電力カルテル
令和5年3月30日 排除措置命令・課徴金納付命令
公取委命令令和5年3月30日・令和5年(措)第2号・令和5年(納)第6号〔関西電力・中部電力〕審決命令集69巻28頁・73頁
公取委命令令和5年3月30日・令和5年(措)第3号・令和5年(納)第8号〔関西電力・中国電力〕審決命令集69巻33頁・79頁
公取委命令令和5年3月30日・令和5年(措)第4号・令和5年(納)第9号〔関西電力・九州電力〕審決命令集69巻38頁・83頁
公表文
命令書
中部電力の件
排除措置命令書
課徴金納付命令書
当初、リンク先を間違えていました。ご指摘に感謝します。
中国電力の件
排除措置命令書
課徴金納付命令書
九州電力の件
排除措置命令書
課徴金納付命令書
課徴金納付命令書
会社の発表
関西電力
電力・ガス取引監視等委員会への報告(令和5年4月12日)
中部電力
命令受領
取消訴訟の提起を決定(即日)
中国電力
命令受領
今後の対応等
九州電力
3件共通のメモ
4社のカルテル1件という認定でなく、2社のカルテル3件という認定。
2社のカルテルという認定なので、関西電力が減免申請をして違反行為終了が認められた時点で他の1社も違反行為終了(1社ではカルテルはできない)。
違反行為終了は令和2年10月29日。令和元年改正施行日(令和2年12月25日)より前。
違反要件と課徴金計算(減免制度を除く)は令和元年改正前の規定。
違反要件は改正はないが。
調査開始日前の減免申請は関西電力のみ(1位)。
立入検査報道は令和3年4月13日・7月13日。令和元年改正施行日より後。
減免制度(関西電力を除く)は令和元年改正後の規定。
小売供給をする各社は、「自ら発電し、又は…電源開発…等から調達した電気の小売供給を行う事業を営む者である。」
九電みらいエナジーと、平成31年4月1日以後の中部電力・中部電力ミライズとを、除く。
報道されるような、関西電力から持ちかけて云々という表現は、少なくとも排除措置命令書にはないようにみえる。
shiraishi.icon
関西電力管内の「特別高圧需要又は高圧大口需要に係る電気の使用者(官公庁等を除く。)」について、中部電力事件と中国電力事件は重なっている。
関西電力の課徴金計算において論点となり得たが(シャッター)、関西電力が調査開始日前第1位の減免申請をし全額免除となったので議論の実益がなかった。 一方の合意のみで競争の実質的制限があったか、という論点も、別途、あり得る。
shiraishi.icon違反行為短期間かつ早期取りやめの軽減算定率(令和元年改正前7条の2第6項)
前提
令和元年改正で廃止された制度
本件の課徴金計算は令和元年改正前の規定で行う
算定率が2割減となる
要件
実行期間が2年未満
調査開始日の1月前の日までに違反行為終了
本件での結果
各社とも1月前までに違反行為終了は満たす(関西電力の減免申請で終了)
中国電力は2年未満
九州電力は2年超
中部電力は全体としても2年未満だが中部電力と中部電力ミライズに分かれたのでなおさら各2年未満。
中部電力の件のメモ
中部電力201億8338万円。中部電力ミライズ73億7252万円。
卸売業の軽減算定率2%が、さらに短期・早期の軽減で1.6%に。
排除措置命令は中部電力ミライズのみ。
中部電力は減免制度の適用事業者でない(別表)
「2地区に所在する大口顧客に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していた」
「2地区」=「中部電力管内又は関西電力管内」
「大口顧客」=「特別高圧需要又は高圧大口需要に係る電気の使用者(官公庁等を除く。)」
時系列
平成30年11月2日(「遅くとも」)
違反成立
平成31年4月1日
中部電力は、「火力発電に係る事業を、自社が50パーセント出資するJERAに承継させ、同日以降、自社が小売供給を行う電気をJERA等から調達するなどしていた。」
令和2年4月1日
中部電力が中部電力ミライズに電気の小売供給を行う事業の全部を承継させた
中部電力は、「同日以降、同事業を営んでいない。」
「中部電力は、同日以降、同合意に参加していない。」
中部電力ミライズは、「中部電力から承継することにより、同社に替わって当該合意に参加した。」
令和2年10月29日
違反行為終了
令和2年12月25日
令和元年改正施行
令和3年4月13日・7月13日
立入検査の報道
shiraishi.icon業種別の軽減算定率(令和元年改正前7条の2第1項)
前提
令和元年改正で廃止された制度
本件の課徴金計算は令和元年改正前の規定で行う
「小売業」3%。「卸売業」2%。その他は10%。
その事案の事業が何であるかが問われる
論点
電気の小売供給は「小売業」・「卸売業」に該当し得るか
電気の小売供給は「小売業」か「卸売業」か
関係会社からの購入
「小売業」・「卸売業」・「その他」の混在
中国電力の件のメモ
707億1586万円。
短期・早期の軽減算定率8%
排除措置命令。
違反成立は「遅くとも」平成30年11月8日。
「2地区に所在する相対顧客及び中国電力管内に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していた」
「2地区」=「中国電力管内又は関西電力管内」
「相対顧客」=「特別高圧需要、高圧大口需要又は高圧小口需要に係る電気の使用者(官公庁等を除く。)」
九州電力の件のメモ
九州電力27億6223万円。九電みらいエナジー課徴金なし。
