新疆綿
これに抗議した中国メディアは、新疆綿の不使用を表明したスウェーデンのファストファッション大手H&Mに続き、米スポーツ用品大手ナイキや独スポーツ用品大手アディダス、日本のユニクロなどの外国ブランド商品について、不買運動を呼び掛けている。
メディアとは?
こうした西側企業の動きを受けて、中国の共産党中央機関紙人民日報傘下のタブロイド紙「環球時報」などは3月25日、BCIに参与する多くの国際アパレルブランドの不買運動を1面で呼びかけた。この呼びかけに応じる形で、中国のいわゆる愛国主義情緒がネット上で爆発。ネットでは、「我々の新疆棉を排斥するというなら、これらを廃棄せねばならない」と語りながらH&Mの衣類をはさみで切り裂く男性の動画や、ナイキの靴を蹴飛ばしたり燃やしたりする動画、成都のショッピングモールからH&MやZARAの看板が撤去される様子の動画などが次々とアップされた。 アリババ傘下のECサイト「淘宝」からは、H&M商品が消え、位置検索サイトでH&Mの店舗が検索できなくなるなどの制限もかけられた。黄軒、王一博、楊幂、易烊千璽、陳奕迅、周冬雨、許光漢、彭于晏ら中国、香港の台湾の芸能人たちも、こうした国際アパレルブランドとのイメージキャラクター契約破棄を次々に宣言した。香港や台湾の芸能人たちは、中国市場を選ぶかどうかを、こういう形で踏み絵を踏まされた格好だ。
こうした動きの中で、あえて新疆コットン購入継続を表明するメーカーも出てきた。「アシックス」「無印良品」「ヒューゴ・ボス」「FILA」の中国法人は、相次いで新疆コットンの購入継続を微博などで表明した。
中でもASICS中国が中国最大手SNS微博の公式アカウントで3月25日に出した声明は、中国支持を明確にしていた。新疆コットン購入継続の表明だけでなく、「アシックスは終始、一つの中国原則を堅持する。また国家主権の領土の完全性を守ることを固く決意する。アシックスは中国の行動に対する一切の中傷やデマへの断固反対を決意する」という表現で、台湾を中国の不可分の領土とする「一つの中国原則」や、尖閣諸島を中国の領土とする中国の立場まで支持する政治的に踏み込んだ発言を行った。またウイグル人のジェノサイド、人権侵害、強制労働が米国によるデマであるという中国政府の言い分を支持する立場も表明した。中国の愛国ネットユーザーたちはもちろん大喜びで、アシックスは勇気がある、と称賛した。 ハフィントンポスト日本版が3月26日の段階でアシックス本社の広報に問い合わせたところでは、この投稿は本社の承認を受けたものであり、撤回の予定はない、とのことだったという。
3月29日にオーストラリアメディア「ABC」がアシックス本社(神戸)広報から得た説明として、アシックス中国の微博投稿は本社の許可を経て発信したものでもなく、現地法人の中国人従業員が勝手に投稿したのであり、アシックスの立場を代表するものではない、とのことだったと報じた。
3月29日に、問題の微博の声明は削除された。
とするとハフィントンポストの取材に対し、広報担当者はウソを言ったということになる。一応、その後ハフィントンポスト側には、広報担当者の認識が間違っていた、と説明をしたようだが、だとすれば、このセンシティブな問題について、なんと脇の甘いメディア対応であることか、と驚くのみである。