賃金水準は、社会の平均的な生産性で決まる
賃金水準は、絶対的な生産性で決まるんじゃない。その社会の平均的な生産性で決まるんだ
平均労働生産性で決まるのは、社会のベースラインとなる所得/給与水準だ。それだけですべてが決まるわけじゃない。その次に社会の中での需給水準に基づいて、それぞれの仕事の所得/給与水準が決まってくる。そしてその仕事の中では、生産性に応じて所得水準が決まる。もちろん、これが完全にあてはまらない場合もある。
同じ職種、同じ仕事の中で見たら、生産性の高いほう――単位時間でこなせる量の多いほう――が高い賃金を得る
あなたたちの給料が高い理由の大半は、あなた自身の優秀性なんかとは何の関係もない。店員の手際が悪くたって、せいぜいが倍ほど悪い程度のもんだろう。
あなたの給料が高いのは、社会全体の平均的な生産性が圧倒的に日本のほうが高いからだ。そしてそれを引き上げているのは何だろう。床屋でも官僚でも管理職でもプログラマでもない。トヨタが、松下が、帝人が、すさまじい大量生産によってすさまじい生産性を実現しているからだ。
よりベーシックな質問: なぜ平均的な生産性が高いと、利益を得ることができるのですか?
こういうところの工場労働者たちは、後進国に比べて一人あたり数十万倍以上の生産性を実現している。スリランカの労働者は、車(たとえばオートリキシャのボディだけでも)を作るのに一週間以上かかる。だって手で板金を曲げて、パイプを溶接して、屋根つけて、塗装して……というのをやるんだもん。日本では、たぶん、平均で見ると工場の労働者一人あたり二、三分に一台くらいで車が生産できる。ほとんどすべてオートメーションの工場だもんね。
そしてその生産性の差が他のところに波及する。そうした高い生産性の人々は高い給与/所得を実現する。その人々は、たとえば食堂で高いお金を払っても平気だ。そしてそういう人々の保険や、法律相談や、床屋や、その他ありとあらゆるサービスは、その高い生産性の人々の水準にあわせて調整されることになる。高い労働生産性を持つ工業セクターの人々が買う野菜の価格は、それに応じて高くなる。生産性が途上国の 100 倍の人たちは、床屋に途上国の 10 倍払っても平気だ。靴も服も食事も、その他各種サービスもまったく同じ。