算定率10%で、減免30%(順位減免10%、合意減算20%)
排除措置命令は九電2社の両方。
九州電力と九電みらいエナジーで「九電2社」。
九州電力と関西電力で「2社」。
九州電力は、令和元年改正施行後の立入検査の以後に減免申請(順位減免10%・合意減算20%)。
九電みらいエナジーの減免申請については下記。
違反成立は「遅くとも」平成30年10月12日。
九電みらいエナジーについて
「九州電力等から調達した電気の小売供給を行う事業を営む者である。」
「九州電力は、九電みらいエナジーの株式の全てを保有し、九電みらいエナジーによる電気の小売供給を行う事業の方針を定め、当該方針に基づき九電みらいエナジーに当該事業を行わせていた。」
会社のウェブサイト
「事業内容」
「再生可能エネルギー発電事業(太陽光・風力・バイオマス・地熱・水力発電の開発~運営)」
「小売電気事業(2016年4月~、関東エリアを中心に電気の販売を開始)」
九電みらいエナジーの課徴金について
九州電力と、「共同して、課徴金減免申請を行った者である。」(別表)
「課徴金減免申請を行った者であるが、令和元年改正前の独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額(課徴金の算定の基礎となる売上額)が存在しなかったため、課徴金納付命令の対象とはなっていない。」(別表)
shiraishi.icon課徴金額が裾切り額以下、というのでなく、売上額が存在しない、という表現。
「関西電力は、前記2(5)により、九州電力管内の官公庁等が使用する電気の供給者にほとんどなっていなかった。」
「九電2社は、前記2(5)により、関西電力管内において九電みらいエナジーが小売供給を行う需要規模を、九州電力管内において関西電力が小売供給を行う需要規模等を踏まえて設定した上限以下に抑制していた。」(排除措置命令書5頁)
「需要規模」=「官公庁等に係る契約電力の合計」(排除措置命令書5頁)
「2地区に所在する官公庁等に対して小売供給を行う電気の取引分野における競争を実質的に制限していた」
「2地区」=「九州電力管内又は関西電力管内」
「官公庁等」=「特別高圧需要、高圧大口需要又は高圧小口需要に係る電気の使用者であって、国、地方公共団体、〔入札談合関与行為等防止法上の特定法人〕又は〔政府調達に関する協定附属書Ⅰ付表3に記載の機関〕」
shiraishi.icon
関西電力の違反行為終了の時点で九電2社も違反行為終了となっており、100%親子会社だけではカルテルは違反とならないという公取委の判断の一例を示したものとも言える。
当たり前のことであるが、当たり前でない先例があったために、このようなメモも必要になる。
shiraishi.icon動画「電力カルテル事件を考える」2023-04-05収録
質問や感想に応える動画 2023-05-06収録
令和4年12月1日 命令書案受領の旨の開示
中部電力・中部電力ミライズ
中国電力
九州電力
命令の額と同等の特別損失を計上していた旨の命令時の適時開示
令和4年11月25日 「命じる方針を固めた」報道
日経
総額は少なくとも数百億円とみられ
関係者によると、各社は関西電力と2018年秋ごろ、大規模工場向けの「特別高圧電力」や企業向けの「高圧電力」の供給で互いの管轄区域で営業をしないよう、顧客獲得を制限するカルテルにそれぞれ順次合意。少なくとも20年夏ごろまで維持したとされる。
関係者によると、関電は違反を自主申告して課徴金の減免を受ける「リーニエンシー」制度に基づいて申告し、行政処分を免れたもようだ。
中国電力や九州電力など大手電力会社の幹部らに対し、互いの営業エリアで営業しないよう持ちかけたのが関西電力の当時の役員とみられることが25日、関係者への取材で分かった。
関電は公取委に最初に違反を自主申告したため、独禁法の課徴金減免制度「リーニエンシー」に基づき、課徴金納付などの行政処分を免れる見通し。
令和3年7月13日 立入検査報道
NHK
自由化によって電力市場の競争が激しくなる中、九州電力や関西電力、中国電力などが互いの顧客を獲得しないよう申し合わせるカルテルを結んでいた疑いがあるとして、公正取引委員会が13日に独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行いました。
独占禁止法違反のカルテルの疑いで立ち入り検査を受けたのは、九州電力、九州電力の関連会社の「九電みらいエナジー」、関西電力、中国電力です。
関係者によりますと、4社は大規模なオフィスビルや中小ビルなどの事業者向けの電力について、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせるカルテルを結んでいた疑いがあるということです。
令和3年4月13日 立入検査報道
日経
大規模工場向けの特別高圧電力や企業向けの高圧電力の供給を巡り、互いに顧客の獲得を制限するカルテルを結んだ疑いが強まったとして、公正取引委員会は13日、関西電力、中部電力、中国電力など計4社の関係先を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査した。
関係者によると、3社と中部電力グループの電力小売会社、中部電力ミライズ(名古屋市)は、ビルや大規模工場向けの特別高圧電力とオフィスや工場向けの高圧電力の供給を巡り、18年ごろからそれぞれの管轄区域を越えた営業はしないように互いに顧客の獲得を制限していたという。