PICSY
鈴木健が提唱する伝搬投資貨幣システム(Propagational Investment Currency SYstem)の略。 既存の貨幣システムである決済貨幣SECSY(SEttlement Currency SYstem)と対比される。 目的
SECSYでは、貨幣をためることが手段ではなく目的となり、ある種の「フェティシズム」を生み出してしまう
貨幣の価値が財との交換である「フロー」ではなく、貨幣そのものの貯蓄である「ストック」だと誤認識される。
PICSYを使用することで、自動的に価値が伝播するため、価値を「会社」という膜に囲い込むことが難しくなる また、取引が伝播することで人々の財に対する価値観を変革させる
概念
詳しくは論文・本を参照されたい
あらゆる取引が投資となる。比喩的には、全構成人が自分の株を発行し、その株であらゆる取引を行う。
誰かから買う時、その人に投資していることになる
誰かに売る時、その人から投資を受けていることになる
今まで、取引と投資は別の者として考えられてきた。取引は契約上の関係であり優先的に請求する権利があるが、投資は契約ではないため残余財産請求権が与えられる。natsuozawa.icon
具体的には、buyerがsellerに対する相対的な「評価」を上げることがその人への投資に繋がる。
人Aから人Bへの評価 * 人Aの貢献度 = 人Aから評価されることによって得られる人Bの購買力の向上(価値=購買力)
任意の人Aから全人類への評価を足すと1になる
任意の人から任意の人への評価を要素とした評価行列によって状態を表すことができる
任意の人持っている貨幣の総額は貢献度としてスカラーで表され、全体の状態は貢献度ベクトルによって管理される。
この貢献度ベクトルは評価行列の固有ベクトルになる。
理由としては、購買力(アウトプット)が貢献度(インプット)に比例するべきだからである。natsuozawa.icon
貢献度ベクトルが固有ベクトルであれば、貢献度ベクトルと評価行列の積は貢献度ベクトルと固有値(スカラー)の積になる。
「貢献度ベクトルはマルコフ過程の定常状態として解釈することができる」
人Aが人Bから購入するとき、人Aが購入した他の人への評価は必然的に下がる。
こうして、フロー的な貨幣が築かれると鈴木健は主張する。 ただ、購買力を最大化したいという点で、貨幣のフェティシズムは存続するのではないか?natsuozawa.icon
人Aが多額の購入をすると他の人の貢献度が大きく下がってしまうというアタックが可能になるため、「予算制約」を導入する必要がある
少しずつ全てのメンバーの評価を減らす動作を「自然回収」と呼んでいる
カンパニー
PICSYでの大規模な経済活動を可能にするための仕組み
取引のインターフェイスを単純化させる(企業がなければ、サービスの実現に関わるあらゆる人と取引し責任やリスクをマネージするのが難しくなる)
PICSYのカンパニーは評価を分配するインターフェースにすぎない
影響
公正さの向上
貢献度が購買力に比例するため。
ただし、評価を低くすることはできるため、ある程度の搾取は可能なのではないか?natsuozawa.icon
利益が伝播するため。
利益が期待値より増えた場合、増えた分がリターンとして帰ってくる。ただ、これは利益が期待値より減った場合、財を提供した全ての人の収入が減ることを意味する。natsuozawa.icon
SECSYでは、リスクをストックホルダーに集中させることで契約関係にある全てのステークホルダーのリスクをゼロに近くしているnatsuozawa.icon PICSYでは、リスクを減らしたくても減らせなくなるnatsuozawa.icon 投資は自由であるべきnatsuozawa.iconと考える人にとっては地獄の世界natsuozawa.icon
生産性の向上
正当にリターンが配分されることにより、人的資源の最適配分が行われる。これにより生産性が向上すると鈴木健は主張する。 一方で、リスク回避志向の人はリスクが高い人と取引しなくなり、弱者が報われない世界になるのでは?natsuozawa.icon
毎回投資判断をすることの認知コストが高くなり、生産性が低下するのでは?natsuozawa.icon
ここはシミュレーション・社会実験が必要という結論
組織の仮想化
コミュニケーションダイナミクスの変容
残りの効果・影響については本で議論が行われている