マルセル・カルネ
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ガランスに一途な純愛を向ける主人公バチスト(ジャン=ルイ・バロー)は、ボヘミア出身の有名なパントマイム俳優ジャン=ガスパール・ドビュローが元ネタ。そのバチストと友情を育みつつ、恋敵となるプレイボーイの不良俳優フレデリック・ルメートル(ピエール・ブラッスール)は、当時の犯罪大通りを代表する人気スターにして劇作家だった。殺人や強盗を繰り返す犯罪者ピエール・フランソワ(マルセル・エラン)のモデルは、ブルジョワの出自でありながら特権階級への抗議として凶悪犯罪を重ね、バルザックやドストエフスキーにも影響を与えた犯罪者ピエール・フランソワ・ラスネール。また、財力にものを言わせてガランスを囲うモントレー伯爵(ルイ・サルー)は、ナポレオン3世の異父弟シャルル・ド・モルニー公爵を下敷きにしているという。
また、プレヴェールは犯罪者ラスネールに、ある種の義賊的な魅力を見出していたとも言わる。「(ナチスは)ラスネールの映画を作ることは許さないだろうが、ドビュローの物語にラスネールが出てくる分には構わないだろう」とも述べていたそうだが、もしかすると彼のキャラクターに、フランス革命以来の庶民の抵抗と反骨の精神を投影していたのかもしれない。