因果と心
人間は他者とその動機づけについて抽象的な概念を形作る
チンパンジーは社会的概念の形成を、他者の観察可能な特徴に頼る。
動き、顔の表情、行動習慣以外の何かが相手にあることに気づいていない。
他者の中に内的経験が存在することを理解していない。 チンパンジーは、心の中に生じる 感情や直感を体験する。
社会的状況の求めや許容に応じる
感情や直感に基づく行動抑制など
だが
他者が何を考え・ 信じ・感じているのかを推論しない。
そもそもそうした概念を形成しない。
チンパンジーはおそらく内省しない。
おそらく自分の内的存在を見抜く力も同様と考えられる。
チンパンジーの認知力の研究者 ダニエル・ポヴィネリ
「チンパンジーは社会的概念を形作るにあたって、厳密に他者の観察可能な特徴に頼る。
彼らは動き、顔の表情、行動習慣以外の何かが相手にあることに気づいていない。
彼らは 他者の中に私的な、内的な体験が存在することを理解していない」と指摘した。
ヒトの系統の認知的出発点
「精神的自己認識」を示しているのは現代人だけ。
「社会的自己認識」についてさえ、
人間とヒト以外の霊長目とでは質的に大きく異なっている。
自分を取り巻く世界に巧みに応じ、学習していた、知的な思考する生き物だった。
けれども彼らは目に見えない物を推論することはなかった。
彼らは「心」が何たるかを知らず、「因果関係」は 理解できなかった。
人間的な感覚で言うなら、彼らにはまだ自己という発想はなかった。
これはヒトの系統の認知的出発点の特徴づけとしてはきわめて妥当である。
これまでにわかっている人間の祖先のどれがこの特徴付けにあてはまるのかということである。
おそらく、
初期のヒト科
アウストラロピテクス・アファレンシスにも広くあてはまる
もし本当に ディカ(とブーリ)の証拠が示すような石器作りを始めたのがアウストラロピテクス・アファレ シスやそれに近い種)であるなら、
ポヴィネリの見解と、最初の石器製作者が持っていたきわめて 高度な認知能力とを整合させなければならない。
なぜなら石器を作り、それを死体の解体に使った 初のヒト科が、
まったく斬新な方法で周囲の世界と触れ合っていた証拠を示していることは疑いよう もないからだ。
そしてその発明が内面に影響を与えなかったと信じる理由はない。
この明らかな食い 違いを説明する最も単純で妥当な方法は、石器を作るための認知上の潜在的可能性が、
それまでとは まったく異なる新しい二足歩行の体型を獲得することにかかわった遺伝子の大規模な変化によって生じたと考えることである。
そして、その潜在的可能性は、石器作りの発明として表に現れるまでのしばらくの間、休眠状態にあったと考えることだ。