損害保険
令和6年10月31日 排除措置命令・課徴金納付命令・留意点等
公取委命令令和6年10月31日・令和6年(措)第12号・令和6年(納)第24号〔JOGMEC向け損害保険〕
公取委命令令和6年10月31日・令和6年(措)第18号〔東急向け損害保険〕
公表文PDF
代理店の共立は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の事件
公正取引委員会「共同保険に係る独占禁止法上の留意点等について」(令和6年10月31日)(同日の損害保険会社に係る公表文の別添1)
審決等データベース
排除措置命令書
JERA(令和6年(措)第10号)
コスモ石油(令和6年(措)第11号)
JOGMEC(令和6年(措)第12号)
シャープ(令和6年(措)第13号)
京成電鉄(令和6年(措)第14号)
警視庁(令和6年(措)第15号)
東京都(令和6年(措)第16号)
仙台国際空港(令和6年(措)第17号)
東急(令和6年(措)第18号)
課徴金納付命令書
JERA(令和6年(納)第18号)
コスモ石油(令和6年(納)第21号)
JOGMEC(令和6年(納)第24号)
シャープ(令和6年(納)第26号)
京成電鉄(令和6年(納)第28号)
警視庁(令和6年(納)第31号)
東京都(令和6年(納)第32号)
■■ここからセミナー資料■■
9の需要者(保険契約者)ごとに別々に違反行為・別々の排除措置命令書
https://gyazo.com/5fced4a64168edc428665776db43c421
仙台国際空港の議決権の54%は、東急グループが保有(42+9+1+1+1=54)
https://gyazo.com/87f86b66873d02ce6ac71f0601ecb376
(東急の排除措置命令書に、仙台国際空港が出てくる。)
減免申請は違反行為ごとに行うことになるので、公表された9件関係だけで減免申請は27件
公表文PDFで、上記の「別表」の次頁以下に9件ごとの表があり、減免申請の状況も含まれている。
27件の数え方
MS&ADグループの共同申請は1件と数えた(計4件)
仙台国際空港の三井住友海上火災保険の「―」は、減免申請をしていないという意味と理解。
質問:当初の申請に係る違反行為が事後的に複数の違反行為に分かれるときはどう処理するか?
様々なバリエーションがある、というご教示をいただいた
https://gyazo.com/4efcca5fa2b634eb050007e018cecdd0
審査局での分担(公表文PDFの1頁の最下)
第一審査(令和6年8月5日報道分)
第四審査上席(令和6年7月4日報道分)
第五審査(その他)
損害保険代理店が違反者となった件(JOGMEC向けの件)
いわゆるハブ&スポークの一例
本町化学工業は課徴金あり。共立は課徴金なし。違いは、同じ有体物を転売したか、手数料をとるビジネスだったか、だけではないか。
減免申請の状況(特に断らない日付は令和5年)
情報入手方法
減免申請の順位は、公表文PDFの表
日付は、排除措置命令書において、違反行為の終了の認定に必要な範囲で、書き込まれる。
東京海上1位・損保ジャパン2位・MS&ADグループ調査開始日以後
JERA:1位7/20まで、2位7/21まで(立入検査12/19)
コスモ石油:6/20に報道を契機として違反行為終了
JOGMEC:1位7/20まで、2位7/21まで
シャープ:1位7/28まで、2位7/31まで
警視庁:1位2位とも7/28
東京都:令和4年に違反行為終了(損保ジャパン以外の順位は厳密には不明)
損保ジャパン1位・MS&ADグループ2位・東京海上調査開始日以後
京成電鉄:1位7/28まで、2位7/31まで
損保ジャパン1位・東京海上順位不明
仙台国際空港:令和4年に違反行為終了
順位不明
東急:令和4年に違反行為終了
「留意点等」
1(1) 需要者が「競争を求めた場合」は、「原則として独占禁止法上問題となる(不当な取引制限)。」
https://gyazo.com/3cca5c33d1c32806e7d9aa26a9e252d7
1(2) 需要者が「競争を求めずに自ら決めた場合」や「組織として具体的かつ明確な指示等がなされることにより……指示等の範囲の限りにおいて……場合」は、「直ちに独占禁止法上問題となるものではない。」
https://gyazo.com/06b7f9101c97bf13ab457ded1e979c14
https://gyazo.com/9796c2e18643947c666579960f549a52
「組織として」
しかしながら、調達実施本部から提示された最低商議価格を基に落札され、指名競争入札制度が形がい化していたとしても、それらは、調達実施本部において、指示、要請し、あるいは主導したものではなく、現に、被告人会社等は、入札における自由競争が妨げられていたというわけではない。
直近の需要者が競争を求めていない場合でも、その更に川下の需要者が競争を求めている場合がある。損害保険の場合は、需要者の川下の者を観念し難い業界である可能性はあるが、更に川下がいる場合には注意を要する、というご指摘をいただいた。
幹事会社や引受割合を決めても、保険料率について「競争を求めている場合」は、「原則として独占禁止法上問題となる(不当な取引制限)。」
1(3) 共同保険の進行中の話
https://gyazo.com/d4b9ca906d50edb6636f8532c3a097d2
共同保険の運営に必要な情報共有は良いが
次期について情報交換することは「独占禁止法上問題となり得る」
2 以上のことを受けた、各立場における「留意点」
https://gyazo.com/61c2929b4947990fcef2bad15b948bc2
https://gyazo.com/a4f43516a0cecbe513a58c1d5b0c091f
3 乗合代理店への出向者による情報漏洩
https://gyazo.com/9844c2ea014c715a9a54be3ac0e70418
共同保険で、大規模であるため競争を期待できない場合? → 1(2)か?
