第13回グラフィック「1_WALL」審査会レポート
公開最終審査会レポート
2015.10.6 火
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今回で13回目となるグラフィック「1_WALL」。
一次審査、二次審査を通過した6名のファイナリストが10月6日(火)、ガーディアン・ガーデンに集まり、公開最終審査会が行われました。「1_WALL」の公開最終審査会は、一年後の個展開催の権利をかけてファイナリストたちが思い思いにプレゼンテーションを行い、審査員がその場でグランプリを決めるという若手作家を発掘するための場。今回は、「会場は小さいながらも、作品を間近に見ながら審査するという原点にかえった審査会にしたい」というガーディアン・ガーデンの意向で、作品が展示されたギャラリー内で審議をするスタイルに戻って行われた初めての審査会です。
FINALIST
※プレゼンテーション順・敬称略
JUDGES
白根ゆたんぽ / Yutanpo Shirane(イラストレーター)
長崎訓子 / Kuniko Nagasaki(イラストレーター)
※五十音順・敬称略
進行
菅沼 比呂志(ガーディアン・ガーデン プランニングディレクター)
10月6日(火)、それぞれの個性を放つ6つの作品が展示されたギャラリーに、ファイナリストと審査員たちが続々と集まりました。ファイナリストたちはそこから別室へと向かい、緊張の面持ちで審査員たちの作品チェックを待ちます。それが終わるとギャラリーに戻り、いよいよプレゼンテーションへ……。
第13回グラフィック「1_WALL」公開最終審査会の幕開けです!
プレゼンテーション & 質疑応答
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水越智美「たのしいゾーン」
心の中で思い描いたイメージを、パソコンを使って制作しました。イメージしたその状況が起こるまでの過程をさかのぼったり、その後の展開を予想したりして時間の流れをつくるとそれがお話になり、「ゾーン」となります。今回は7つの「ゾーン」を展示しましたが、個展ではひとつのテーマに絞り、過去、現在、未来といった一連の流れを表現したいです。
Q.長崎:モニター上で制作した作品と実際に展示する作品とでは、サイズ感のギャップはあった?
A.水越:ありました。展示してみると思っていたよりも紙の薄さも目立ち、壁紙のようでした。
Q.大原:小さな紙をいくつも貼り合わせているが、なぜ大きな紙に印刷しなかったの?
A.水越:小さめの紙を貼り合わせてつくることで、展示スペースに合わせて大きさを自由自在に変えられる作品にしたかったからです。
Q.室賀:ポートフォリオにはなかった言葉が作品に添えてあるが、これは何を表しているの?
A.水越:それぞれの絵の補足説明であったり、登場人物たちの台詞になっています。
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森本将平「ファイル」
過去に見たものや風景、それを見た時の感情などが心の中に数多くあります。その何層にも重なった記憶や妄想、気持ちが絡まり合い、今も僕の中で揺らぎ続けます。決してつかめないそれを表現していて、どの絵も自分の「幽霊」のような存在。現実なのか妄想なのかわからなくなることもありますが、それも含めてすべて自分の作品です。個展では、空間全体を使って一つの絵をつくりあげたい。
Q.白根:『ファイル』というタイトルがシンプルすぎて、作品を表現できていない気がするが?
A.森本:なにか意味のあるタイトルにまとめることができなかったので、あえて意味のないタイトルにしました。
Q.室賀:「幽霊」というモチーフは、どこから着想を得たの?
A.森本:自分の生き方が「幽霊」のようだなと思う時があり、自分が何者なのかを見てみたいと思ったところから着想を得て、この絵を制作するきっかけになりました。
Q.長崎:鑑賞する人に対して、こんな風に見てほしいなどの希望はある?
A.森本:自分のことを理解してほしいというわけではないですが、そういう欲求は少なからず誰にでもあるもの。だから、そんな人たちの鏡のような存在になれればと思います。
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藤田恵「意思を持ったもよう」
きれいな風景を見たり、好きな音楽を聴いた時にどきどきしたりわくわくしたりする感情が私の中でいろいろなイメージに変換されて、色や形、線として表され「もよう」になります。私の絵が壁や床に施された飾りの一部であったり、食器だったり、身近にあるものとして楽しんでもらえたらうれしい。個展でも、このスタイルの延長で作品を制作していきたいです。
Q.菅沼:個展では、このサイズ以外の絵も展示するの?
