ホモ・ガウテンゲンシス
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新種の根拠となったのは、南アフリカ共和国、ハウテン州のスタークフォンテン洞窟で発見された200万~80万年前の頭蓋骨の破片、アゴ、歯、その他の骨の化石である。 出土した6体分の化石から、ホモ・ガウテンゲンシスは直立歩行し、身長1メートル、体重50キロというずんぐりした体型だったと推定される。現生人類と比べると身長の割に腕が長く、チンパンジーのように顔が前方に突き出て歯も大きい。脳は大きくないが、言語コミュニケーションが可能だったと思われる。「話していた言葉はかなり原始的で、複雑な音や文法は持ち得なかっただろう」とクルノー氏は語る。 さらに、ホモ・ガウテンゲンシスよりも約30万年古い人類の化石がアフリカ東部で発見されており、まだ分類されていないという。「正直なところ、人類の進化系統において現生人類の直接の祖先に当たる種がどれなのか、まだ解明されていないのだ」。
現生人類の直接の系統には含まれないとしても、ホモ・ガウテンゲンシスには人間らしい特徴がある。クルノー氏は、ホモ・ガウテンゲンシスの特徴には40個ほど、より類人猿に近い「猿人」(初期の人類の総称)との相違点が見られることを確認した。猿人に比べてかなり小さい顔、細い歯、小さい咀嚼筋(そしゃくきん)とアゴなどだ。 クルノー氏をはじめとする研究者は過去数十年間、今回ホモ・ガウテンゲンシスと命名された化石をホモ・ハビリス(“器用な人”の意)に分類していた。200万~150万年前に登場したとされるホモ・ハビリスは、最も初期のヒト属だと広く見なされている。 「南アフリカで発見された今回の化石は、14年間の研究を経て、新種と認定すべき十分な証拠があることがわかった。この化石の主はホモ・ハビリスとは別のさらに古い種だ」とクルノー氏は言う。 たとえば、ホモ・ガウテンゲンシスは脳が小さく、現生人類の3分の1程度しかない。ホモ・ハビリスよりも歯やアゴが小さいことから、食事や生活様式も異なっていたと考えられる。
ホモ・ガウテンゲンシスの化石とともに、簡単な石器や火を使っていた証拠も見つかっている。関連する堆積層から出土した完全に近い頭蓋骨は「Stw 53」と名付けられ、1970年代半ばに広く研究された。
「石器は肉をはいだり、骨を切り開いて骨髄を取り出したり、植物を掘り出して調理したりするのに使われていたようだ。動物の皮の処理に使われた可能性もある」とクルノー氏は話す。Stw 53の頭蓋骨には切られた跡もあった。「儀式的な埋葬や人食いのために肉をはぐような習慣があったと推測できる」。 同じ洞窟では、猿人であるパラントロプス属の燃やされた骨も見つかっており、「ホモ・ガウテンゲンシスがヒト族を食べていたことは確かだ」とクルノー氏は指摘する。 だが、ホモ・ガウテンゲンシスは完全な肉食だったわけではない。植物を咀嚼するために発達したと見られる歯も持っていた。