モノの擬人化はなんの権利を侵害しうるか?
問
私が猫を飼っていたとしよう
誰かが私の猫をモデルに擬人化したキャラクターがひどい目にあう絵を描いたとする
それをなんらかの権利によって差し止め請求/損害賠償請求することはできるか?
現時点での自分の知識だと、できないように思う
できるという人がいたら判例/あるいは根拠法令を教えて欲しい
弁護士の監修記事があった
ギャロップレーサー事件の下級審(基素.icon注:最高裁は認めていない)が競走馬のパブリシティ権を認めた背景には、実在の競走馬に騎乗するというゲームシステムがあったと考えられ、そうすると、実際の競走馬とは全く異なる擬人化された“ウマ娘”を育てるわけですから、パブリシティ権(的なもの)の侵害からはより遠ざかるものと考えられます なお、Cygamesに対して、馬名を使う際に留意した点などを尋ねてみましたが、「回答は控える」とのことでした。
齋藤 真宏 弁護士 (ミカン法律事務所)
同事務所が栗東トレセンに近いこともあり、競馬業界関係の案件に注力している。
所有権の場合
実在する馬を利権者に無許可でキャラクター化して商品にするのは排他的支配権能を侵害している事になると思いますよ
競馬ゲームと違いウマ娘は「擬人化して人格を持たせる」という改変を行うので
「モノの有体物としての面に対する排他的支配権能」は認めている(所有権) 所有権の侵害になるという主張が上
これは成り立たないのではないか?
死んだ馬には所有権がない(所有権はモノが消滅すると消滅する)
https://pbs.twimg.com/media/EwhhBQfVcAc1NAq.jpg
生存している馬の場合
1. モノ(馬)を物理的に改変しているわけではないので、所有権を侵害していない
2. 擬人化を「著作物に対する改変」=二次的著作物と捉えても、それは成り立たない
そもそも、擬人化を二次的著作物とみなせるかどうかは極めて怪しい
下記リーディングケースで、最高裁は所有権と著作権を厳密に区別している
競馬ゲームが改変を行わないで馬を出せているのはむしろ問題ない(?)んだなぁ
類似点がはっきりするので何か元になっていることはむしろ主張しやすそう
でも著作物でもないし、肖像権もないのでなんの権利侵害になるかと考えると、何にもならなそう
Xは、中国古代の書道家が記した書画を所有していたところ、Yは、X宅に行った際、その書画をXに無断で写真撮影し、その写真を中国古典書画集として発売した。
Xは、Yに対し、書画集の差し止め及び損害賠償請求が可能か。
他人の所有物を無断で写真撮影することが所有権の侵害になるのか?
最高裁(最判昭和59年1月20日第二小法廷判決)
「美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではない」と、著作権と所有権の権能の相違を論じた上で、
「著作権が消滅しても、そのことにより、所有権者が、無体物としての面に対する排他的支配権能までも手中に収め、所有権の一内容として著作権と同様の保護を与えられることになると解することはできない」と述べ、「著作権の消滅後に第三者が有体物としての美術の著作物の原作品に対する排他的支配権能をおかすことなく原作品の著作物の面を利用したとしても、右行為は、原作品の所有権を侵害するものではない」と結論付けました。
著作権が消滅した後は、当該著作物は公有財産として、その著作物は誰でも利用できるようになることとも整合します。
さらには著作権者の保護と文化的所産の公正な利用との調和を図って文化の発展に寄与するという著作権法ないし著作権制度の目的にも適合的です。
ざっくりいうと「私の木を勝手にとって出版したな。出版社には差し止め請求。カメラマンには損害賠償請求。侵害された権利は所有権。」
原告の請求はどちらも棄却された
所有権は有体物をその客体とする権利であるから、本件かえでに対する所有権の内容は、有体物としての本件かえでを排他的に支配する権能にとどまるのであって、本件かえでを撮影した写真を複製したり、複製物を掲載した書籍を出版したりする排他的権能を包含するものではない。そして、第三者が本件かえでを撮影した写真を複製したり、複製物を掲載した書籍を出版、販売したとしても、有体物としての本件かえでを排他的に支配する権能を侵害したということはできない。
基素.icon 余談だが、この判決は温かみがある(付言)