ブルーオーシャンは一見レッドオーシャンに見える
川上「競争するな」と言うと、「ブルーオーシャンを選べということですね」と反応されることが多いのですが、これは間違いです。ブルーオーシャンには絶対に行ってはいけない。ブルーオーシャンは「青くて美しい海」というイメージがありますが、「青くて美しい海」ということはプランクトン、つまりは事業を成長させるためのエサがないことを意味しています。
では、どうすればいいのかというと、先程言ったことと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、競争相手がいるところを選ぶんです。ただし、「強そうに見えて、ほんとうは弱い」プレイヤーを相手に選ぶことが重要です。強そうな相手とは、すでに一定の成功を収めているプレイヤー。そういったプレイヤーが生息している海には、当然エサがあるわけです。本当に強い相手とは競争しても負けてしまいますが、中には「強そうに見えて、本当は弱い」プレイヤーもいる。そういった相手を見つけることが重要なんです。 熾烈な競争を避け、最小のコストで勝てる相手との競争に挑めるマーケットを選ぶ。これがポイントだと考えています。
期間限定の弱さをつくってスピード勝負をする
勝てるいたちごっこ
これはゲームだ
川村 弟子入りされているジブリの話が先になってしまいましたが、そもそも川上さんは20代でドワンゴを立ち上げて、日本を代表するIT企業に成長させてきました。なかでも大ヒットとなったのは「着メロ」や「ニコニコ動画」(以下ニコ動)だと思うんですが、そういった独自のビジネスを思いついたきっかけは何だったんですか?
川上 着メロはマーケットが大きかったんですよ。ドワンゴはネットのゲーム開発から始まった会社で、当時『釣りバカ気分』という7万人規模のゲームサイトがあって、大手の一つだったんです。
川村 もともとは大手ゲームサイトの会社だったわけですね。
川上 そうです。一方、着メロ業界を見ると5位のサイトでも、100万人規模を超えていた。しかも当時はカラオケメーカーしか着メロサイトを作れないというのが、携帯電話会社の暗黙のルールでした。だから、着メロサイトを作る村に入ることだけ許可してもらえれば、隅っこの方で細々とやるだけでも幸せに暮らせるなと思って始めました。そもそも、志が低いんです(笑)。
川村 川上さんは戦いを始めるときに「戦う場所」から決めますよね。普通はみんな「戦い方」を一生懸命に考えるのに。釣りで言うなら、釣り場を選ぶセンスがずば抜けている。
川上 一番手が嫌いなんです。好物は二番手。世間では僕もドワンゴも一番手のパイオニアだと思われているのかもしれませんが、冒険とか大嫌いなんで。