あなたの知っている秘密は何ですか?
「まだ他の人は気づいていないけど、あなたが見つけ、信じている構造はなんですか?」 現状のシステムや市場のどこが破綻しているのか、あるいは人々のどこが間違っているのか、そうした「市場に確実にあるけれど、誰も気づいていない市場の歪み」を探さなければなりません。
その歪みの気付き方として、この映画ではデータに寄り添う人や、他人からその情報を聞いたり、現場を見て確信を持つ人などがいます。そして他人からシステムが破綻してると聞いたとしても、それを信じられるかどうか、どう行動するかは人によって違うのだなというのが描かれてていたのは印象的です。同じ情報を得られた人たちがたくさんいた中で、本当に市場が歪んでいる、と信じられた人たちがアウトローになり、巨万の富を得られるようになります。
特に良いと思うのは、別にそうした秘密は実際には隠されていた秘密ではなく、公開情報から導けるような、ある意味公然の秘密だった、けれどみんな気づかなかった、という構造が描かれているところです。(略)それはまさに発明ではなく「発見」と言えるものなのかなと。
その意味で、起業家側は「何が今まさに破綻していると思っているのですか?」「市場の何が歪んでいるのですか?」あるいは Peter Thiel や Chris Dixon 的に言えば「あなたの知っている秘密は何ですか?」という投資家からの問いに答えられるようになっていなきゃいけないのかもしれません。 Mark ZuckerbergにとってFacebookが良いアイデアに思えたのは、彼がプログラマーだったからというよりは、彼がずっとコンピュータを使っていたことが大きい。2004年に、生活をウェブ上に半ば公開したいかと40歳の人たちに尋ねたら、彼らはそのアイデアにぞっとしただろう。しかしMarkはすでにオンラインに生きていた。だから彼にとってそれは自然なアイデアに思えたのだ。
急速に変化する分野の最先端にいる人々は「未来に生きている」とPaul Buchheitは言った。Pirsigのものと合わせると次のようになる:
これは最大規模のスタートアップの多く、いやおそらくはほとんどがどのように始まったかを言い表している。Apple、Yahoo、Google、Facebook、どれも最初は会社になることすら想定してなかった。ある隔たりが世界に存在するように思えたために、創業者たちはそれらを作った。そしてそこから大きくなっていったのだ。
成功した創業者たちがアイデアを得た方法を見ると、準備されたマインドが、外からの刺激を受けた結果であることが通例だ。Bill GatesとPaul AllenはAltairのことを聞き、「僕らがBasicインタプリタを書けばいいんじゃないか」と思う。Drew HoustonはUSBを忘れたことに気づき、「ファイルがオンライン上にあるようにしなくちゃならない」と思う。多くの人々がAltairのことを聞いていたし、USBスティックを忘れた。それらの刺激が彼らに起業を促したのは、自身の経験によって、それらが示していた機会に気づく準備ができていたからだ。
スタートアップアイデアに関して使うべき動詞は「考え出す」ではなく、「気づく」だ。YCでは、創業者自身の経験から自然に生まれるアイデアのことを、「オーガニックな」スタートアップアイデアと呼んでいる。最も成功するスタートアップは、ほとんど例外なくこうした形で始まる。