建築デザインⅠ/2022年度
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本課題では、物質と形態について考察し、物質から空間と建築を作ることを考えてもらいます。
建築は物質でできています。その一方で、建築は形でできています。物質という現実的な位相と、形という潜在的な位相が重なるところに建築が生み出されます。この課題ではあえて物質という現実的な位相に着目することで、建築を創造する新たな視座を得てもらおうと思います。建築はローカルでありつつ、グローバルでありうる存在です。本課題では、物質を建築のローカライズの手段として、形を建築のグローバル化の手段と捉えながら、「地域にありながら、世界につながる建築」を構想してもらおうと思います。
これからの時代、子どもたちは街の中でどう育つでしょう?こどもたちと共に、親は、街はどう育つでしょう?実際に子育てをしている方々に話を伺うと、待機時代問題は単に保育園や保育士さんを増やせば解決するものではないと実感させられます。生活と仕事を切り分けたこと、家と地域切り分けたこと、など、機能や場所の分化を乗り越えなければ、根本的な解決にはならないと、改めて痛感するのです。
そこで、保育園(保育園施設)幼稚園(教育施設)など、既存のビルディングタイプを横断するような、街の中でこどもも親も一緒に育ち、学ぶ場を設計してください。そのような建築を仮に、街をサポートする「こどもセンター」と名付けます。
今回の課題では、今まで以上に街を観察し、横断的なプログラムを考察し、考えを積み重ねながら設計することを念頭においてください。進め方として、おおまかに、①敷地のある街の構造特徴・問題点・人間の行動などを読み取る/②現況のこども施設には、どのような良い点、悪い点があるのかリサーチする/③それらをもとに、どのような場が街をサポートする「こどもセンター」となりうるのかヴィジョンをたてる/④そのヴィジョンをもとに設計を進める(毎回違う提案をエスキスに持ってくるのではなく、自問自答しながら案を深める)/⑤その建築の実現が、街に生きる人間や周辺環境、社会にどのような影響をもたらすのか考察する、という流れで実践してください。
将来あなたにこども生まれたとして、その時に、希望を持つことができるような建築の提案を期待しています。
建築を多種多様な「流れを編む存在」と位置付けて、地域社会や風景を構想してください。
流れというと、まずは人の移動、(スパンの長短を問わず)や交通が挙げられます。人々が集う公共的な建築は、これらの流れを円滑にしたり、滞留させたりしてつくっているといえます。また、熱や風といった自然現象流れの一種です。人間にとって快適になるように、窓の開け方や外形、あるいは建物を配置を工夫します。これらの自然現象は、あるときは土砂や氾濫といった災害的な要素を伴うこともありますが、それをどのように制御するのかということでデザインは発達してきました。
物の流れも昔からある流れのひとつです。近年はネットで買うことが一般化して、物流はどんどん大きな流れになっていますが、地域内で小回りのきく物流は高齢化が進む社会にとっては重要なテーマです。
人々の活動を維持していくための仕組みのデザインもまた、流れのデザインです。単体の流れをいろいろ列挙してきましたが、この流れを円滑にしたり、淀みをつくったりするところに、物理的なデザインが潜んでいます。設計のスタジオなので、この物理的なデザインについて、見識を深めたいと思います。
その上で、この課題では、複数の流れを重ね合わせることの可能性を追求したいと思います。異なる流れが出会ったり乗り換えたりするところでは、いろいろな意味での交換が発生します。その効果を最大化するためには、場合によっては、上に書いたように配置レベルからデザインが再考されます。
この複数の流れを重ね合わせることを「編む」と表現します。つまり、流れを編む建築は、地域社会での生活の質や、風景のあり方を左右することができます。
そもそも社会とは分業です。分業である以上は、移動と交換が前提です。人やモノの移動のみならず、森羅万象の流れもふくめて、移動や交換の質を変化させるとき、どのような建築、地域社会、風景が描けるでしょうか。一緒に考えていきたいと思います。
指導教員