アメリカの権力腐敗
2026-07-09 The Pain in Spain is Mainly in Trump's Brain
トランプが財務長官ベッセントに「スペインとの貿易を全部止めろ」と命令、ベッセントは「はい」と即答したという話から始まる。理由については「いちごを盗まれたから」というオチをつけてみせるが、これは冗談だと自ら種明かし。実際の命令自体は事実だという。
大統領には関税に関してかなり広い裁量権があるものの、単に相手国の態度が気に食わないという理由だけで貿易を止める権限までは無い。今回のような話は今のトランプ政権であっても、議会や最高裁がどれだけ及び腰でも通らないはずと断言。
そもそもスペインはEUの一員なので、これは欧州が「フロリダとの貿易を全部止める」と言い出すのと同じくらい馬鹿げた話。しかもスペインとの貿易は米国側が黒字を出している相手であり、実行されれば米国企業から悲鳴が上がるだけの話。
つまりこの一件自体は「起こりえない非現実的な出来事」でしかないが、それを現職大統領が真顔で口にしたという事実こそが重大。もはや経済政策やイデオロギーを云々するレベルの話ではない。
今の大統領を評して「サンダウナー(夕暮れ症候群)大統領」と呼び、これは正常に機能している政治システムなら超党派で「この人物は判断能力を欠いている(non compos mentis)」と認定され、世界の命運を非合理な人物の手に委ねてはならないという話になるはずの事態だと述べる。
ところが実際には誰もが彼を正気の人間であるかのように振る舞い続け、共和党やトランプ政権はむしろ個人崇拝(パーソナリティ・カルト)づくりに邁進している。
結論として、問題はトランプ個人よりもはるかに大きく、アメリカという国家・システムそのものに根本的な欠陥があり、こんな人物を権力の座に居座らせ続けていること自体がその証拠だとまとめる。
2026-06-29 Corruption for Make Benefit Glorious Family of Trump
ニューヨーク・タイムズの調査報道が、カザフスタンにおける巨大鉱業利権をトランプの息子たちと商務長官ルトニックの息子たちが共同で取得していたことを暴いた。これはトランプ政権下で続く腐敗案件の一つにすぎない。
トランプが政権復帰してからの約500日間で、本人および一族が得た利益は少なくとも40〜45億ドル、おそらく50億ドルを超える。これを500日で割ると、ほぼ毎日「ティーポット・ドーム・スキャンダル」並みの腐敗が起きている計算になる。
ティーポット・ドーム(ハーディング政権下の鉱業利権汚職)は当時の腐敗の代名詞だったが、賄賂総額はインフレ調整済みで現在の数百万ドル規模に過ぎず、今の規模とは桁が違う。しかもティーポット・ドームでは大統領一族への賄賂ではなかった——そこが「全く新しい次元」だ。
現在の富の集中はギルデッド・エイジ(金ぴか時代)のピーク時の3倍に達しており、「スーパー・ギルデッド・エイジ」と呼ぶべき状態。これを「ギルデッド・エイジへの回帰かも」と軽く構える人がいるが、実態はそんなものをはるかに超えている。
今回のカザフスタン案件は憲法の報酬条項(Emoluments Clause)にも、海外腐敗行為防止法(FCPA)にも明らかに違反しており、違法性は疑いようがない。トランプが在任中は起訴されないだろうが、政権奪還後に民主党がこれを徹底追及しないようなら、法の支配そのものが空洞化する。
腐敗問題は有権者に刺さるテーマだ。「権力者が私腹を肥やし、庶民がその代償を払わされている」という構図は、ハンガリーのオルバン政権が最終的に打倒された要因でもあった。アメリカでも同じことが起きうる。
今や似たようなスキャンダルが数週間おきに噴出している。それが「普通」に見え始めていること自体が問題で、これは歴史的に見て完全に異常な事態だと認識しなければならない。
2026-06-03 Trump Has Given Up
トランプは自ら仕掛けたイラン戦争の大失敗で完全に壊れた。もはや統治する気はゼロ、あるのは怒りと復讐心だけだ。
その象徴として、国家情報長官代行(DNI)にビル・プルティを任命した。法律上、DNIには「豊富な安全保障の専門知識」が必要と明記されているのに、プルティは住宅金融庁長官であり安全保障とは何の縁もない。
https://www.wsj.com/opinion/bill-pulte-dni-donald-trump-national-security-1a0114e6?eafs_enabled=false
