法の支配
19世紀後半から20世紀はじめにかけて活躍したイギリスの法学者、A.V.ダイシー(1835-1922)の提唱 19世紀後半におけるイギリス憲法を特徴づける「法の支配」の内容として、ダイシーは以下の三つの原則を示した。
第一に、恣意的権力の支配の否定、すなわち国民から隠された法ではなく、「正規の法regular law」の絶対的優位を意味する。
第二に、あらゆる人が法の前に平等であることを意味する。
とりわけ、行政機関といえども通常の裁判所において通常の法を適用され、フランスにおけるような、行政機関にのみ適用され、特別の裁判所によって適用される行政法(droit administratif)が存在しないことが強調される。
第三に、法の支配は、イギリス憲法の内容をなす諸規範が、通常の国法、すなわち議会制定法と裁判所の判例法とによって構成されていることを意味する。
とりわけ問題となるのは、ダイシーのいう法の支配のうちの第二の原則である。
ダイシーは、行政機関のみに適用される法および行政事件のみを処理する裁判所の存在は、行政権にとって有利な紛争の処理を意味すると考えたようであるが、フランスでの行政法および行政判例の発展の経緯をみれば分かる通り、行政裁判所の存在が直ちに人民の権利自由の縮減を意味するとの主張に、確実な根拠があるわけではない。
https://youtu.be/LzqjZmdkK-4?si=ecSFa_dUfAULJri1