気分
気分(mood)は「比較的持続的で,認知の背景にあるような弱い感情状態」 と定義され,「何となく楽しい」「うきうきする」など漠然と感じられて一定時 間持続し,必ずしも原因や対象が明らかではないとされる。 気分は,人の記憶再生に影響を与えるとされている。ポジティブな状態にあ る場合には楽しい出来事の記憶が思い出されやすい。これは,気分一致効果と よばれ,人がそのときの気分と同じ感情価をもつ情報の検索をするために起こ る。 しかし,ネガティブ気分ではニュートラルな気分状態よりポジティブ記憶 の想起が促進されることがあり,気分不一致効果とよばれる。この気分不一致 効果は,ネガティブ気分にポジティブ記憶を想起することにより,ネガティブ 気分を緩和し,感情制御を促進するとされている。
また,感情シグナル説はポ ジティブな気分は状況が安全であることのシグナルとして働くため,トップダ ウン型でスキーマに依存したヒューリスティックな処理方略が採用されるのに 対し,ネガティブな気分は安全でないことのシグナルとして働くため,状況の 変容が動機づけられ,システマティックな処理方略が採用される(Schwarz, 1990)。