『十七八より』
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秘する花を知ること。秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず
「ある事実というのは、勘付かせぬまま突然出すからおもしろい。だから、いつもそれを用意しておかなくてはなりません。それで心の平静を保つこともあるでしょう。私は弱く、花なるべからずとわかっていても、秘密をいくつも抱えて恬然としていることはできないのです。秘密をもちながら、それを明かしていかなければ不満な未熟者です。だから話すのです」
人生で一番好きな本。
群像新人文学賞。
出来るだけ、自分の言葉で語らないようにする、それが執拗に引き写しをしてきた男の正しい姿勢なのだと思います。
気付いたらn歳になる。
「姉」「姪」「少女」「彼女」と変化する。自分自身を三人称で書くことで、離れて見ることができる。
3周目を読んだ時。n周目を読んだ時。
28歳の乗代雄介が考えていること、感じていること。 時折、何を言っているのか分からないセンテンスやパラグラフから上がる軋り音の中に、ある種の捨ておけない才気が感じられたからである。
文学は、あるいは、小説という試みは、ついに掴むことのできない秘密を追い求めることばの運動であることを、この作品は教えてくれるのである。
運の悪さと、自分の迂闊さと、無粋さと、全部がこんがらかって起こったせいで、どうすることもできなかった。ゆき江ちゃんにも言えない。でも、平気でいてみせてやるの。けっこう堂に入ってない? 私、今、変? 変なのはいいとして、程度の問題」
私、今、変? 変なのはいいとして、程度の問題
自分が損なわれたと感じたときに、そのおとしまえをつけなければ気が済まない人たちがいます。些細なことでも、一言を言っておかなければ気が済まない人たち。ただの事実を、自分の弱さとか他人の欠点とか、虚しいものに変えてしまう人たち。そんな人たちと関わったとき、自分も同じなんだと気づかされて、本当にいやになるのです。それを人間らしいと呼ぶものでしょうか。 彼ならきっと、誰かに言うはずです。言わないはずがないんです。そういう人だから。自分のことにしか興味がないから。話す言葉がそのまま自分と思っているから。