自由時間が5時間を超えるとストレスになる
要約: 自由時間が増えると初めは幸福度が上がるが、ある一定以上の自由時間が増えると、それを有意義に使わないと主観的な幸福度が低下する可能性がある。gpt.icon Sharif, M. A., Mogilner, C., & Hershfield, H. E. (2021). Having too little or too much time is linked to lower subjective well-being. Journal of Personality and Social Psychology, 121(4), 933–947. https://doi.org/10.1037/pspp0000391 Many people living in modern society feel like they do not have enough time and are constantly searching for more. But is having limited discretionary time actually detrimental? And can there be downsides of having too much discretionary time? In two large-scale data sets spanning 35,375 Americans and two experiments, we explore the relationship between the amount of discretionary time individuals have and their subjective well-being. We find and internally replicate a negative quadratic relationship between discretionary time and subjective well-being. These results show that whereas having too little time is indeed linked to lower subjective well-being caused by stress, having more time does not continually translate to greater subjective well-being. Having an abundance of discretionary time is sometimes even linked to lower subjective well-being because of a lacking sense of productivity. In such cases, the negative effect of having too much discretionary time can be attenuated when people spend this time on productive activities. (PsycInfo Database Record (c) 2021 APA, all rights reserved)
これまでの研究で1日の内の自由時間が少ないほど幸福度が下がることが報告されているのだが、では潤沢な自由時間は幸福度の増大に直結するのだろうか? 米・ペンシルベニア大学ウォートン校の研究チームが2021年9月に「Journal of Personality and Social Psychology」で発表した研究では、調査と実験を通じて自分で自由に消費できる自己裁量時間が多すぎることで生じるデメリットを浮き彫りにしている。
研究チームはアメリカ人がどのように時間を消費しているのかについて2012年から2013年の間のデータと、1992年から2008年のデータを通じて3万5375人の自己裁量時間と幸福度の関係を分析した。
分析の結果、確かに1日の内の自己裁量時間が長くなるほどに幸福度が増しているのだが、それは2時間で頭打ちになり、幸福度は横ばいになっていることが突き止められた。そして自己裁量時間が5時間を超えるとむしろストレスとなり、幸福度が低下しはじめることがわかってきたのである。
なぜ自由時間が多すぎると幸福度が低下するのか。研究チームによればそれは増えた自由時間を非生産的な活動に費やしてしまうことで、主観的な幸福度が損なわれるからであると説明している。つまり時間をドブに捨てるような過ごし方をしてしまった場合、自己肯定感にネガティブな影響を及ぼすということだろう。皮肉なことにこれがストレスとなり幸福度が下がることになる。 実際に別の実験では余暇時間において生産的な活動(たとえば運動、趣味、ランニングなど)に従事した場合には、自由時間が長くなっても主観的な幸福度は低下しなかったのである。
つまり自由時間が増えたとしても、その時間に意味があると思えることに打ち込むことができれば何の問題もないが、潤沢な時間を無駄に過ごしてしまったと自覚している場合、主観的な幸福度はじわじわと低下していくことになる。
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