A.藤田:もっと大きな絵も展示したい。その時にもマーカーを使いたいので、絵の大きさに合わせて太めのマーカーを探すつもりです。
Q.白根:ポートフォリオの時は、それぞれの絵にタイトルがついているのがよかったのだが、展示ではなぜタイトルをつけなかったの?
A.藤田:展示した絵を全部含めてひとつの絵として表現したかったので、あえてタイトルはつけませんでした。
Q.大原:二次審査の時に、自分の作品をハンカチなどの柄に使ってほしいと言っていたが、展示では、絵のまわりのフレームの印象が強すぎる。そこがネックになってくると思うが?
A.藤田:ハンカチになったり、食器になったり、日常生活に取り入れ楽しんでほしいと思っているので、フレームの問題はこれからの課題にしていきたいと思います。
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鰹とニメイ「さっきの人」
私の作品制作は、過去の記憶を思い出すことから始まります。作品の中にある緑色の山の絵は、昔見たテレビアニメに出てきた学校の裏山。いいなと思った時の感覚を思い出しながら描くことで、その時の気持ちを再現したいという気持ちがありながら、そこから離れたいという気持ちもあります。個展では、アニメーションを合わせて展示していきたい。
Q.白根:展示のシミュレーションはどのようにしたの? うまく再現できた?
A.鰹:パソコンのモニター上でシミュレーションしました。当初考えていた映像は結局取り入れませんでしたが、大体想定していた通りに表現することができたと思います。
Q.長崎:パソコンで作業したのなら、そのままモニターを展示することもできたはずだが、なぜ紙に印刷したの?
A.鰹:普段はパソコン上で制作して完結することがほとんどなので、それを物質として展示したらどうなるのかが気になったからです。
Q.室賀:他にも作品をつくっていると思うが、この作品はどんな位置づけなの? ライフワーク?
A.鰹:ライフワークというわけではないが、最近はこの作品についてずっと考えていました。これからもしばらくは続けていくテーマだと思います。
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一乗ひかる「Life Ribbon」
現代の私たちにとって、スーパーには加工された肉が並び、デパートには革製のカバンや靴が置いてある状態が当たり前です。それらが生きている時には人間と同じように食べたり、排泄する生き物であったということを、私たちはなかなか想像できません。食道や腸や胃などの内臓を、一本のリボンで表現し、かわいらしくすることでテーマを一見わからなくしました。実際の内臓の長さを調べて制作しているので、個展では博物館のような雰囲気にしたい。
Q.大原:大学の卒業制作だったと聞いたが、当時制作した時と今とでは心境に変化はある?
A.一乗:もっと作品を見てもらいたいと思うようになりました。それで、今回は作品の前に置いている本を改めて制作し、鑑賞する人に考えを理解してもらいやすくなるように心がけました。
Q.白根:生きものを粗末にするという問題と、動物たちが一本につながった内臓でできているということがどうもリンクしないが?
A.一乗:作品づくりのきっかけが、スーパーなどに並んだ生きものたちに疑問を感じたことだったので、そのテーマとは切り離せませんでした。
Q.菅沼:作品にした動物たちは、どのように選んだの? たとえば、牛はつくろうとしなかったの?
A.一乗:よく食べられている生きものとして鮭やにわとり、毛皮が売られているきつねなどを選びました。牛も考えましたが、リボンが太くなってしまって美しく感じられなかったので。
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谷口典央「忘れた土地」
人々が忘れ去り、誰も知らない、自分だけが知る世界をテーマに制作しました。僕自身もその世界のすべてを知っているのではなくて、こうかもしれないと想像しながらつくりあげた作品です。昔の民族儀式などに影響を受けて、サイズも昔の壁画を意識した大きめのサイズに。古代から存在する木を使うことで、過去とつながることができるのではないかと考えています。個展では、キャンバスや紙、立体作品も展示したいです。
Q.大原:壁画に彫り出されているモチーフの発想は、どこから来たの?