「代行」というかたちをとるのは議会承認を回避するためだ。今やトランプの支持率は急落し、ジョン・コーニンを裏切ったことで共和党内でも抵抗が芽生えているからな。
米テキサス州連邦上院予備選の決選投票、トランプ大統領支持の共和党保守強硬派が勝利(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ
プルティという男の素性を見れば、もっとひどい話になる。PulteGroup(米国第3位の住宅建設会社)創業者の孫というネポベイビーで、2020年に同社取締役会から追い出され、一族の慈善財団からも「ビルは我々の代表ではない」と公式に否定されている。
実態は「Twitterでひたすら汚い政治投稿をばらまいた」ことがトランプに評価された人物。
住宅金融庁では権限を私物化・武器化し
連邦準備制度理事会の黒人女性理事リサ・クックを追い落とそうとでっち上げの詐欺告発をしたり
ニューヨーク州司法長官やジェローム・パウエル前FRB議長にも根拠なき不正告発を乱発した。
ただし戦績はゼロ。ヘタクソな刺客だ——それでもトランプには「悪事を厭わない意欲」さえあれば十分らしい。
DNIに就いてもまともな情報分析など期待できない。トランプはもはや「権力の維持・悪用」すらどうでもよくなっており、ただ自分に楯突いたと思う相手を罰したいだけ。プルティはその憤怒を満たす道具として使われる。
とはいえ、民主主義への脅威は消えていない
コーク兄弟が後ろ盾のフェデラリスト・ソサイエティは最高裁を握り、選挙制度の恒久的な共和党有利化を進めている。
プロジェクト2025の設計者たちは連邦政府を億万長者の私物にする計画を粛々と実行中だ。
研究資金の政治化で、何世代もかけて築いた科学界が壊滅しかけている。
アメリカで科学の破壊が進行中
トランプ本人は今やただの「腐った怒りの塊」にすぎない——だが彼の周囲で進む構造的破壊は着々と続いている。
2026-06-01 Learning from a Mentally Ill President
トランプが精神的に病んでいることはみんな知ってる。それ自体を嘆き続けるのも大事だが、問題はそんな人物を権力の座に就かせ、今も支え続けている「構造」の方だ、という話。
直接のきっかけは、トランプが250周年記念コンサートから多くのアーティストが降板したことに反応してTruth Socialに投稿した文章。「自分はエルビスより観客を集められる」「ギターなしで」「史上最高の大統領だという人もいる」——これを見てクルーグマンは「こいつを一人にしておけない、ましてや大国を任せられない」と率直に書いている。
誰も驚かないでしょ、という話でもある。ビリオネアたちも、2024年に免責判決を出した最高裁も、みんなこの男の正体を知りながら支持・後押しした。今さら彼らも足踏みしかけているかもしれないが、それでも庇い続けている。
具体例としてジェフ・ベゾスを挙げる。馬鹿じゃないはずなのに「第1期より成熟した」などという明らかな嘘をついてトランプに「正常性のお墨付き」を与えている。最高裁も一部はNOと言い始めているが、大勢としてはトランプに他のどの大統領にも認めなかった特別扱いを続けている。
なぜ彼ら(トランプ本人ではなく、彼を権力に置いている連中)がそうするのか?結局は金と権力だ。そしてそれが可能なのは、富が極端に少数の手に集中しているから——しかもその少数の多くが、反民主主義的で感受性に欠ける人間だったという話。
だから目標は二段構えだ。
①とりあえずトランプの牙を抜いて、次の2回の選挙で彼やその後継者に権力を握らせないようにする。
②それだけでは不十分で、アメリカ社会そのものの「大浄化(deMAGAfication)」が必要だ——第二次大戦後ドイツで行った「脱ナチ化(denazification)」という言葉に近い表現を使うのはやり過ぎではない、と書いている。
対象はMAGAのイデオロギーだけではない。これほどひどい事態を可能にした「巨大な権力・富の不平等という構造」全体を問い直す必要がある。
簡単ではないし、実現できないかもしれない。でも試みなければならない。なぜなら今起きていることは悪夢であり、進歩派が想像した最悪より、良心のある保守派が想像した最悪より、さらに悪い現実だから。
最後の一言:「この瞬間を白塗りにして忘れてはいけない。今の事態はアメリカの多くの力が向かっていた先であり、トランプを排除するだけで終わらせれば、また繰り返す」。