チームが機能するとはどういうことか
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まとめ
ソフトウェア開発だけでなく、あらゆる分野 (医療系だったり) のチームについて。
チーミング : 目まぐるしく変わる職場環境に置いて、時と場所を選ばずに協働するという活動の仕方。 チームワークなど。 学習するための組織づくり : チーミングを原動力とする組織学習。 (変わり続ける世の中で成功するためには必須。)
学習しながら実行する : 絶え間ない学習と高いパフォーマンスを組織として結びつける活動の仕方。
仕事をこなしながら、同時に、どうすればもっとうまくできるか探し続けること。
詳細
第 1 部 チーミング
意見の不一致が起こったとき、「彼女はわかってない」 とか 「彼は自分のことしか考えてない」 となりがち (P87)
意見の衝突を新しい理解や尊敬、信頼を築くチャンスにすることができる
2 つの認知的誤謬を考えると良い
素朴実在論 : 客観的実在を自分はよく知っているという信念 (他者も理性的で道理をわきまえている限りはその実在を自身と同じように知覚するはずだ、と考えてしまう) 2 つの認知システム (P91)
熱い認知 : 何かに熱中しているときに、人間に感情的で急な反応をさせる原因になる
冷たい認知 : 慎重で注意深い。 対立が起きているときに効果的にチーミングを行うのに欠かせないツール 第 2 部 学習するための組織づくり
一時的なチームの場合、メンバーの役割をフレーミングするのに欠かせないのは、理由があって選ばれていることを明確に伝えること 129 これにより、専門技術上の深いかかわりと気持ちの上での深いかかわりが生まれる
変化が必要なもので、その変化が困難で、メンバー全員の力が不可欠だと感じられる
プロジェクトの目的や価値を伝えて団結を促す 130
目標咀嚼もこれの一つかも nobuoka.icon 学習フレームの確立 (P137)
登録 : プロジェクトメンバーが熟慮の上選ばれていること、プロジェクトの目的を伝える
準備 : 職場を離れてセッションを開き、新たな技術などの変化がもたらす結果について意見を交わしたり、今後の行動について練習する
→ プロジェクトを成功させるには一致団結して仕事をする方法や問題を予期する方法を学ぶ必要がある。 対人リスクをいとわなくなり、不確定な行動のために尽力しようと意欲的になる
試行 : 新しい考え方やツール、プロセスを試してみて、どんなことが起こるか注意を払う
→ あらゆる出来事、あらゆる行動が学習する機会と考えられる
省察 : 試行の結果について話し合う。 学習する機会
対人不安のせいで、まずい決定がされたり実行されるべきことが実行されないことがある 153
対人リスク 4 種類 158
無知だと思われる不安
無能だと思われる不安
ネガティブだと思われる不安
邪魔をする人だと思われる不安
仕事を止めると厄介なやつと思われると思いがちだが、実際にはやりとりによりチームの学習が促進される 159
心理的安全は個人の特性ではなく、リーダーが生み出せるもの 161 人が重視するのは、能力よりも優しさや信頼できるかどうか 162
心理的安全による 7 つのメリット 164
率直に話すことが奨励される
考えが明晰になる
意義ある対立が後押しされる
失敗が緩和される
成功という目標を追及する上での障害が取り除かれる
責任が向上する
心理的安全を高めるためのリーダーの行動 180
境界を設ける 188
境界を超えたことについて責任を負わせる 189
心理的安全は、互いが信頼しあい、尊敬しあうことを特徴とする職場環境を表す社会的構成概念 190
失敗から学ぶことを手助けしようとするマネージャーがいても、学習がうまくいかない。 失敗は悪いものでそこから学ぶのは簡単だという意識 195
協働時に失敗がつきものなのは、技術的なチャレンジの存在と人間関係上のチャレンジの存在感による。 後者のが難しいことが多い 197
失敗には避けられる不幸と避けられない結果の両方が含まれる。 社会的心理を考えると、その言葉には精神的な重荷と組織の不名誉が含まれるのと、その言葉が曖昧で取るに足らないものから重要なものが含まれるという事実 199
小さな失敗から学習する 200
失敗から学ぶのは難しい。 心理的に 201
避けられない失敗も咎めるべき出来事によって起きたかのように扱われることが多い 208
↑ 前職でもプロジェクトの失敗でいろいろあったけど、変な不満が残ってたりするとだめそう nobuoka.icon
複雑な業務における失敗はたいてい組織のプロセスに責任がある 211