A.谷口:シャーマンなどが使う道具に興味があり、それを自分の記憶から引き出して彫りました。
Q.白根:ポートフォリオには油絵もあったのに、今回はなぜ展示しなかったの?
A.谷口:搬入する際に油絵も持ってきたのですが、隣の方の作品などとのバランスも見て、今回は作品を統一させた方がいいかなと思い、展示しませんでした。
Q.長崎:作品の色は、なぜ単色にしたの?
A.谷口:僕の中で壁画は、単色のイメージがあるからです。それに、単色の方がすっきりしていてイメージが頭に入ってきやすいと思いました。
ファイナリストそれぞれのプレゼンテーションと質疑応答が終わり、休憩後、いよいよ審査員によるグランプリ決定のための審議へ。
菅沼の進行で、まずは今回の「1_WALL」全体の感想を審査員一人ひとりに聞いていきます。
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今回の「1_WALL」について
長崎「審査員をやるのはこれで5回目だが、ギャラリーに入った瞬間、今回はわりとちゃんとした展示だなと思った。その反面、ポートフォリオの時から変化していない作品が多くて驚きがなく、残念だった。」
大原「どの作品からも、すでにグラフィックを仕事にしているような安定した空気を感じた。誰にでも、今この時代に作品を出す理由があると思う。それを軸に考えられている人が多かった。」
白根「ポートフォリオ以上の驚きを感じられず、全体的におとなしい印象を受けた。個展プランは、今の展示とはつながりにくいプランが多いように思えた、具体的に想像できるものが欲しい。」
室賀「少し前までは、自分の感情を頼りにして作品をつくるパターンが主流だったが、今回は作品の方向性などが明確になっている人が多かった。」
続いて、ファイナリスト一人ひとりの作品について感想を聞いていきます。
水越智美「たのしいゾーン」について
白根「ポートフォリオでのわくわく感が感じられなかった。拡大することで薄くなってしまった線や、薄い紙を使っているのが気になった。もう少し、モニター上でのデータを実際に展示する時の想像力を鍛えるべきだ。」
室賀「6人の展示作品の中では、一番安定しているように思えた。台詞を添えたのもいい効果を生み出している。」
長崎「アニメーションにするなど、デジタルデータならではの作品にするともっとおもしろくなるかもしれない。展示のサイズ感に慣れていないように感じたので、もう少し慣れが必要だ。」
大原「ポートフォリオを見た時にはページをめくるたびにわくわくしたのだが、展示作品はそれをただ単に拡大しただけのように感じる。レイアウト感覚には独創的なものを持っているので、よりよい展示方法を探ってほしい。」
佐藤「楽しさと美しさが見事に一致している作品だ。センスとユーモアがあり、まだまだ伸びるはず。」(*菅沼が事前にいただいたコメントを読みあげる)
森本将平「ファイル」について
白根「プレゼンテーションで、彼の言いたいことがしっかり伝わってきたので、そこは評価できる。ポートフォリオからも進化している。これからどう発展していくのか見てみたい。」
大原「おもしろいテーマを扱っているが、他にも展示のやり方があるのではないか。個展の時にどうなるのか見てみたい。」
長崎「プレゼンテーションで彼の考えが聞けてよかった。鏡のような存在という言葉が、特に印象に残っている。成長を感じた。」
室賀「壁そのものをフラットに捉えていて、そういう面では森本さんの絵は情熱的に描けている。それを何も考えずにやるのと意図的にやるのとでは違うので、自分で理解した上でプレゼンテーションしてほしい。」
佐藤「透明な空気に揺れる、浮遊する意識と感覚を感じた。残念ながら、しっかりと絵が描けていない。」(*)
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藤田恵「意思を持ったもよう」について
白根「ポートフォリオでは一枚ずつ絵を楽しめたが、今回は一枚ずつの絵が見にくい印象。シンプルすぎる展示方法なので、もう少し試行錯誤してほしかった。」
