原始仏教の教団組織
原始仏教の教団組織Ⅰ_1☆仏教以前のサンガ・仏教僧伽の特質
はしがき
第一章 原始仏教におけるサンガの意義
一 仏教以前のサンガ
(一)宗教団体としてのサンガとガナ
(二)商工業者の組合と政治団体
二 仏教僧伽の特質
(一)平等
(二)平和
原始仏教の教団組織Ⅰ_2☆サンガの超世間性と国家権力との関係
三 サンガの超世間性と国家権力との関係
(一)国法を超えるサンガの確立
(二)盗戒と国法
*比丘は国法では裁かれない(上座部系)
(三)税金の免除
(四)罪人・負債人・奴隷と出家
*比丘尼律の度賊女戒
(五)僧祇律の立場
*部派分裂以後に書き直された説
→比丘たちは国法によって保護されていたという点が明瞭には表現されていない
原始仏教の教団組織Ⅰ_3☆仏教教団における僧伽の位置
四 仏教教団における僧伽の位置
~四衆・五衆・七衆との関係
(一)サンガの種類
*阿含経や律…在家信者は含まれない
*十誦律…清浄僧と真実僧
(二)僧宝としての僧伽
*学無学の四双八輩(四向四果の聖者)
*凡夫僧は含まれない
(三)四衆の意味
*部派分裂以前にはあまり使われなかった?
*四衆の総称を「サンガ」と呼ぶ用例は見当たらない。四衆≠サンガ
(四)出家の五衆と在家を加えた七衆
*四衆≒五衆≒七衆(内容的に同じ)
*独立の団体を示すために用いられた語(内容)ではない。
∴原始仏教の教団=比丘僧伽と比丘尼僧伽
原始仏教の教団組織Ⅰ_4☆仏教におけるサンガ形成の歴史
五 仏教におけるサンガ形成の歴史
(一)アショーカ法勅に現れたサンガ
*仏教教団のみが「サンガ」
*それ以外はパリシャッドやニカーヤ
(二)波羅提木叉に示されたサンガの組織
「僧(サンガ)を破らんと」←サンガ
「諸比丘に因りて」←「サンガによりて」ではないが、意味的にはサンガからの勧告
そもそも「僧残罪」はサンガを前提としている
(三)比丘尼サンガの存在
(四)仏陀の成道より弟子サンガの成立へ
(五)比丘尼サンガの起源
原始仏教の教団組織Ⅰ_5.サンガと統率者
六 サンガと統率者
(一)サンガの本質としての共同体
(二)仏陀の死とサンガの支配権
*経済上から仏陀はサンガに含まれる(僧中有仏)
*教理的には仏陀はサンガの外に有る(三宝別体)
*仏在世時は、仏は供養一人分を受ける(色身(=肉体)供養)
*仏滅後は、三宝分中の一分を取る(法身供養)
*教理的精神的側面では子弟の関係
*経済的運営の面では、仏陀もサンガの一員
(三)大迦葉とサンガの関係
(四)サンガと伝法相承
*原始仏教時代のサンガの組織には、統率者が出現する余地はない
*部派仏教時代になれば、部派サンガの組織には、かかる統率者が出現したかも?
*統率者の現れる前の、合議体としての仏教サンガの組織
原始仏教の教団組織Ⅰ_6☆サンガへの入団・戒と律(1)
第二章 サンガ結合の精神的紐帯
一 サンガへの入団
(一)入団の決意
(二)信から戒へ
*三宝に対する不壊の浄信…信(法に対する理解=智)
*戒を具足する…行
(三)修行者の種類
二 戒と律
(一)戒律の意味
*主観的な比丘個人の決意…戒
*客観的なサンガの団体の規範…律
*「戒律」には一定の原語が求められない(シーラ・ヴィナヤではない)
*「戒律」は律に傾いた言葉(律蔵の規則)。シーラの意味は希薄
(二)仏教における戒の意味
*律の学処を戒の精神で実行する
*戒定慧の三学の「増上戒学」
*戒具足者にして、波羅提木叉の律義(サンヴァラ=制御・護)に護られて…
*制御とは抑制する力。自制力
*五戒(シーラ)=五学処
*「殺すなかれ・盗むなかれ」よりも「離殺生・離偸盗」の方が言語に忠実か
原始仏教の教団組織Ⅰ_7☆戒と律(2)
(三)戒の原語の種々相、ならびに律との合致点
(四)戒と律との相違
*止悪と作善
*律は戒によって補われねばならない
(五)戒の確立以前と外学の戒律
(六)十善戒の検討と戒論
*戒は、業に順ずる力ではなくて、業に逆らう力
原始仏教の教団組織Ⅰ_8☆戒体と戒の得捨(1)
三 戒体と戒の得捨
(一)無作の仮色
*戒体←心法?色法?
