多元的無知
「集団の多くの成員が、自らは集団規範を受け入れていないにもかかわらず、他の成員のほとんどがその規範を受け入れていると信じている状況」(神, 2009) 大勢の他者が周囲にいる場合、実はまったく同じ事を周辺の人々も考えている可能性がある
誰もが他者の行動を参照していた場合そこでは奇妙なことが起こる
評価懸念がつきまとうような状況においては、他者の行動を指針するといっても、露骨に他者の行動を参照する者はいないから その場の状況を適切に把握できていない人同士が互いを参照し合うこととなり、結局、誰も状況の緊急性を正しく評価できないといった事態が生じる
あるいは他者の平然とした様子を見て特別な状況ではないと確証し合うこととなる
関連する現象
南部の人々の多くは、自分自身は名誉を守るための暴力を受け入れていないにもかかわらず、他の南部人のほとんどがそれを受け入れていると信じており、こうした多元的無知の状態で、南部において名誉の文化が維持されていると考えられる。
第二次世界大戦中に、戦争に異論を唱えようものなら、非国民と呼ばれ、言いたいことが言えなくなったのも、もとをただせば、一人ひとりの些細な心理が生み出したものといえるだろう。