ミッキーマウスと著作権
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1790年にアメリカで初めて著作権法が登場したとき、著作権の保護期間は14年と制定されており、著者が生存している場合に限り、さらに更新期間として14年を追加申請することができました。
1831年になると14年の著作権保護期間は28年になり、更新期間の14年を合わせると「最大42年」に変更されました。
1909年の著作権法では28年の保護期間に加えて、更新期間が28年の「最大56年」になり、徐々に著作権の保護期間が拡大されていきました。当時、作品に対して著作権の申請を行う人は少なかったため、これらの法改正は著作権を主張していたごく少数の人たちのために行われたと考えられます。
1909年の著作権法に従うと、合計56年間の著作権の保護期間は1984年で失効
ミッキーマウスの著作権の失効が差し迫ったディズニーは、著作権法の変更を求める本格的なロビー活動を行ったと言われています。
1976年にアメリカ議会が著作権保護制度の大幅な見直しを決定し、ディズニーを拡張保護対象として認定。「作品発表から56年間」の代わりに、ヨーロッパ基準である「著者の死後50年間」が適用
企業作品であれば遡及する
すでに公開されている作品の著作権の最大保護期間は75年になったので、1928+75=2003年まで延命
また、1922年より以前に発表された著作物は全て保護が消滅してパブリックドメインとなり、1922年以降の著作物は著作権保護の手続きをしなくても自動的に著作権法のもとで保護されるようになったのです。
1998年 著作権延命法制定
著作権の保護期間は原則として「著者の死後70年」となり、法人著者の場合は「発行後95年間」または「制作後120年間」のどちらか短い方と適用されました
1928+95=2023まで延命
修正第一条の違憲訴訟が出たが合憲判決が出た(後述)
国の保護期間の計算は(比較的)単純で、古い作品の保護は発行後95年で消滅する。ミッキーマウスのデビュー作は一般に1928年の『蒸気船ウィリー』と言われているので、95年後の2023年末という訳だ。
最近のデザインのミッキーなどは(法的には二次的著作物とみなすので)それ自体はまだまだ切れない 予備知識
前回ミッキーの著作権が切れそうになった時には米国政府は20年間の延長法を通し、「ミッキーマウス保護法」だと揶揄されて違憲訴訟にまで発展した
2003年1月15日に7 v.s. 2で合憲判決が出ている
<争点> ①既存の著作物の保護期間を延長する連邦法は議会に付与された権限を越えた立法か、②将来と既存の著作物の双方に適用される保護期間延長は修正第1条違反か。 この解説には最高裁判事の反対コメントなども纏まっている
ミッキーの日本での保護期間はまともに論じられていない
この点に触れた文献や記事は驚くほど少なく、きちんと論じたものはほぼないと言ってよい
日本の法律だとどのようにミッキーを扱うかによって最大63年の誤差が出る
最もシンプルな形に削ぎ落としても次の点を考慮する必要がある(もっと複雑にすることもできる)
(1)かつて、著作権の保護は団体名義なら公表から33年、個人名義なら死後38年だった(旧著作権法)
(2)1970年、現行著作権法が施行されて映画と団体名義作品の保護期間は公表から50年、個人名義の美術は著作者の死後50年などとなり、存続中の作品の保護期間が延びた(現行著作権法)
(3)2004年、映画の保護期間は公表から70年に延長され、存続中の作品の保護期間が延びた(2004年延長)
(4)いずれの場合も、映画は(1)の旧著作権法での保護の方が長い場合にはそちらが優先(現行法附則)
(5)2018年12月、映画以外の著作権の保護期間は一律20年延長され、存続中の作品の保護期間が延びた(2018年延長)
(6)以上すべて、平和条約上の義務によって、戦前の米国作品の場合は保護期間が10年5ヶ月プラスされる(戦時加算) 複雑すぎる保護期間は、知財立国を間違いなく害している
著作権法の趣旨(文化の発展)が阻害されているという主張