『「利他」とは何か』
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2021/3/17
手に取った動機
それが故に、利他主義に懐疑的な面がある
そのため、利他について語られた本を読むことで見識を広げられるかもしれないと思った
また、2020~2021ぐらいにケアの分野が流行ったっぽいのでその辺の流れも知っておきたいと思った
感想
かなり面白い
1章1章の文量は30~50ページと多くはないが、だからこそ(?)密度が大きい
各章ごとに着目する観点が全く違っている
「利他」という概念の広さに驚く
あとがきで書かれていたが、「利他とはうつわである」とすると全体を整理できる
利他の概念の周囲には、神秘的なものや運命などの概念が存在する
論理とか意思とかとは真逆の考え方がある
スピっぽいが、それを受け入れる
mrsekut.iconは前提として意思や論理を信じすぎているのだろう
この本ではもっと、人智を超えた力のようなものが前提されている
現時点でも共感する部分もあるので馬鹿にできない。広がりを感じる
中でも、伊藤亜紗が感覚的に最も近いと感じたので別の著作も読んでみたい
考え方が違いすぎるので、一読しただけでは吸収できない
しかし、考え方の面白さは感じる
この本の意味での「利他」の実践を意識的にやるのは簡単なものではないと思う
(本の主張としては「意識的」ではないかもしれない)
誰にでも内在するものなのか、訓練の結果得られる能力なのかは読んでもわからなかったmrsekut.icon
任意の他者に対して向けられるものでもないし、特別な相手1人に対しても実践するのも難しい
ここに「利他」の深みがありそう
はじめに
コロナと利他
伊藤亜紗
第1章:「うつわ」的利他――ケアの現場から
伊藤亜紗
数値に着目する利他主義の例
世界が複雑になりすぎて共感では機能しないので理性が必要
機械的に寄付などを行う
数値にこだわりすぎると、数値化しやすいものが優先されてしまう
e.g. 寄付
数値化することで、利他から離れる
他者をコントロールしようとすることが利他の最大の敵
これは、障害がある人や、認知症になっている人に対してもそう
不確実性を許容し、他者を信頼する
自分の行為の結果はコントロールできない
見返りを期待しない
利他の本質は、他者のケア
こちらには見えていない部分がこの人にはあるんだ、という意味でのケア
善意の押しつけではなく、他者を受け入れるための余白を持つ
割と考え方のベクトルとして近い気がするmrsekut.icon
あと、普通に読みやすい
第2章: 利他はどこからやってくるのか
中島岳志
pity(哀れみ)に駆動して利他的な行為をすると、その対象に対して支配的な立場が生まれる
故に、行為者も淋しい気持ちになる
compasion(慈愛)に基づく贈与は可能か
交換は利己的と言える
ポトラッチは、驚かれるような贈り物をし、敬意を得るという交換と捉えられる 思わず、利他的な行動をする
その瞬間には、返礼を期待する感覚はない
理性ではなくもっと自然的な、人知を超えた、オートマティカルな力によって動いている
その結果として、間接互恵的に何かが返ってくる
本質的にスピっぽいものが内在するmrsekut.icon
これが本当の利他?mrsekut.icon
利他は自分たちの中にあるものではなく、常に不確かな未来によって規定される
第3章: 美と奉仕と利他
若松英輔
「利」と「他」の意味
自と他の存在はそのままでありながら、「二」の壁を超えられないか
工藝の美とは、奉仕の美である
ここでの「奉仕」の対象は(神仏のような)超越的存在
真に奉仕するものは、見返りを求めない
物から見た利他
柳は、民藝も料理も書物も同じように、人に用いられることで美が深まると言っている
「人に使われることで美しくなる」という感覚あんまりないなmrsekut.icon
利他は行うのではなく、生まれる
15秒プラス60年と見たらどうか。(中略) こうなると、この仕事は自分の考えより、手が学んでいたさばきに委したに過ぎない。
無為の状態においての利他
利他を論理的にではなく、感覚的に認識する
ここでの利他の実践は、かなり自分とその特定の他者の間のかけがえのなさのようなものが必要なように感じるmrsekut.icon
第4章: 中動態から考える利他 責任と帰責性
國分功一郎
近代には、「能動的な主体としての個人」という概念が存在した
意思とは、すなわち過去との切断である
自らの意思によって、可能態を切断して未来を作る
人の行動の原因(責任)を辿っていくと、どこまでも連鎖する これを意思とみなすことで連鎖を断ち切って責任を固定している
意思を否定し、責任を肯定する
被害者の面と、加害者の面がある
責任は中動態
自らで、自らを加害者だと感じる
帰責性は、詰みの帰属先を確定すること
一般的に使われている「責任」
第5章: 作家、作品に先行する、小説の歴史
磯崎憲一郎
展開が夢みたいな感じmrsekut.icon
どのへんが利他の話なのかわからないまま終わったmrsekut.icon
何の話をしてるんだ
作品は小説のうつわ?
おわりに 利他が宿る構造
中島岳志