失敗にはコンテクストに応じたアプローチが必要 214
失敗の 3 タイプ 215
防ぐことのできる失敗
複雑な失敗
知的な失敗
認識された失敗に対するグループの志向を決めるのに、リーダーは重要な役割を果たす (探索反応か確認反応か) (P221) 探索反応 : リーダーはすでにある仮定をそのままよしとするのではなく、ものの見方を意図的に変える。 解釈の仕方や判断の仕方も変わり、新たな行動や可能性を試すことが必要になる 確認反応 : リーダーがこの反応をすると、多くの人が正しいと考えている仮定がたしかに正しいものだと後押しされる。 人間の自然な反応として、すでにある信念を確認するデータを探すようになる 失敗したときに 「誰のせいか」 ではなく、何が起きているかについて明晰な理解を得られるように 222
失敗から学ぶための戦略 224
失敗はなかなか報告されない。 リーダーは、問題を報告した人を歓迎する、データを集めて意見を求める、失敗だと気づいたらインセンティブを与える、という行動を取る必要 225
データを集めて様々なタイプの失敗を浮かび上がらせるのに効果的な方法はコミュニケーションをとること 226
実験的な行動プロセスにおける失敗を公表するタイミングは難しい。 人は最高の結果を期待しがちで、早い段階での失敗を認められない。 無駄に続くプロジェクトも多い 227
失敗を分析し、そこから学ぶことには多くのメリットがあるが、綿密に因果関係を分析する必要がある。 表面上の原因は本当の課題ではないこともある。 失敗を分析することに対する組織的、社会的障壁を克服する環境を作るために行動する必要がある。 人々が率直に話し、組織のほかの人たちが耳を傾けるときにしか分析は効果的にはならない 228
TQM や統計的手法といった総合的品質管理の手法が、特にルーチンの業務において役立つ 230 さまざまな専門分野から人を集めてプロセスの弱点について話し合うのが、主に複雑な業務における失敗で役立つ 230
体系的にデータを分析することが、複雑な業務や、イノベーションの業務では特に役立つ。 失敗から、本来の目的とは別の発見をすることもある 231
リーダーができる 3 つ目の、そして一番重要な行動は、失敗する可能性が高いことを認識した上で試みを推奨し、多くの知的な失敗を生み出してそこから学ぶこと。 効果的に試みを行う組織は、そうでない組織よりも革新的で、多くの利益を生み、成功する可能性が高い 232
試みを推奨しても、失敗に対する不安 (不名誉であるといったもの) のためになかなか試みが行われない。 強力なリーダーシップが必要。 234
失敗に罰を与えるのではなく、インセンティブを与える。 例えば 「失敗パーティー」 の導入。 マネージャーは、人々が失敗に対して気楽な気持ちを持つのではないかという不安を持ちがちだが、実際は多くの人が成功したいという意欲を持つようになる 235
言葉の力。 トライアルアンドエラーではなく、トライアルアンドフェイラー。 ミス (エラー) ではなく失敗 (フェイラー)。 「うまくいかなかった試み」 と言うなどできる。 認知的にも感情的にもその違いははっきり伝わる 236
知的な失敗をデザインすること。 テストでは、失敗したときにそこから効果的に学習することができるような試みを行うべき。 実際には、成功の可能性を裏付けたり確認するようなテストが多く行われている。 テストの段階で成功することを強く意識するのではなく、本格的な提供が始まったときに成功するように、テストでは学習できるように意識するとよい。 237
R だといわゆるフィジビリなどにおいてここを意識すると良さそう。 nobuoka.icon
5 章まとめ。 失敗から学ぶことは組織の学習として効果が高い。 だが、失敗から学べない組織が多い。 それは意欲が低いからではなく、学ぶためのプロセスやインセンティブが多くの組織で欠けているため。 人は、能力不足なように見えるものについて最初は非難しがちだが、そうしてはならない。 238
2010 年のチリ、サンホセでの鉱山崩壊事故。 閉じ込められた人、技術者と地質学者、政治界といった舞台で最初はそれぞれチーミングが行われて、やがて境界を超えたチーミングにより全員が 70 日で救出された 242
専門家同士、組織同士の境界でコミュニケーションがうまくいかないために、しょっちゅうチーミングが阻害されるという問題 251
スキルや考え方、目標の違いという境界 (それぞれが当たり前だと思っていることを仕事に持ち込んでしまうという場合など) もあれば、時差や物理的な距離といった境界もある
