アニマルスピリット
人は何かをするとき、数学的な計算で動くよりも、その場の勢いで動くことが多い。
結果が長期に及ぶ行動をするときには、アニマルスピリット――とにかく行動せずにはいられない気分――で動くしかないことが多い。
事業や企業は、自分たちが冷徹な計算に基づいて事業をしているふりをするけれど、そんなのウソ。南極探検にでかけるのとほとんど変わりない。アニマルスピリットが衰えて、威勢のいい楽観論が消えると、起業は沈滞する。
未来に続く希望で動く企業は、社会全体の利益になる。でも、最終的に損が出そうでもやってみようというアニマルスピリットが伴わないと、人はなかなか動かない。
これはつまり、好況不況の度合いは必要以上に大きくなるだけでなく、経済的な繁栄というのは、政治的・社会的な気分にやたらに左右されるということになる。政権交代やニューディール政策がビジネスを停滞させるのは、別にその内実のせいではなく、単にそれが世間の雰囲気を変えるからというだけかもしれない。投資の見込み収益を考えるときには、こんなことまで考慮する必要がある。 むろんだからといって、すべてが不合理な気分だけで動くわけじゃない。長期的な期待の状態はあまり変わらないし、ほかの要因がそれを補うことも多い。でも、未来を考えるときには厳密な計算だけじゃダメだ、不合理な心理で動くことも多いんだ、ということは忘れないこと。