真似から始めよ
真似することは恥ずかしいことではない。まずは真似から始めよ。とにかく最初は自分が尊敬する人を繰り返し真似よ。
真似をすることこそ、「守・破・離」のフレームワークの最初のステップとなる。ただし、真似をするには条件がある。そのお手本を追い着き、そして追い越すこと。 hr.icon
(JI1BXM.icon加筆)古来から伝わる「守・破・離」、言い換えれば、 守:まずは、今までのやり方を完璧に真似て、
破:今までのやり方の一部をぶち壊して、
離:そして、今までのやり方から離れて、独自路線を進むこと。
武道にせよ、茶道にせよ、(修行者は)これらの段階/ステージをひとつづつ踏んで進んでいくわけです。
なので、真似ることは決して恥ずかしいことではなく、独自路線(個性)を出すためにも必要なことなのです。
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JN1GGZ.icon JN1GGZ が、建築系専門学校の非常勤講師をしていた時
専門学校側からの要望や講師の打ち合わせで、「生徒の個性を伸ばしていきたい」と言われた。
他の講師は課題を与えると、「自由にやりたいように進めなさい」とスタートさせた。
私の進め方は、まず基本を教えること。コピーを重ねて「常識」を教えることから。
まずは「常識」を身につけることから
一般的な建物がどのように設計されているかを知る → 常識を知る。→ 守
常識は必ずしも正しい訳ではない。固定化されたものではないはず。
なのに、時代から取り残されることも多い。その常識の問題に気づく。→ 破
古くなった常識を「上書き」できる → それこそが個性だ。→ 離
JN1GGZ.icon JN1GGZ は、工業高校建築科を卒業すると、卒業式の翌週(18歳)から設計事務所に通い始めた。
工業高校建築科で学んだ程度では何の役に立たない。当然、建築士の資格はない。
最初に頼まれた仕事は、何十枚ものA2版図面をA4版に、綺麗に揃えて折りたたむことだった。
最初は上司から教わった手順に従い、ひたすら折りたたんだ。→ 守
作業のスピードが段々と上がっていった。
何日も何日も折りたたみ作業は続いた。ある時、疑問を持った。
A2版図面をA4版にたたむだけとはいえ、6ステップの作業があった。
そのステップの一つは、「目検討」で折り位置決めなければならず、仕上がりを悪くしていた。
この「目検討」でのステップを解消するために、
ステップの順番を入れ替え、折り方を修正した。→ 破
この変更により全てのステップから、「目検討」をなくすことにより、
全て折り位置を物理的に決定でき、完全に同じ大きさに折りたためるようになった。→ 離
入所3日後、上司は私の席まで来ることは少なかったが、私の作業を確認しに私の机に来た。
「大瀧君、折り方が違うよ」と言われた。私は答えた。
「こう折った方が、完全に大きさを揃えることができます」
すると上司は「大瀧君、君は社長になれるよ」と笑いながら、私の机を背にした。
その上司の予言は的中した。私はその2年半後に設計事務所を設立した。進学した友人は大学3年生だった。
「折り方」といえば、 JN1GGZ.icon JN1GGZ にはもう一つ特記すべきことがあった。
幼稚園の頃だった。折紙をしている私が思い浮かぶ。
幼稚園での休み時間、ほとんどの子どもたちが園庭に出ていくのに対し、部屋に残るのは私だけだった。
私は部屋に残りひたすら折紙をしていた。正方形の色紙が、様々な立体へと立ち上がる魔法が私を虜にした。
褒めてくれていた先生も次第に呆れてしまい、「もう折紙あげません。外で遊びなさい」と言われたほどだ。
ある日、折紙でピストルを作る折り方を先生が教えてくれた。子どもたちに間で大ブームとなった。→ 守
部屋のみんなが、折ったピストルで西部劇の真似事をした。部屋全体がその舞台となった。
私もピストルを作った。いくつも作ったピストルを眺め、きっと閃いたのだろう。→ 破
二つのピストルの手で握る部分を、組み合わせて一つにすると「くの字」型となる。
その「くの字」が、ブーメランとなったのだ。一番最初に、そのブーメランを飛ばしたのは私だった。
あっという間に私たちの部屋の西部劇の舞台に、たくさんのブーメランが舞うこととなった。→ 離
みんなが楽しそうにブーメランで遊ぶ中、
このブーメランを発案したのが私だと、気付かれないことが、逆に嬉しかったのはなぜだろう。 JN1GGZ.icon JN1GGZ は、現在(2023/4)とある幼稚園の仕事をしている。
その幼稚園の旧園舎は名作だ。私は狭山市で最も美しい建築だと思う。
旧園舎を設計した建築家が、母校の20歳上の先輩と知り、建築家の自邸に訪問する機会をもらった。
建築家と向かい合い、どうしたらあのような建築を設計できるか聞いた。建築家は答えた・・・
「尊敬している建築家がいる。その建築家に近づき建築の本質を知りたい」→ 守
「だから、繰り返し写しているだけだ。そう真似だ。真似することは恥じることではないのだよ・・・」
「だけど真似をするには条件がある。そのお手本を追い着かなければならない」→ 破
「そのお手本を追い着き、そして追い越すこと。それが真似が許される条件だ」→ 離
「そのために私は、建築をずっと勉強しているのだよ」と、
建築家は振り返り本棚から、バラバラに分解した建築作品集を取り出し、私の前へと差し出した。
「もしかすると」と建築家は言った。「私は運が良ければ、その建築家に追いつけるかもしれない・・・」
20代前半の JN1GGZ.icon JN1GGZ には、その控えめな言葉が、
「目指している建築家よりも、いい建築を造り上げたいのだ」と聞こえたのだ。
今振り返るとわかる。この建築家の生き様そのものにも、守 ・ 破 ・ 離 を見てとれる。
20代前半の頃から JN1GGZ.icon JN1GGZ には、優れた人と出会う力、優れた人を見抜く力が備わっていたようだ。
私はいつ、どうようにしてこの「守・破・離」を身に付けたのだろう・・・ hr.icon