網膜的絵画
デュシャンは,レディメイドを選ぶ際に,「視覚的無関心」を重要視したといわれている。それは,彼のいう「網膜的絵画30」に対するアンチテーゼであり,平芳が噛み砕くところによると,「形や色などの形態的な良し悪しといった「ひとの感性に訴えかけるような要素」で判断しない31」という,素材選択の態度である。レディメイドを素材の観点からみると,「素材の選択」が観客から先んじた芸術家の仕事であり32,「何を選択するか」(=作品)が,自己批評(=芸術とは何か)の起爆剤にもなっている。つまり,作品内容において「素材選択」が,重要な役割を果たすのである。
30 デュシャンによると,ただ目の快楽に供されるための絵画。
32 デュシャンは「鑑賞者が作品の創造過程に参与する」と述べ,芸術制作と鑑賞とは同等に創造的であると捉えていることがわかる。