建築デザインⅠ/2020年度
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私たちは、このコロナ禍の前には実際の社会と共にネット社会をも満喫し満足し、そしてSNSを利用することで、いつどこででも人と繋がることができると考えていました。もっと言えば、人と人は「いつでも繋がっている」と思っていました。もちろんその事象を可能にした携帯電話やスマートフォンという機器に依ることが大きいのは言うまでもありません。人を場所という概念から自由にして、いつでもどこでも、家族や友達と繋がれることを可能にした現代技術の恩恵を、私たちは謳歌していました。
しかし今、私たちは改めて「繋がる」ということを意識し始めています。何も起きていなかったら気がつかなかったかもしれない、人と人が出会う意味というものを真剣に考える事態が傍にあります。それは建築という存在自体にも大きな影響を与えることとなるでしょう。なにしろ「建築」はその存在理由を「場所」という概念に大きく頼っているのです。しかしこの事態はその概念を大きく揺さぶっています。人が辿り着くことが不可能な建築にどんな意味があるのか、建築の計画学では教えてくれなかったのです。
今回の課題では、ある場所に建築を計画することによって、あなたが行くことができない、しかし、あなたの大切な場所について考えることができる建築、想うことができる建築を計画してください。ある場所に建築することで他の場所と繋がっている、そんな建築を一緒に考えてみたいと思います。場所という概念から切り離されて、他の場所へ想いを巡らせることのできる建築とはどんなものでしょうか。目の前に建物を作るということだけで終わらない、まったく異なる場所と繋がっている建築を考えてみたいと思っています。
ビルディングタイプという既存の枠組を解きほぐしながら、1000 脚の椅子がある建築を構想してください。
言い換えると、「1000 人が座る場」を、ひとりひとりの座り方・座るというアクティビティの集まり方から設計してください。
みなさんは、いま、毎日を家の中で過ごしています。
いつもより長い時間家にいることは、日頃の生活や身の回りの環境を身体化する絶好のチャンスです。
街・コンテクストから建築を考えるのではなく、身体・アクティビティから建築を考えることで、新しい場を創造できるのではないでしょうか。
そこで、ごく身の回りの場を読み替えることから、スケールの実験をしてみたいと思います。
これからの産業のあり⽅を考察し、⽣活様式や⾵景と共に建築を構想しましょう。⼀緒に考えていきたいと思います。
新型コロナウィルスの感染拡⼤は、確実にこれまでと異なった⽣活を強いていますが、その⼀⽅で、変わらぬ価値というものを⾒せつけているように思います。
情報⾰命やグローバリズムによって移動や交換の規模や頻度が桁違いに進展しましたが、これからはおそらく、職や住を⽀える建築については離散的なあり⽅が模索されるでしょう。しかし、この場合の移動⼿段やエネルギー調達はどう考えたらよいでしょうか。このように考えるとき、例えばですが、⼟地や場所に依拠する⼀次産業、たとえば⾷料⽣産の安定性はこれまでとは違った価値を帯び始めるように思います。
産業は⼈間が⽣活していくために必要な活動であり、社会的な分業です。分業である以上は、移動と交換が前提です。上で概観したように、この前提の質が⼤きく変化するとき、どのような建築、社会、⾵景が考えられるでしょうか。
指導教員