事例解説アウトライン2020-08-31
(審決の段階)
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事例の概要
H19-05 近畿事件(受注調整)の被疑行為開始。
H19-10 旧三和S→三和H。新三和Sが事業承継。
H20-03 全国事件(価格引上げ)の被疑行為開始。
H20-11 立入検査で被疑行為終了。
調査開始日以後の減免申請(近畿事件)
三和Hと三和S
文化 → 失格
審判手続廃止前の事件
命令に対する審判請求
三和の近畿排除措置命令を除き、全て
審決案
文化の近畿物件番号16のみ外す
審決
全国と近畿の重なりの部分の課徴金を1個にする
それ以外は審決案を引用
審決取消訴訟
3社とも全国事件のみについて提起(各社の発表による)
不当な取引制限事件で常に出てくる論点
(何かあればコメントご遠慮なく。)
意思の連絡
その他の違反要件
課徴金関係
当該商品又は役務
文化の近畿物件番号16のみ外す(審決案133, 192-193)
引渡基準か契約基準か
全国事件で引渡基準、近畿事件で契約基準
簡単にいうと、大きな取引がまばらに行われる場合に契約基準
両者が並立してもおかしくはない(審決案113)
課徴金減免の失格(審決案154-158)
7条の2第17項第1号(令和元年改正後の7条の6第1号)
当初は行為を認めていたが、その後、行為を認めない報告をした
審決は、行為があった、と認定したうえで、行為を認めない報告を虚偽と認定
三和は、近畿事件の違反要件の成立を争っていない
少なくとも審判廃止前は、違反行為の認定は排除措置命令のほうに強く紐付けられている。
課徴金の重なり(審決書3-5頁、審決案152-154頁)
審決案(審判官による)
一般論
「制裁」。「単なる不当な利得の剥奪にとどまらない目的を持つものである。」
「複数の違反行為が存在し、それらが別個のものであれば」
本件
「一定の取引分野及び行為態様が異なっており」
「近畿合意が10か月程度も先行」
「それぞれ異なる担当者により」
「他方の合意の存在とは独立してされた」
審決(委員会による)
一般論
制裁とは言わないが、「単なる不当な利得の剥奪にとどまらない目的を持つものである。」
「複数の違反行為に対してそれぞれ課徴金を課すべき場合において・・同一の物件について重複して課徴金を課すべきことになるのはやむを得ないと解する。」
(以下に関係する直接の一般論は、ない。)
本件
H20-03(全国事件開始時)の近畿の支店長級会合で価格引上げが確認され、「これらの販売価格の引上げは、全国合意に基づく特定シャッターの販売価格の引上げに関する本社からの指示によるものであることが推認される。」
H20-03以後の「近畿合意に基づく受注調整は、受注予定者の決定のみならず、全国合意に基づく特定シャッターの販売価格の引上げを具体的に実現するために行われたものと評価することができるのであり、その限度において、全国合意の実施と全く別個のものと解するのは相当ではない。」
「したがって、・・・重複して課徴金を課したことは、課徴金制度の趣旨に照らしても正当化することはできないのであり、・・」
「そして、前記3で説示したとおり」以下は、どちらの課徴金納付命令から差し引くか、というテクニカルな話。
考え方
行為は2個、競争への影響は1個、という場合の取扱い。
行為に着目
制裁の要素を強調することになる
影響に着目
不当利得の額に一致させるべきとは言わないとしても、不当利得が1個しかないのに2個の課徴金を課すのはおかしい、と論ずる。
具体的な論法
そのような法律論を前面に押し出す
行為は1個であったと認定する
計算式の違いによる顕著な違い
不当な取引制限
行為の個数を分けて、それぞれに課するほど、額が高くなる。
違反行為対象取引の取引額を対象とする計算式が法定されているから。
優越的地位濫用
行為を1個にまとめて、全体に課するほど、額が高くなる。
そうすると、法定の計算式によれば、それぞれの取引相手方に対する不利益行為がその時期にあったか否かにかかわらず、全ての取引額に課すことになるから。
景表法
行為が2個あるように見えても、全体として1個として認定し、1個の課徴金のみを課す傾向。
典型的には、同一の商品役務について優良誤認と有利誤認があった場合
課徴金計算式の構造が不当な取引制限に似ている
違反行為対象取引の取引額のみに絞る計算式が法定されている
参考
違う論点ではあるが、景表法の課徴金の運用には変化が見られる
店ごと、品種ごと、などで違反行為を細分化して、それぞれが裾切り額を下回っていた、というような種類の事件で、まとめて1個の違反行為とした事件(そのために裾切り額を下回らなかったのではないかという事件)が多くなっている。
公正取引12月号の座談会
コメント
Aさん
減免失格
事実を争ったのか、行為の位置づけ(法解釈の一種)を争ったのか。
課徴金の重なり
どちらから差し引くか
当該商品又は役務
範疇に属する
実際の効果
実行行為期間中のものが全てとられる
Bさん
減免失格
減免申請しながら否認、は一定程度ある
令和元年改正後の調査協力減算制度
追加の報告がなかった、という処理もあり得る
消防デジタル事件
課徴金納付命令書を見ると、紙は出たが受け入れなかったように書いている部分がある
新法では、報告は認める方向ではないか・・7条の4第5項(?)
Cさん
課徴金の重なり
一般論として放棄せず、本件への当てはめにした
取り消したから裁判所で争われない
近畿が残るのか、全国が残るのか、論理的に説明できるか
優越的地位濫用の課徴金のような問題は、不当な取引制限でもありえるのでは
需要者ごとに事件を分けるか、商品類型全体で1個とするか
景表法の課徴金
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