建築デザインⅠ/2021年度
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本課題では、素材と形態について、考察し、自分なりの建築の作り方を考えてもらおうと思います。
建築は、その多くの場合において、人の活動のための器です。社会へのまなざし、人と人へのまなざしは建築の創造にあたっての根源をなすものだと考えます。しかしながら、本課題では人の活動の器としての建築よりも、「ものの形」としての建築にそのまなざしを向けたいと思います。
建築は物質でできています。その一方で、建築は形でできています。物質という現実的な位相と、形という潜在的な位相が重なるところに建築が生み出されます。物質がしばしばその地域の風土と切り離すことができない一方で、形態は地域を超えて構想されることが可能です。(実のところ、その逆も可能でしょう。)本課題では、素材を建築のローカライズの手段として、形を建築のグローバル化の手段と捉えます。そうして、素材が作る形態、形態が引き出す素材の表情にまなざしを向けながら、「地域にありながら、世界につながる建築」を構想してもらおうと思います。
「未来の商店街」を設計してください。魅力ある既存の商店街を活用して改造するというアプローチでも、ポテンシャルを感じる現在は商店街ではない場所を新築するというアプローチでも構いません。あなたが考案する「未来の商店街」は、人々の生活・集まり方をどう変えるのか、あわせて提案してください。コロナ時代の生活を経て、私たちは方法はどうであれ誰かとの繋がりを求めてしまうこと、また、インターネットで全てのショッピングを済ませることができるとしても、結局は街にも出かけて、買い物や飲食をしてしまうこと、など、集まることに対する抗えない習性や人の気配に対する欲望を実感したのではないでしょうか。いつの時代も、人間は何らかの群れに属しながら、生きているわけですが、時代ごとに群れのあり方、スケールは変化を遂げてきました。そして、時代を画する建築は、未来の群れのあり方を予言的に示してきたと言うことができます。この課題では、未来の商店街とはどのようなものか、商店街という状況・群のあり方を再定義するところから考えます。既存の商店街を改造する場合も、新規に商店街を作る場合も、街が生き生きとしているとはどのような状況なのか、賑わいとは違う価値を生み出すことはできるのか、人間はどのような群に魅力を感じるのか、既存の街の改善点にはどんなことがあるのか、どんなコト・モノが群を特徴づけているのか、という分析をし、ヴィジョンを持った上で、未来の商店街が人間にもたらす効果を想像しながら、建築の設計に結びつけてください。
産業はわたしたちの生活や地域の風景を規定してきました。これからの産業のあり方を考察し、生活スタイルや風景と共に建築を構想してみたいと思います。新型コロナウィルスの感染拡大は、確実にこれまでと異なった生活を強いていますが、その一方で、変わらぬ価値や再評価される価値というものを炙り出しています。情報技術の進展やグローバリズムによって、移動や交換の規模や頻度が桁違いに進展してきました。今後は量的な拡大ではなく、質的な変化が進むでしょう。たとえば、オフィスビルや住宅についてはおそらく、集約型ではなく離散的なあり方が模索されるでしょう。しかし、この場合の移動手段やエネルギー調達はどう考えたらよいでしょうか。コンパクトに複合化するあり方が模索されるのかもしれません。土地や場所に依拠する一次産業を考えてみると、たとえば食料供給の安定性はこれまでとは違った価値を帯び始めるように思います。
産業は人間が生活していくために必要な活動であり、社会的な分業です。分業である以上は、移動と交換が前提です。移動や交換の質が大きく変化するポスト・産業社会では、どのような建築や風景が描けるでしょうか。昨年度の成果は、移動と交換に着目して建築を構想することの可能性でした。この知見をもう一段階進め、どのような風景を描けるか、皆で追求してみたいと思います。一緒に考えていきたいと思います。
指導教員