公立ICT整備の商慣習
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「チャンピオン価格」って聞いたことありますか?
普通はないですよね。私が初めて聞いたのは、ロイロ エデュケーションという教育機関向けの動画編集ソフトの販売を開始した2010年ごろです。この業界に詳しい方にお聞きしたのが初めてだったと思います。
公立の教育ICT機器整備は、もともとパソコン教室整備の延長上にあります。日本は人口が減って教育費も減らされている中、市長の公約など特別な事情がない限り新しい予算は付きません。
市長案件の危険性は別に書くとして、パソコン教室はだいたい5年間でリプレースのための新しい予算が付きます。タブレットや電子黒板など新しい機器の導入もこの予算によって行われる例がほとんどです。 一般競争入札とは
大きな自治体を除いて、ほとんどが一般競争入札という方式で入札が行われ導入される機器が決まります。
一般競争入札はざっくりいうと、こんなものがほしいという仕様書が自治体から出て、それをいくらで売りますと業者が札入れをして、一番安い価格の業者が落札するという仕組みです。
何を買っても品質に差が出づらいコモディティ化した製品などでは、価格が一番安くなるため最適な方式と言われています。ただし、ICT機器など発展途上の物に関しては、安かろう悪かろうになりがちな問題もあります。
卸値に大きな価格差をつけることが商習慣になっている
ようやく冒頭の「チャンピオン価格」の出番です。
入札に入る導入業者はメーカーではなく、いろいろな機器をメーカーから仕入れて導入するいわいるSIerのような会社です。
入札では1円でも安く札入れする方が勝てますから、業者は他社より安く仕入れようとします。それと同時に利益を最大化するために自治体へ高く売れる商品を求めています。絶対的な安さではなく、他社より安くというところがミソです。
実際どんなことがされているかというと、機器メーカーと協定を結んで同じ入札に入る他社向けには自社より高い値段で卸してもらうように約束を取り付けます。
この手を組んだ入札業者に卸す最低値のこと「チャンピオン価格」と言っています。
機器メーカー側から見ると「チャンピオン価格」を持たせた業者を必ず勝たすことができます。要するにどこが落札するのかを機器メーカー側がコントロールすることができるんです。
今年はこっち、次回はこちらみたいなこともできますね。
これが既得権となり、導入業者が我先に大きな価格差をつけてくれるメーカーへ群がる構造が出来上がってしまっているのです。
一番初めに手を握ることができれば、落札間違いなしですから無理もないです。
この仕組みの大きな問題の1つは、高い価格でも価格差を出せばいいので、自治体の支払う価格が高止まりしてしまうんです。価格を最低にするために一般競争入札を行っていたはずが、完全に攻略されています。
仕様書を導入業者が書いている
そんな値段が高止まりする製品なんて買わなきゃいいじゃないと思いますよね。
そこもしっかり対策されています。
入札仕様書は、業者さんが書いた仕様書の原案を”参考”にして作られることがほとんどです。
その自治体の学校で必要なもの、自分たちが行う教育に必要なものを教育委員会の担当者がしっかり判断し仕様化できる人であればいいのですが、そんなことはまれです。ICTに”比較的”詳しい人だったり、全くの門外漢だったりするような人が担当になっていることもあります。また通常3年ぐらいで異動してしまうので、ノウハウなども溜まっていきません。
そんなときに頼りになるのが業者さんです。
「来年にPC教室のリプレースがあるんだけど、仕様書もってきて」と言われればみんな喜んで自分たちが勝てる製品が入った仕様書を持ってきます。
価格が安いと扱ってもらえない
ロイロのような新参者の考えとして、より使いやすくてより安かったら買ってくれると思いますよね?
でもここではその常識は通じません。
導入業者の営業の人は、価格が安くなるだけで自分の成績が落ちてしまうジレンマがあり同じ機能であればより高く売れる方がうれしいんです。
すでに定価が高く、他社と大きな価格差を付けくれる商品がありますから、より使いやすかろうがなんだろうが積極的に売ろうという気にはなってもらえません。
まとめ、公立のICT導入の商慣習で喜ばれる商品の3原則
・他社への卸値に大幅な価格差を付けてくれる
・なるべく定価が高い
・いままでと同じ機能(問題が起きないのが最優先なので)
皆さん、この3原則を守って公立に導入しやすい製品開発に努めましょう!
…って!これっておかしくないですか?
教育の効果とか一切関係なし!
私もチャンピオン価格のことを初めて聞いたときに、違和感を感じこのような業界構造になっていることを知りました。
ロイロの対処法
ロイロでは、ユーザーたる学校の先生や生徒、教育委員会の指導主事に魅力を感じてもらうように直接働きかけをしています。 後から知ったのですが用語としては、ハイタッチ営業というらしいです。
ただ、限界もあるんですよね…。イノベーター、アーリーアダプター層に相当する自治体にはこの方法が効果的なんですが、マジョリティに相当するような自治体では、まだまだぜんぜんロイロノートのことを知らない方が多いです。どうやったら情報が届くのか私たちも試行錯誤中です。
導入してもらえた自治体を成功させていくしかないですね。
実際に使われている機材についてはこちらも参考にしてください。
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