質問を構成している言葉に注意を向ける
議論において、問いを出す側は、問いを構成する言葉を自分に都合よく選ぶことができるという特権をもっている。そして、ダグラス・ウォルトンが警告するように、「問う側は、その問いに、自分にとっては有利に、あるいは答える側にとっては不利に傾くような言葉を使用し、それによって優位に立つことをたくらむかもしれない。」だから、答える側は、よほど用心しないと、相手が選んだその言葉に合わせて、問いに答えさせられる羽目になってしまう。
質問の例(本書で挙げられている例)
死刑制度賛成者に対し、死刑廃止論者が問う「国家に人を殺す権利があるのか?」
この問いに対し、「ある」と答えると、独裁的国家が国民を殺すことを容認する思想とみなされて、今後の立場が不利になる
次に、「まさか、ナチスの再誕を望むのですか!?」みたいな問いをされかねない 問いに対し、「ない」と答えると、「じゃあ死刑制度に反対しろよ」と矛盾を指摘されて論破される
素直に相手の問いを受け入れてはいけない
質問を「国家に、複数の殺人を犯した人間に対し、裁判によって死を与える権利はあるか?」と変えると、「ある」と答えられる。
「質問に質問で返すな」と言う言葉は、質問で行使されているレトリックに問答無用でひれ伏せという意味でもあり、危険 他の質問の例
ソフトウェア開発現場で上司から「さっきの会議でX機能の追加が絶対に必要になったんだけど、リリースが遅延すると会社も危険な状態になるから残業とかして何とか対応してくれない?」
「いいえ」と答えたら、会社を犠牲にして自分の時間を守るフリーライダーと扱われ、評価は下がるし上司から厳しい言葉をかけられる可能性がある。 質問が構成している言葉を解きほぐす
「X機能の追加が絶対に必要」
本当に必要か?
代わりに他の機能を削らないか?他の機能が不要になってないか?
この機能追加の見積もりが甘く見られてないか?
「リリースが遅延すると会社も危険な状態になる」
都合の良い背景を作り出していないか?
本当に危険?どう危険になる?
X機能の追加とどう関係ある?
「残業とかして何とか対応してくれない?」
残業ではなく、他の誰かに助けてもらう道はないか?
スケジュールの見直しで対処したほうがいいのではないか?
書いてて気づいたが、これは「質問」というより「依頼」だった
「依頼」もYES or NO で答えたりするから、同じような性質はあると思う