。この展示を通して、一つ作品に対する言葉が見つかったような気がしていて、それを得られたことが、自分の中での大きな収穫になった気がする」
岡崎ひなた「今回、私が展示した作品は、人によってはグロテスクに感じてしまうものかもしれない。けれど、そんなふうに避けがちなシーンや風景を私が作品にして展示することで、見てもらえることが嬉しい。また、自分の生まれ育った村は今、少子高齢化でいろいろなものが失われつつあるが、それを多くの人に見てもらえたことも嬉しかった」
昝家祺「写真の中に写っているものだけに注目するのではなく、写っていないものを連想できるような作品にしたいと思い、今回展示を行った。単純に私の故郷の風景を見せたかったわけでなく、砂漠の風景はかつて都市だった場所で、その前は砂漠だった場所。その歴史の移り変わりや自然の循環も見せられたらと思っている」
全員のコメントを聞き終わったところで、2回目の投票へと移ります。
2回目の投票結果
岡崎3票
本吉2票
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またしても票が分かれたものの、3票を獲得し僅差でトップに輝いたのは岡崎ひなたさんです。こうして、第25回写真「1_WALL」のグランプリは、岡崎ひなたさんに決定しました。
最後となるグランプリ受賞者の個展は、約1年後、ガーディアン・ガーデンで開催する予定です。ぜひ、みなさまお誘い合わせの上、ご来場ください!
FINALISTSインタビュー
岡崎ひなたさん(グランプリ決定!)
「プレゼンの時に質問にうまく答えられず、グランプリは無理だと思っていたので、びっくり。高校生の時から『1_WALL』が憧れだったので、最後の回に応募でき、グランプリまでとることができて本当に嬉しいです。作品作りにおいてたくさんの人に応援してもらっているなと感じるので、そういうことを踏まえながら、1年後に向けて頑張りたいです」
荻野良樹さん
「『1_WALL』に応募したのは、これが3回目。今まで展示をしたこともなかったし、作品を言語化することもなかったので、今回が何もかも初めての経験でした。審査員の方からありがたい言葉をいただけたので、それが今後の糧になりそうです」
本吉映理さん
「前回の『1_WALL』展では、不甲斐ない結果になりました。その時に審査員の野口さんに『次も出しなよ』と言われたことが後押しになり、今回も応募してみました。一次、二次を通過する過程の中で、確かなものが芽生えてきたように感じています。このシリーズで展示をやったことがないので、まずは個展に挑戦してみたいです」
阿部修一郎さん
「今回応募してみたものの、まさかファイナリストに選ばれるとは思っていなかったので、嬉しいです。審査員の方に言われた『もっと退屈でいい』と言う言葉がとても印象的。今回は空間で映像作品として展示する方法でしたが、軸はぶらさずに、今後はいろいろな活動にチャレンジしてみたいです 」
昝家祺さん
「審査会は、とても緊張しました。ガーディアン・ガーデンの会場で展示するという機会をいただき、本当にありがとうございました。今日、審査員の方々からいただいたアドバイスを生かして、今後も作品作りを続けていきたいです。そして、もっといい作品を発表し、多くの人に知ってもらえたら嬉しいです」
第25回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展