室賀「家具などのインテリアに取り入れてほしいと言っていたのが、腑に落ちる作品だ。二次審査の時からインテリアっぽいと思っていたので。それをわかって描いているというところに、将来性を感じる。」
長崎「一見ラフなタッチの作品をどう展示するのが一番良いのか、私自身も悩んでいることなので、シンパシーを感じた。」
大原「これからこの作品を通じて、社会とどう関わっていくか。それが彼女の課題であり、答えだと思う。」
佐藤「明るい色彩が踊るようなイメージは、新しい傾向のひとつのようだ。」(*)
鰹とニメイ「さっきの人」について
白根「ポートフォリオのインパクトが強すぎたので、少し残念な印象を受けた。展示の仕方にもう少し工夫がほしい。一つひとつの絵が面白いので、何枚も貼り合わせなくてもいいのではないか。」
室賀「ネットワークアートのような作品。デジタルデータと実体のあるものの関係というテーマは、前回ファイナリストに残った時と同じであるが、もう少し細かく聞いてみたい。」
大原「鑑賞する人に対して、こう見てくれるだろうなどの決めつけがないのがいい。逆に言うと、丁寧さには欠ける印象。彼女の作品を見る時には、しっかりと対峙し考える姿勢が求められる。」
長崎「審査員である私たちが試されている気分になる作品。彼女の考えていることはわからないところも多いが、それでいいのかもしれない。空間のとらえ方が気持ちが良い。」
佐藤「難解でよくわからない。考えても謎が深まるばかりだ。」(*)
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一乗ひかる「Life Ribbon」について
白根「本来のテーマとやっていることが離れてしまっていて、わかりにくい。卒業制作のままという点も、残念。しかし、作業の丁寧さは評価している。牛は美しくないので展示しなかったと言っていたが、牛を展示することで、本来のテーマとつながるのではないか。」
長崎「パーソナルな表現が多い中で、社会的なメッセージを持っているところがいいなと思っていたので、展示は残念な印象。もっと広げられるテーマのはずだ。」
室賀「社会的なメッセージを持っているところと、丁寧さは、他の人にはない部分。だが、なにか物足りなさを感じる。将来に期待したい。」
大原「牛はリボンのよさが出なくて美しくないと言っていたが、そういう自分でコントロールできない作品こそ見てみたかった。」
佐藤「とてもよく考えられて周到に用意された作品だが、全体的に説明的で観る人の自由がない。」(*)
谷口典央「忘れた土地」について
大原「今、この作品をつくる理由は必ずあるはず。その秘密に迫りたかった。」
長崎「壁画から着想を得たというが、まるでテレビゲームのようだ。瓶の絵は、RPGゲームとかに出てくる回復のアイテムなのかな…。時代遅れになってしまいそうなテーマだが、これは今の時代に合う作品になっている。」
白根「のびのびとなんの狙いもなく描いているようで、自分でしっかりとコントロールしながら描けている人だ。」
室賀「もう少し幅を広げてもよかったのではないか。民芸品のようなものに固執しすぎている。そういったものにとらわれず、枠を越えた作品にしてほしかった。」
佐藤「木版の版木そのものを作品として展示する人は初めてではないかもしれないが、自分でこの方法を発見したのだろうからすばらしい。このままどんどん作品をつくり続けていってほしい。」(*)
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4名の審査員の方々が意見を述べた後に、菅沼が佐藤さんから事前にいただいたコメントを代弁するという形式で進み、さまざまな感想や意見が飛び出しました。そして、いよいよグランプリを決める投票へ。審査員がそれぞれ2人を選び、順に発表していきます。
投票結果
白根:谷口・森本
室賀:鰹・谷口
大原:鰹・谷口
長崎:谷口・水越
集計すると、谷口 4票/鰹 2票/水越 1票/森本 1票という結果に。なんと、谷口さんに審査員全員からの票が集まりました!
