マルロー
マルローは多く芸術論を記したがしかし、単著はゴヤとピカソのみである。そしてピカソは回想であるからして、ゴヤとはマルロー随一の本格的な芸術評論である。 われわれがとり上げる作品のほとんどすべては、「初期作品」の後、多かれ少なかれ公衆の前から隠された。「カプリチョス」の発売は禁止された。『戦禍」も「不協和」もゴヤの生前に頒布されることはなかった。「輩者の家」の絵画はひとにぎりの人たちにしか知られていなかった。この激烈な予言はほとんど述べられずに終わったのであり、ゴヤはパスカルのように後世に認められた天才としての名高い才能を持っていた。天才と言われるゆえんは、調和の意志と断絶したことのみにあるのではなく、栄誉を付加したことにもある。そして偉大なる宗教的様式に匹敵する様式を見出したことにもある。私がここで分析しようと試みるのはこのような天才である。
ゴヤの芸術とは、悪霊たちの出現を貼かげんし、自らの狂気を飼いならして、そこから一つの言語を作り出したことにある。