人質司法
逮捕後に否認すると、長期間にわたって身柄拘束されるシステム
解放して欲しければ有罪だと認めなさいと言っているに等しい
非拘束者は数ヶ月〜数年も拘束され、人生がめちゃくちゃになる
法務省「日本の刑事司法制度は,身柄拘束によって自白を強要するものとはなっておらず,「人質司法」との批判は当たりません。...日本の刑事訴訟法の下では,被疑者の勾留は,捜査機関から独立した裁判官による審査が求められており,具体的な犯罪の嫌疑を前提に,証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合等に限って,認められます。]」
高野隆『人質司法』
日本の「人質司法」: 保釈の否定、自白の強要、不十分な弁護士アクセス | HRW
税理士の中村氏は、2016年10月に詐欺の容疑で警察に逮捕されたとき、膵臓がんを患っていた。
裁判所は、がんの転移という医学的根拠に基づく弁護士の保釈申請を、7回却下した。中村氏は2017年3月にようやく保釈された。第一審と控訴審では有罪が宣告された。氏は2019年5月、上告審の判決を聞くことなく息を引き取った。家族は、長期の拘禁と拘置所側が適切な医療を提供しなかったことが、氏の死を早めたと主張している。
A・トモ氏は2017年8月、生後1ヵ月半の息子を揺さぶり、脳に損傷を与えて死亡させたとして傷害致死の容疑で逮捕された。...氏を逮捕するまでの約10ヵ月間にわたって、A・トモ氏夫妻の取調べを行った。氏は起訴前後合わせて約9ヵ月間の勾留で、検察官から、あなたか妻のどちらかが赤ん坊を殺したに違いないのだから、あなたが自白しなければ妻を起訴することになると告げられた。氏は自白を拒否したが、地裁は2018年11月に無罪判決を下し、2020年3月の控訴審判決も地裁判決を支持した。
多くの元被拘禁者や刑事弁護人がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによると、保釈申請の却下は、被拘禁者に自白を迫る目的で、また一種の報復として用いられている。
ミュージシャンの土井佑輔氏は、コンビニエンスストアで1万円を盗んだ容疑で逮捕され、保釈が認められず10ヵ月間勾留された。保釈申請は9回却下された。最終的には無罪となったが、逮捕前にレコード会社と交わしていたアルバム制作の契約は解除され、経済的にもキャリア面でも損失を被った。
弁護士で法学研究者(元早稲田大学大学院法務研究科教授)でもある高野隆氏は、被疑者は「真実を話せば」釈放されると言われるが、それは実際には「本当でも嘘でも自白しろ」という意味だと指摘する
日本では、裁判所が「接見等禁止命令」を出すことができる。これもまた、被拘禁者に自白を促す圧力となっている。
2014年、国連の規約人権委員会は、日本政府に対し、起訴前期間について保釈などの勾留の代替手段を提供することや、取調べ時に弁護士が立会う権利を提供するよう勧告した。
政府の回答は、委員会が指摘した根本的な問題に対処するものではなかった。
容疑を認めなければ延々拘束…これって事実上の「処罰」では? 経験者たちが「人質司法は違憲」と国を提訴:東京新聞デジタル
原告は、強制わいせつ容疑で昨年に逮捕され、無罪判決が確定した看護師浅沼智也さん(35)ら。いずれも容疑や起訴内容を否認し、約6年3カ月にわたって現在も勾留されている人もいる。
高野隆がうつってる
「犯人とする証拠ない」約1年の勾留…窃盗未遂70代男性の無罪確定 検察「原審の判断覆すのは困難」 富山(チューリップテレビ) - Yahoo!ニュース
弁護側によりますと、男性は当初から無罪を主張していましたが、およそ1年間勾留されたということです。
角川歴彦 東京オリンピック贈賄罪裁判で無罪主張した件で長期交流された件に関する国家賠償訴訟
角川元会長 “長期間勾留”で国訴えた裁判始まる 国は争う姿勢 | NHK | 事件
出版大手KADOKAWAの角川歴彦元会長(81)は、東京大会のスポンサー選定に関して、組織委員会の元理事に賄賂を渡した罪に問われ、無罪を主張していて、およそ7か月間勾留された...
角川元会長は都内で会見を開き、「日本の司法制度は遅れている。裁判を通して国民に人質司法の問題を知ってほしい」と話しました。
https://youtu.be/Q0zrue6Sk4c?si=DsmwYdneCobIJlml
7ヶ月の拘束
国家賠償訴訟へ
意義のある裁判だろう基素.icon
https://www.itojuku.co.jp/jukucho_zakkan/articles/20240701.html
原告代理人伊藤真
他に平 裕介もいる https://x.com/YusukeTaira/status/1829735385557319687
79歳という高齢の上、2年前には7時間に及ぶ心臓大動脈瘤の大手術をし心房粗細動という脳梗塞を生じうる持病を抱えていて十数錠の薬を飲まなければならない身であったにもかかわらず、収監時に薬が与えられることもなく、以後、非人道的な身体拘束が226日間も続きます。
収監中の角川氏は接見中に体調悪化のため気を失って椅子から崩れ落ちたり、強い心臓の動悸で苦しくなったりしたにもかかわらず、十分な治療は一切受けられませんでした。慶應義塾大学病院の主治医が「不整脈が起きており血栓のリスクが高まっている。生命の危機が高まっている」という所見を述べているにもかかわらず、被疑事実を否認していたため、数度に及ぶ保釈請求も認められなかったのです。第5次保釈請求がやっと認められて東京拘置所から出た際には、一人で歩くこともできないほど衰弱し車椅子を押されての生還でした。
「人質司法」とは、刑事手続で無罪を主張し、事実を否認又は黙秘した被疑者・被告人ほど容易に身体拘束が認められやすく、釈放されることが困難となる実務運用をいいます。
これまで日本では多くの検察官及び裁判官が、法律で身体拘束の要件として定められている「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」や「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法60条、89条)について、憲法や国際人権法に適合するように限定的に解釈せず、安易に身体拘束を認めてきました。
このような解釈・運用により、憲法及び国際人権法上保障されている「人身の自由」(憲法34条、自由権規約9条1項)が侵害されるのみならず、
「恣意的拘禁の禁止」(憲法34条、自由権規約9条1項)
「推定無罪の原則」(憲法31条・刑事訴訟法336条、自由権規約14条2項)
「比例原則」(憲法13条)
及び「身体不拘束原則」(憲法13条、33条、34条、自由権規約9条3項)
に反し、
「黙秘権(自己負罪拒否特権)」(憲法38条1項、自由権規約14条3項(g))
「防御権」(憲法37条2項・3項、憲法38条、自由権規約14条)
「公平な裁判所の裁判を受ける権利」(憲法37条1項、自由権規約14条1項)、)
といった憲法及び国際人権法上の権利が侵害される状況となっています。
この「人質司法」という病理は、単なる刑事訴訟法の解釈問題ではありません。人間の尊厳、そして自由と権利にかかわる憲法と国際人権法の問題であり、憲法と国際人権法に照らして、日本における現代の刑事司法の在り方そのものが問い直されなければならないのです。