マネージャーとチームメンバーは、自分たちは様々な見方を持って集まっていることと、自分が自分の信念や価値観にとって正しいことを当たり前だと思いがちなことを認識する必要がある。 当たり前になっている思い込みに気づくのは難しいので、肝に銘じて特に注意すること。 253
単純だが起こりがちな例としては、同じ言葉を組織や職種によって違う意味で使っていてすれ違いが起こること。 255
境界を超えたチーミングの必要性が増している。 知識や専門知識の進歩の速さと国際競争によりタイムフレームが圧縮されていること 256
複雑な組織でのチーミングで直面しやすい 3 つの境界 258
物理的な距離
地位
知識
超えるべき境界で一番難しいだろうのは地位の境界 261
力を持たない人は、普通はっきりと意見を述べられない。 何かを変えることについての考えは、シニアマネージャには批判として受け取られかねないと、多くの人がなんとなく思い込んでいる。 医師と看護師みたいに、直接の上司、部下の関係になくても地位の境界はできうる
地位の境界を超えるために、リーダーシップにより一体感をもたらすこと。 そこでは地位の高い人たちが積極的に他の人の意見を求め、感謝を示すことになる。 境界を取り払った結果として責任について再度話し合うことになってよりよい改善ができたりもする 267 知識の境界、自分の周りで当たり前の知識だと、組織全体に共有する必要があるとは感じずに共有されない問題。 他プロジェクトの知識を得るために、組織の同僚に自分のプロジェクトの最新知識を共有して仲間を増やす方法がある 270
部署の垣根を超えたチーム (クロスファンクショナルなチーム) を作るなどして異なる専門性の人々が協働するのは効果的。 職業的な境界をなくすというチャレンジのために 「バウンダリー・オブジェクト」 を使うという手法がある。 図面や試作品や部品といったもの 274 境界を超えたコミュニケーションを促進 3 つ 276
上位の共通目標
他の人が考えていることや心配事について関心をもつ、一時的な文化の島、具体的な経験や感情についても話す、文化が違うと不快に感じることについて話して境界を消す
プロセスの指針を示す、全員が従おうとするものをドキュメントで示す
第 3 部 学習しながら実行する
今ある答えが不完全であることを意識し、仕事をするための新しいよりよい方法をみんなと見つけたいと思うことを求められる 290
うまくいっていることが続くとそれで満足しがちで、ゆっくりと力を失っていくことに気づきにくい 290
新規サービスはロールアウトするのではなく、新しもの好きの顧客数人に試してもらってサイクルアウトする 309
学習しながら実行するサイクル、診断、デザイン、アクション、省察 311
診断のやり方はプロセス知識スペクトルに応じて変わる
ルーチンの業務だと知っている分野のパフォーマンスを知っている方法で評価
複雑な業務では仕事が直面するリスク評価に関連。 「この状況について我々が知っていることは何か、知らないことは何か、完全に見落としているかもしれないことは何か」 という問が役立つ。 心理的安全が重要。 効率より安全や品質に関するパフォーマンス
イノベーションの業務ではチャンスを秘めた分野を突き止めること。 市場分析や技術的分析、ビジョンを持つこと。
デザインは行動についてチームで仮の約束をすること。 最初のデザインはスタート地点に過ぎない。 ルーチンの業務では 「改善」 を続けること。 複雑な業務では、様々な意見を活かして多くの選択肢を持つこと。 イノベーションの業務では次に行う試みを思慮深くデザインすると、のちのちの時間や費用を節約できる。 316
アクション、考えることから試すことへ。 実際に起きていることも追跡すること。
メリットが大きくリスクが高い環境ではシミュレーションが役立つ 321
プロセスに関してデータを集めるのはアクションの一部。 うまくいっていることといっていないことを見極め、認識された失敗を繰り返さないのが目的 323
省察がしぶられる。 またやりたいことともうやりたくないことを 5 つずつリストアップしてポジとネガのバランスをとる 325 学習の費用は利益よりも見えやすい。
短期的には悪い知らせが増えるように見える。 (が、それは良い知らせである。)
リーダーは待ち受ける困難を予想して説明することが必要。 328
複雑な業務で人々をリードするのは、たいてい、良い答えではなく、良い質問を多くすること 359
文化を変えることが目的ではなく、人の意識を仕事に集中させることで結果として文化が変わる 371
文化を変えることに集中するあまり、取り組みが失敗することが多い