ファストン端子
Fastonは、TE CONNECTIVITY SERVICES社の商標であるが、Fastonシリーズ互換の脱着端子が自動車やバイクの電気部品の配線に広く使われており、「ファストン端子」として総称される。JISでは「平形接続子」として定義されており、「平形端子」と呼ばれることも多い。
オーディオ機器では、スピーカーのユニットの端子に、ファストン端子が広く使われている。自作スピーカーでは、ユニットを交換して試聴・アップグレードすることがしばしば行われ、また、吸音材の調節にユニットを取り外す必要が生じるケースもしばしばであることから、着脱可能な端子が好まれる。
ファストン端子が選ばれるのは、ユニット裏のスペースとコストの観点からだろう。ユニットはバッフルとの間から空気が漏れないようにバッフルと密着させる必要があり、また、バッフル裏のスペースも広くないことから、スピーカーの外側の端子のような大きな端子を使うことは適さない。
ユニットを着脱しないケースでも、ハンダ付けが好まれないのは、大きなユニットを、エンクロージャを不安定な状態に置いたままハンダ付けするのが手間だからではないか。リード線経由で熱が伝わりボイスコイルとダンパーやコーンとの接着がはがれる恐れがあるという点を理由に挙げる人もいるが、いくらハンダ付けが苦手な私でも、そこまで加熱させることはなさそうなので、ほとんどリスクを感じない。実際には、ユニットをハンダ付けしている人が多いと思う。私は、ファストン端子の脱着に慣れておらず、ユニット側の端子が歪むほど力を入れて外すケースが少なくないので、ハンダ付けの方が、ユニットに優しいのではないかと思えるほどである。
ファストン端子は、いくつかのサイズがあるが、オーディオ機器に使われるのは以下の4種類のようである。特にスピーカーでは110型から205型までの3種類をよくみかける。
110型: 横幅 2.79mm(0.11インチ) JIS 規格
187型: 横幅 4.75mm(0.187インチ) JIS規格
205型: 横幅 5.21mm(0.205インチ) JIS規格外
250型(横幅 6.35mm, 0.25インチ) JIS規格、カーオーディオで普及しており、ホームセンターでも入手でき入手しやすい
(要調査: 幅だけでなく、厚みにもいくつかバリエーションがある。メス端子が厚過ぎる場合はペンチで調整可能)
205型はJIS規格外なので、入手しにくいが、海外のスピーカーで広く使われていて、国内でも大手のFostexが採用している。メスは高額少量のものをなんとか入手可能だが、オス端子の国産品を個人が通販で入手するのは難しい状況である。通販サイトで扱っているのは、私が調べた範囲では、DIgiKeyだけ。しかも、オス端子は対応ケーブルサイズのちょうどよいものを探したらカットテープ(リールから切断された断片)しかなかったので、私は、ごっついニッパーを使って切断する必要があった。
HOZANのエンドニッパー(N-33)のような特殊なニッパーがあると、切断しやすいらしい。
なお、私がオス端子を必要としたのは、以下の事情から。
完成品のエンクロージャの内部配線に手を付けずに、元の端子とは異なる規格の端子に対応しようとすると、端子変換ケーブルを自作することになるかと思うが、その際にオス端子が必要。
代替案として、内部配線をまるごと外して、交換するのも手かも知れないが、スピーカーケーブル、安くない(安いものをストックとして持つ意義が感じられない)ので、私としては、できれば、ユニットをとっかえひっかえするような実験箱では、なるべくけちりたい。あと、元のケーブルを紛失するに違いない。ケーブルを良いものに交換してからヤフオクに出品している方が多いのは、そういう事情からかも知れないが。
なお、新規にスピーカーを自作する場合は、250型のファストン端子を変換ケーブルとの接続コネクタに使えば良いと思っている。250型の端子は、比較的安価で、250型のメスであればホームセンター(や、私は未確認だがカー用品店)でも手に入るなど、入手性が良いため。端子ハウジングを使えば、着脱が簡単だ。汎用のものだと、オーディオマニアに好まれる金メッキのものはまず見つからないと思うが、私は、金メッキに見た目の違い以上の効果があると思えないので、汎用で安価なものを選ぶようにしている。
着脱方法
接続する: 差し込むだけである。緩くても意外と大丈夫である(私は不安だが)
取り外す: 抜く方向に力を入れながら、左右に揺らし、ひっかかっている箇所を外して、そして、抜く。ひっかかりをとりやすい方向に力をかける必要がある。ペンチで根元を掴んで左右にぐらぐらと揺らしながら抜くこともある。端子によっては嵌合部の穴をキリの先端などで押してやる必要があるかも。