*防非止悪の力←心法
*身業(師を礼拝する)と語業(誓いの言葉を口にする)←ともに色法
*阿頼耶識に薫ぜられた善の種子
(二)非色非心の戒体
(三)戒体と比丘性
(四)無表・無表業・無表色・不失法・増長
原始仏教の教団組織Ⅰ_9☆戒体と戒の得捨(2)
(五)無表色の種類とその得捨
*八斎戒は「夜尽に由る」…翌日の夜明けとともに戒体を失う
*波羅夷罪で戒体を失う?
*正法が滅尽すると戒体を失う?
(六)無表色と思の種子
原始仏教の教団組織Ⅰ_10.サンガ統制のための罰則(1)
四 サンガ統制のための罰則
(一)サンガ退去の自由と捨戒
(二)十利と五篇・七聚罪
原始仏教の教団組織Ⅰ_11.サンガ統制のための罰則(2)
四 サンガ統制のための罰則
(一)サンガ退去の自由と捨戒
(二)十利と五篇・七聚罪
(三)波羅夷罪、附波羅夷学悔
(四)僧残罪
原始仏教の教団組織Ⅰ_12.サンガ統制のための罰則(3)【Ⅰ了】
(五)捨堕罪と波逸提罪
(六)波羅提提舎尼と「罪」や「懴悔」の意味
*悔過法
*受けてはならない食物を、過って受けた(=食べた)場合
*罪の贖い、という意味はない
*どの比丘に懴悔をしてもよい
(損害を与えた比丘に対するものではない)
cf.僧残…サンガに対して懴悔
*心の浄化を実現する懴悔…空の立場の懴悔
(七)突吉羅と悪説
(八)越毘尼と越毘尼心悔
(九)偸蘭遮罪
原始仏教の教団組織Ⅱ_1.僧伽の二重構造(1)
第三章 僧伽の二重構造
~現前僧伽と四方僧伽
*「いま・ここ」「四方・未来(限界がない)」
一 サンガ研究の問題点
二 サンガの特質としての和合
*和合僧
*法食(同じ教法を信奉する)
*味食(物質生活を共同にする)
*界(シーマー)…地域的限界
三 現前僧伽の二つの性格
(一)布薩界
(二)羯磨の種類
(三)界に立つ僧伽の独立性
四 現前僧伽の意味
(一)「現前」の意味
(二)現前僧と四方僧
(三)現前僧と安居僧
(四)衣食住と現前僧伽
五 現前僧伽の律法的性格
(一)集会の義務と宗教行事の共同
(二)王舎城会議の実例
(三)出席の義務と権利の放棄
*与清浄・与欲…欠席を認める
*会議で決定したことに、後から不服を唱えない
*狂羯磨…狂人である間は比丘としての資格を停止する
*賊住比丘…比丘以外の者でいつわってサンガの集会に出席した者。サンガから追放され、サンガに入ることを永久に禁止される(具足戒を受けることが出来ない)。
原始仏教の教団組織Ⅱ_2.僧伽の二重構造(2)
六 生活共同体としての現前僧伽
(一)衣食住の物資
(二)四方僧物の利用
(三)現前僧物の分配、食物の公平なる分配
(四)衣服の分配
(五)衣食分配の結界
(六)摂僧界・摂食界・摂衣界
(七)分配の公平の意味
七 四方僧伽の理念
(一)四方僧伽と波羅提木叉
(二)パーリ律の四方僧の観念と「仏を上首とせる比丘僧伽」
(三)四分律の四方僧と「仏および四方僧」
(四)五分律の四方僧の理解
(五)十誦律の四方解釈
(六)僧祇律と四方僧
原始仏教の教団組織Ⅱ_3.僧伽の二重構造(3)
八 僧伽成立の人数と戒壇
(一)僧伽成立の最少限の人数
*羯磨はサンガのみがなし得る
*3人以下では羯磨はできない
*3人→清浄布薩
*2人→対面布薩
*1人→心念口言布薩
(二)四人僧、五人僧、十人僧、二十人僧、過二十人僧
*四人僧→布薩の羯磨
*五人僧→自恣羯磨(受自恣人が必要)
*十人僧→授具足戒(辺地では持律比丘がいれば五人で可)
*過二十人僧→出罪羯磨(僧残罪からの出罪)
(三)戒壇の成立
*サンガの活動→人数の条件と界内和合
*界内で十人の比丘が集まって受戒
→別衆羯磨=非合法
*十人僧が、出家希望者を伴って界外に出て白二羯磨で臨時の小界を結して具足羯磨→和合羯磨
*戒壇…大界の中に作られた小界(常設)
(接しないように独立して作られる)
(四)パーリ律と戒壇
(五)戒壇の構造
(六)結界の種々相
(七)シナ・日本における戒壇
(八)戒壇の三層
原始仏教の教団組織Ⅱ_4.僧伽の構成員(1)
第四章 僧伽の構成員
一 構成員の種類
二 在家信者のあり方
(一)ウパーサカの意味と在家信者の種々相
(二)信者の入門式と三帰五戒
*三帰(=信)のみで優婆塞たりうる?
