ロシア国債のデフォルト
2022年6月27日、同年5月27日に利払いの期限を迎えた2本の外貨建てロシア国債の猶予期間が失効したことを受けて、ロシア政府はロシア革命(1917)(1918年)以来となる対外債務の不履行(デフォルト)に陥った。 他方で、対内債務は支払いが続き、デフォルトしていないため、ロシア政府は対外債務のデフォルト後も、国内向け国債を発行することができている。
今後利払いを迎えるロシア国債は投資家が利息を受け取れず、デフォルト(債務不履行)と認定される可能性がある ロシア国債を巡って米国人が25日まで利払いを受け取れる猶予措置をそのまま失効させるのが「合理的だ」と述べ、デフォルト(債務不履行)に追い込む考えを示唆した。
なんでこれでデフォルトになるの?
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国政府は米銀に対して、ロシア政府、政府機関との取引を禁じた。しかし、米国の投資家保護の観点などから、ドル建てロシア国債の元利払いを米銀が代行することは、3月2日の米財務省外国資産管理局(OFAC)の通達を通じて、例外措置として認めてきたのである。
ロシアがウクライナに侵攻して以降、同国はこれまでに7本の外貨建て債について支払いを実行し、デフォルトを回避してきた。
次回の国債の支払期限は27日だったが、米国政府の特例措置失効を見越して前倒しで支払いを行い、デフォルトを回避したのである。
しかし、今回の特例措置の失効により、ロシア政府が米国投資家に対してドル建てロシア国債の利払いを行う道は閉ざされる。万策は尽きるのである。
通常デフォルトは、主要格付機関がデフォルト格付けを行うことで確定するが、彼らは既にロシア関連の格付け業務を停止していることから、代わりにロシアの債券の保険商品であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を扱うデリバティブの業界団体である国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)のクレジット・デリバティブ決定委員会の判断が注目される。猶予期間の後に同委員会がCDSのデフォルトイベントを認定することが、正式なドル建てロシア国債のデフォルト認定として広く受け止められるだろう(コラム「今度こそロシア国債はデフォルトか」、2022年5月19日)。 ただし、ロシア政府は支払いの意思と能力があるにも関わらず、不当な米国政府の制裁措置によって支払いが阻まれたのであり、いわば不可抗力であってデフォルトには当たらないとの主張をその後も続けるだろう。
ロシアのデフォルトが確定しても、ロシア国債の規模が大きくないことや、すでに投資家の間で損失計上などが進んでいることから、世界の金融市場への影響は限られるだろう。