(参考)損保ジャパン調査報告書
主に、22〜51頁。
コンプライアンス 22-31
モニタリング・内部通報制度など 31-37
独禁法の観点からの損害保険の歴史 37-42
損害保険の市場環境・規制環境 42-44
実務・業界慣行 44-51
損保VAN 46-50
金融庁との関係 50-51
■■(セミナー資料ここまで)■■
令和6年8月5日 京成電鉄と東京都について意見聴取手続に入る旨の報道
日経
関係者によると、新たな処分案は京成電鉄と東京都向けの保険について通知された。
京成電鉄向けは、4社が遅くとも2019年12月以降、見積もり合わせに当たって事前に主幹事となる損保会社を決め、カルテルを結んでいた疑いがある。
京成電鉄が各社に支払った保険料から算定した課徴金額は損保ジャパン以外の3社で計約1億2000万円となる。損保ジャパンは調査開始前に自主申告したため、課徴金減免(リーニエンシー)制度に基づき、納付命令を免れるもようだ。
東京都向けでは、あいおいを除く3社が遅くとも19年3月以降、入札の受注予定者をあらかじめ決めていた疑いがある。落札した損保ジャパンに約3500万円の課徴金納付を命じる。
ほかにも国内発電最大手のJERAやコスモエネルギーホールディングスなど4社・団体向けの保険契約で独禁法に違反した疑いがあるとして課徴金納付命令を視野に調査を継続しており、課徴金はさらに膨らむ見通しだ。
令和6年7月4日 東急と仙台国際空港について意見聴取手続に入る旨の報道
「仙台空港」の運営会社が「仙台国際空港」
毎日
関係者によると、公取委は今回、東急と仙台空港の事件を先行して処分するとみられる。東急の事件では4社が、仙台空港ではあいおいを除く3社が、2022年に火災などの損害保険でカルテルを結んだとされる。ただし、東急との契約については東急側が疑いを抱いたことで入札がやり直され、不正行為による売り上げがなく、仙台空港との契約も課徴金算定額が基準に達しなかったという。
このため公取委は、課徴金の納付は命じず、再発防止を求める排除措置命令にとどめる見込み。一方で、調査中の残りの事件ではカルテルによる売り上げが成立している契約もあり、課徴金納付命令に発展する可能性も残る。
日経
一連の問題は23年6月、東急との保険契約を巡って表面化した。公取委は同年8月、4社に資料提出を求める任意の調査を開始。東急と仙台国際空港向けの取引について先行して調べていた。
同年12月に国内発電最大手のJERAやコスモエネルギーホールディングスなど6企業・団体との契約でもカルテルを結んだ疑いがあるとして、損保4社と保険代理店2社を立ち入り検査した。6企業・団体との契約については課徴金納付命令も視野に継続して調べる。
shiraishi.icon報道まとめ
「損保大手4社を行政処分へ」などの見出しのニュース。毎日新聞と日本経済新聞の報道によると、
1 「東急向け」と「仙台空港向け」の2件で排除措置命令に向けた独禁法49条以下の意見聴取手続に入った。これらの2件は令和5年8月からの任意調査の対象。
2 課徴金は無し
(1) 東急向けは被疑カルテル後に見積り合わせがやり直しとなり、被疑カルテルによる売上額がない模様(やり直し前の合意だけで違反なので排除措置命令はするという論理の模様)
(2) 仙台空港向けは、課徴金計算をして100万円以上となった会社がなかった模様(7条の2第1項ただし書)
shiraishi.icon追記:損害保険ジャパンは、「免除」と表示されたので、100万円以上であったが免除されたので課徴金がなかった模様。東京海上日動火災保険は、100万円未満。
3 「東急向け」と「仙台空港向け」のほかに、令和5年12月から立入検査等をしている6の企業・団体向けの部分について、さらに調査を続ける。
NHK
19日、公正取引委員会の立ち入り検査を受けたのは、損害保険大手の
「東京海上日動火災保険」
「損害保険ジャパン」
「三井住友海上火災保険」
「あいおいニッセイ同和損害保険」の4社と、
保険代理店2社です。
関係者によりますと、これらの会社は、損保側が火災などのリスクを分担して引き受け、企業への保険金の支払いを共同で行う、「共同保険」と呼ばれる分野で、事前の話し合いによって契約企業から受け取る保険料を事前に取り決めるカルテルを結び、独占禁止法に違反した疑いがあるということです。
また、東京都や独立行政法人との保険契約の入札で、事前に落札する会社や価格を調整する談合を行っていた疑いもあるということです。
日経
カルテルを結んだ疑いが主に持たれているのは、損保各社が分担して保険金の支払い義務を負い、インフラ系などで保険金の支払いが巨額になるリスクを分散する「共同保険」。契約先は国内発電最大手のJERAやコスモエネルギーホールディングスといったエネルギー業界のほか、シャープ、京成電鉄、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の5社・団体。JOGMEC側の保険代理店も調整に関与したとして立ち入り検査を受けた。