→戒体論では不都合
*五戒の分受の可否
→可なら、人によって戒体が違う???
原始仏教の教団組織Ⅱ_5.僧伽の構成員(2)
(三)三帰五戒の作法
(四)信者の布薩、八斎戒
(五)八斎戒の変遷
(六)六斎日・四斎日とインドの暦法
原始仏教の教団組織Ⅱ_6.僧伽の構成員(3)
三 沙弥と沙弥尼
(一)名称
(二)沙弥の成立
(三)沙弥の出家作法
(四)沙弥尼について
原始仏教の教団組織Ⅱ_7.僧伽の構成員(4)
四 比丘の入団
(一)比丘の意味
*乞う人
*玄奘・義浄は苾芻
*賊住比丘は永久にサンガから排除される(波羅夷罪と同じ扱い)
(二)具足戒の儀式と僧伽の主体性
*許可の主体はサンガ(和尚や戒師ではない)
*五戒十戒は、比丘が個人で授ける。
*五戒は、比丘は誰でも授けられる
*十戒は「出家の阿闍梨」が授ける
*依止の阿闍梨は具足戒を受けてから10年以上、他の阿闍梨は5年
*沙弥を度するにはサンガの許可が必要(求聴羯磨)
*沙弥を蓄えるには、法臘5年(10年説もある)
*和尚…弟子を責任をもって指導する比丘。弟子が自分で見つけねばならない。
*十人僧伽に入団志望者を吟味する権能を委譲する。十人の比丘が入りうる小界を結作して、その中で儀式をなす ←戒壇
(三)三師七証と具足戒の儀式
*十人僧伽を「三師七証」と呼ぶ。和尚・羯磨師(戒師)・教授師と七人の証人
*和尚が同じなら三人までは一度に具足戒を授けられる
*四波羅夷(十誦律は十三僧残も)を説く
原始仏教の教団組織Ⅱ_8.僧伽の構成員(5)
(四)僧祇律の四師と和尚の存否
(五)和尚の依嘱
(六)羯磨師の決定と五種阿闍梨
*羯磨師には特定の資格がなく、何人でもなりうる。
*少なくとも五歳比丘になったら、羯磨を誦ずることが出来ねばならない。
原始仏教の教団組織Ⅱ_9.僧伽の構成員(6)
(七)僧伽に入団を許されない条件と教授師
*十遮・十三難のうちの十遮を質問
*難事(四分律):これらを犯した人には具足戒を授けない。永久にサンガの門がとざされる。改心の余地もないし、障害を除去する方法もない。
*十遮は古いが、十三難事は後から追加された?(些細なものや問題がある条件があり、適切なものとは言えない)
五 比丘尼の具足戒
(一)正学女
*二歳六法…妊娠の有無を知る
*サンガの許可が必要
*律ではなく戒
*犯婬は滅擯、染汚心をもって男子に触れた場合は欠戒(失戒)→再び戒を与える
*盗五銭は滅擯、四銭以下なら欠戒
*殺人、大妄語の場合も同様
*非時食と飲酒は、犯せば戒を失う→再受戒
*「欠戒」が特質(年少ゆえ、再受戒の余地)
*二年間の貞潔が、比丘尼の絶対条件
*僧祇律:十八事(六法を言わない)
*学戒の受戒は四人僧伽でよい(比丘尼僧伽と言っていない)
(二)比丘尼の具足戒と律の条文
*和尚尼:法臘満12歳以上でサンガの許可を得た者が、その都度サンガの許可を得て弟子を度する。
*沙弥尼を弟子として持つ場合は「剃髪の白羯磨(サンガの許可が必要ではなく、周知するだけ)」をなすだけ
*沙弥尼を正学女に昇格させるときは、サンガの許可が必要(二歳学戒羯磨)
*正学女→比丘尼:〔現前〕サンガの許可+十人僧伽で具足戒
(三)比丘尼の具足戒の儀式
(四)比丘僧伽と比丘尼僧伽との関係、ならびに八敬法
原始仏教の教団組織Ⅱ_10.僧伽の構成員(7)【了】
六 教育者としての和尚・阿闍梨
(一)教育者の種類
*和尚
*依止の阿闍梨(出家・羯磨・教授阿闍梨は一時的)
*受経阿闍梨
*持律(律師)
*持法
*持母(持摩夷)
*説法師
*多聞
*阿含通達者
(二)和尚と共住弟子
*法臘十歳
*沙弥は、和尚がなければ出家を許さないとは言っていない
*具足戒は、和尚がなければ許されない
*和尚と弟子の関係は、一旦結べば解消できない
*弟子もまた、法臘十歳で弟子を持つことが出来るので、和尚の指導を受けるのは十年か。
(三)依止阿闍梨と依止弟子