為替リスク
日本の対GDP輸入比率は案外大きくない。資産をインフレヘッジのために大きく外貨シフトするのは過剰反応だ。 現在の日本(青)も含めて多くの国では、輸出額と輸入額はほぼ均衡していて、差し引きの純輸出額はほぼ相殺されてゼロ付近で推移しているケースが多いように見えます
2018年のデータ
為替リスクについては「プラスに働く時と、マイナスに働く時があっても、長期的には損得ゼロだろう」とある種の理屈の下に考えて、また同業者が同じポジションであることの影響もあって、外貨建て資産の為替リスクはノーヘッジでいいと「割り切って」投資しているのが多くの基金の現状だ。
為替レートの予想は率直に言って難しい。特に経済予測から為替レートを予想しようとするアプローチは、一見もっともらしく見えるのだが、なかなか当たりにくい(理由について、今回は省略する)。
それでも、為替レートを決定する要因については、経験的、理論的にある程度コンセンサスが出来つつある。...
(1)長期的には購買力平価(物価変動を相殺する為替レート形成)が成立する。 自国通貨のインフレは自国通貨の為替レートを弱く(安く)する要因になる。
(2)1、2年程度の短・中期では物価要因(=購買力平価)よりも、内外の実質金利が影響する。
実質金利が相対的に上昇する国の通貨は強くなる
金利は長短両方の金利が影響する理屈だが、経験的には「2年物」くらいの金利でグラフを描くと収まりがいいことが多い。
(3)長期的にも、物価の影響を考慮した金利収益が均衡するような力が働くと考えられていて、為替リスクはヘッジ(引用者注:為替ヘッジ)してもしなくても長期的なリターンに大きな差はないと考えられている。 S&P500 インデックスのリスクが仮に 20% (実際はこんなに高くありません)
ドル円の為替リスクが 10%
とします。
さて、S&P500 インデックスとドル円の変動の間に相関がないとした場合、日本円で S&P500 のような(内部では)ドル建ての商品に投資する場合、日本円で考えた場合のトータルのリスクはどうようになるでしょうか?
この場合は、10% + 20% = 30% になるのではなく、22.4% になります。
δ^2 = 0.2^2 + 0.1^2 + 2 * 0 * 0.2 * 0.1 = 0.05
δ = sqrt(0.05) = 0.224 (= 22.4%)
つまり為替リスクの貢献度は 2.4% ほどです。為替リスクが 10%だからといって、そのまま 10% リスクが増えるわけではありません。そのため(内部で)ドル建ての商品に投資するときに、必要以上に為替リスクを恐れる必要はありません。