山内溥
「他社の類似品は出すな」「面白いと思うものをつくれ」任天堂・山内溥社長の経営哲学|人間力・仕事力を高めるWEB chichi|致知出版社
『致知』1989年11月号の特集 「想いを込める」より一部抜粋
最初から自信があったり、採算があったりしたわけやなくて、じっとしていたら沈んでしまうからもがいた結果が、今日の任天堂をつくったということですな。つまり、成功は目的じゃなくて結果だということだよ。
一番金がかからなくて、一番簡単に、一番手っ取り早くやれるものは何があるかを探したら、やはり娯楽商品しかなかったということや。
プラスチックとか、金属とか、モーターなどを使って作るオモチャだと、どうしても任天堂より専業の玩具メーカーのほうがうまい。それだけの歴史もあるし、実績もあるわけや。
アイデアだけじゃなく、技術力で勝負しなければ勝てないと思った。それが、エレクトロニクス・トイに進出するそもそものきっかけですね。
オモチャ業界でよそと違うことをしようと思うと、そこしか残っていなかったということや。
成功は再現可能性が低い
世間では、私たちが時代の変化を予測していたようにいうが、決してそうじゃない。苦しい時代が長く続き、そうしたときにマイコン革命が始まった。で、嫌でもその道を行くしかなかったということですな。
任天堂の場合は、現実に何かしなければ会社がなくなってしまう、という危機意識が非常に強かったということですな。つまり、変身する以外に生き延びる道が見つからなかったのです
花札とトランプから離れていったのは、こうした伝統的な遊びの人気が落ちたからで、時代が変化したからです。そのためやむを得ず転換を図った。それだけのことでしかない。
はっきり言えることは、われわれ娯楽業界というところは、商品が売れるかどうかという前に、人々が遊んでおもしろいと思うものをつくることです。それが任天堂ビジネスだよ。
商品が売れるか売れないかは、正直いって誰もわからんよ。しかし、おもしろいか、おもしろくないかは誰にでもわかる。おもしろいものをつくれば会議で検討したり、市場調査をしたりする必要もないわけや。
事実、ゲームソフトで370万本売って超ベストセラーになった「スーパーマリオブラザーズ」など、100人中90人までがおもしろいと評価していたよ。
結果の調査はしているということ
実際のユーザの意見をもらえるβテストは重要だと基素.iconは考えているが、ここでいう市場調査はどういうものなのだろうか?
βテストは、おもしろいかどうかを試すには必要なんだから、やるだろう
面白いものは売れるだろうからこれが市場調査に感じるのだけど、ここでいう市場調査はもっとマクロな視点なのだろうな
娯楽は他と違うからこそ価値がある
今の娯楽ビジネスは私一代で十分だと思っているから、好きにやらせてもらっている。次の社長は今の路線を引き継ぐ必要などないな。次の社長の個性で会社を経営すればいい。その結果、会社が傾き、株が紙くず同然になってもいいと思っているんや。
「失意泰然 得意冷然」という言葉は、幼いころ私と生別した父が46年に死んだとき、その奥さんが、父の形見の角帯と一緒に「これがお父さんの好きな言葉」と送ってきてくれたんや。それ以来、これといった座右の銘はないけど、この言葉は自分にとっては理想的な心がけだと思っている。
https://www.youtube.com/watch?v=1sWj6AMNQWE
32bit CD-ROMの発売(廉価・大容量メディア)によって開発費が高騰し、利益が出なくなるのでもう限界という指摘
歴史を見ると、開発費高騰はその後も続いたので正しい
AAAタイトルのゲームの開発費
もう限界というのは外れている