ここで改めて菅沼が審査員の皆さんに意見を聞いていきます。
白根「谷口さん、森本さんは、人に作品を見せる時にどこを見せていきたいのか、を意識的に把握できている。」
大原「谷口さんには、今回出展されている一番大きな作品のような方向性で進めてほしい。ポートフォリオの油画が面白かったので、個展では油画の出品も期待している。」
長崎「私も谷口さんの油画は面白いと思う。木彫りの作品も、工芸品的な方向に行くのではなく、持ち味である不思議な世界観に加えて、若い人らしい感じも出していけば面白いのでは。水越さんは、展示に慣れていない印象が強いが、今後の成長性を感じた。」
室賀「皆さん、作品全体の世界の広がりや、今後の可能性を感じる一方で、展示での作品の見せ方として、もう少し良い方法もあったのではないかと思う。水越さんも迷ったが、最終的に鰹さんと谷口さんを選んだ。」
菅沼が審査員一人ひとりを見渡して「全員の票が谷口さんに集まりましたので、みなさんグランプリは谷口さんでよろしいですか? 」と確認すると、審査員の方々がゆっくりと頷きます……。そこで、谷口さんのグランプリ決定!
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会場が拍手と熱気で包まれる中、白根さんから谷口さんへトロフィーが渡されます。谷口さんは、「人前で話すのが得意ではないので、緊張しました。僕の作品をグラフィック部門に応募していいのかという迷いもありましたが、グランプリをいただけたのでこれからも自信をもって作品制作をしていきたいです」と控えめながらもしっかりと、よろこびの言葉を述べてくれました。
作品を目の前に見ながらの公開最終審査会は、こうして幕を閉じました。谷口さんの個展は、約一年後にガーディアン・ガーデンで開催される予定です。みなさん、どうぞお楽しみに!
最後に、審査会を終えてほっとした表情を見せるファイナリスト一人ひとりに、第13回グラフィック「1_WALL」の感想や今後の目標をお聞きしました。
FINALISTSインタビュー
水越智美さん
今まで作品について率直な意見を言ってくれる人がまわりにいなかったので、今回の審査会ではそういう機会を与えてもらえてよかったですし、すごく勉強になりました。「1_WALL」は、絵画なら絵画、イラストならイラストと、カテゴリーを決めることのできない作品が集まってくるところ。私の作品もカテゴライズできない作品ですが、このままでいいんだと思うことができました。
森本将平さん
「1_WALL」に応募したきっかけは、いつも一人で作品を制作しているので、人前に出してみたいと思ったことです。今回のファイナリスト6人でのグループ展は、全員がライバルであり仲間という今までにない環境で作品を展示するので、いつもより緊張感をもって取り組めました。このまま作品をつくり続け、人の心に引っかかるような絵を描けるイラストレーターになりたいですね。
藤田恵さん
自分の思いを伝えきれなかったのではと思ったのですが、さきほど審査員の方とお話するとそんなことないよと言ってくださり、うれしかったです。審査会では、展示の方法についての意見がとても参考になりました。「1_WALL」に応募したのは、年齢制限もあるみたいだから今年は応募してみたら? と友人に言ってもらったのがきっかけ。自分の作品づくりの次のステップが見えてきたので、参加できてほんとうによかったです。
鰹とニメイさん
前回の「1_WALL」でもファイナリストに選んでいただいたのですが、その時は自分の作品に満足することができなかったんです。今回は、前回悔しい思いをしたところを自分が納得いくようにできたので、うれしかった。いろんな意見も聞くことができて、今後の作品づくりへの刺激になりました。今は、新たにアニメーション制作に取り組んでいます。今後もいろいろなことに挑戦していきたいです。
一乗ひかるさん
自分の思いが表現できずに、不完全燃焼のまま終わってしまいました。でも、作品に対しての向き合い方を改めて考えさせられました。プロのイラストレーターやデザイナーの方たちから、こんなに間近で意見を言ってもらえる機会は他にありませんから。時には厳しい意見も率直に言ってくださったので、気持ちがよかった。他のファイナリストの方たちからも、たくさんのことを教わった気がします。
谷口典央さん(グランプリ決定!)
応募するのなら、絶対にグランプリをとりたいと思っていました。でも、実際に選ばれてみるとまだ実感は湧かないですが、やっぱりうれしいです。これからも、今のような作品をつくり続けてもいいんだという自信を得ることができました。一年後の個展は楽しみでもあるし、同時にプレッシャーも感じています。今まで作品づくりを応援してきてくれた友人たちにはもちろん見てもらいたいですし、もっとたくさんの方に見てもらってなにかを感じていただけたらうれしいですね。
第13回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展