名誉の文化
culture of honor
アメリカ南部での殺人率が他の地域の3倍に上ることを説明するために考案された概念
自らの強さ、男らしさについての評判が脅かされることに南部の男性が強い危機意識を持っていることと、侮辱に対して暴力で応じるといった慣習が多いことを含意している
ニスベットとコーエンによれば、このような文化が出来上がったのは、かつて南部に入植してきた人々が牧畜を生業としていたことに遡るという(Nisbett & Cohen, 1996)
牧畜社会は、農耕社会に比べ、生活の糧である家畜を容易に盗まれる可能性が高い
しかも、入植当初の法による統治が確立していない生活環境では、自衛のために「相手になめられないこと」が死活問題であった
それゆえ、強い男性を印象づけるため、侮辱に対して暴力で応じるという慣習ができあがり、もはや牧畜社会ではない現代に置いても、その文化が受け継がれているという
ニスベットとコーエンは、社会心理学的な実験のほか、様々な統計資料を駆使して、この仮説を検証している
多元的無知
南部の人々の多くは、自分自身は名誉を守るための暴力を受け入れていないにもかかわらず、他の南部人のほとんどがそれを受け入れていると信じており、こうした多元的無知の状態で、南部において名誉の文化が維持されていると考えられる。