企業結合規制(基本解説アウトライン)
概要
https://stjp.sakura.ne.jp/_presen/keynote/MergerReview_detailed2.jpeg
もし企業結合行為が行われたならば弊害が起こる蓋然性がある、という場合に、企業結合行為を事前に禁止する。
事後もあり得るが末尾
事前の企業結合審査、事前届出義務。
行為要件
行為要件を満たせば、事前規制の対象となる
さらに規模の要件を満たせば事前届出義務
日本では複数の条による縦割り
会社による株式取得(10条)
役員兼任(13条)
会社以外による株式取得(14条)
合併(15条)
共同新設分割・吸収分割(15条の2)
共同株式移転(15条の3)
事業譲受け等(16条)
受け皿条項(17条)
どれに該当しても、他の違反要件は同じ
届出義務の要件が異なる。
→ 届出義務の違いに応じて条を分け、それに違反要件規定が帯同している、というイメージ。
弊害要件
企業結合後の状況を企業結合前に判断するのであることを「こととなる」で表現
基準時は企業結合後
企業結合前の現在の状況を検討しているのは、(当事会社の企業結合を除けば)現在の状況がそのまま維持されることを暗黙の前提としているから。
過去の出来事が参考とされることもある。
例:過去に一斉価格引上げがしばしば起きたことが、将来における協調的行動を予測させる。
一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる
以下では、これを小分けにする。
市場画定(一定の取引分野の画定)
需要者・供給者・商品役務 から成る
需要者からみて選択肢となる供給者の範囲
通常の事例集の記述
当事会社が競争関係にある商品αがあり、それと似ている商品βがある、という場合に、αだけで市場が成立するか、αとβであわせて1個の市場が成立するか
需要の代替性
あれば、商品βも同じ市場に含む
なければ、「供給の代替性」に進む
供給の代替性
あれば、(一定条件(略)を満たせば)商品βも同じ市場に含む
なければ、商品βは同じ市場に含まない
需要の代替性は、需要者が誰であるかによって左右されるので、時々、需要者は誰であるかが明示的に記載される。
以上は、商品役務の範囲
地理的範囲
考え方は商品役務の範囲と同じ
世界中の教科書で商品役務の範囲と地理的範囲がある、と書かれているので、仕方ないから毎回触れるお約束、という感じの記載が多い。
「需要者からみて選択肢となる供給者の範囲」が唯一最大の基本的考え方であり、他は、そのもとで色々言われている、という話
競争を実質的に制限することとなる
企業結合行為を行ったら競争の実質的制限が起こる蓋然性が高まる。
企業結合行為を行ったら、懸念される行動が起こりやすくなる。
懸念される行動が本当に起こったら、競争の実質的制限が起こる。
これらは、全体として判断すればよい(一つ一つに立証責任は発生しない)が、便宜上、2つに分けて説明。
企業結合行為を行ったら、懸念される行動が起こりやすくなる
懸念される行動
水平型企業結合
当事会社らにおける価格等の連動
垂直型企業結合
川上と川下
閉鎖と情報入手
排除または協調的行動
混合型企業結合
甲市場と乙市場
組合せ供給と情報入手
排除または協調的行動
懸念される行動が起こりやすくなるかどうかは次の2つのポイントを見て判断
意欲
インセンティブ
次の「懸念される行動が本当に起こったら、競争の実質的制限が起こる」とシームレスにつながっているので、例えば、懸念される行動をしても排除に成功しないから懸念される行動をしない、という扱いになることもあり得る。
懸念される行動が起これば競争を実質的に制限する
正当化理由なく競争変数が左右される状態
正当化理由は、登場頻度は低い
競争変数=価格、品質、数量等
「競争変数が左右される」=「牽制力が働かない」
牽制力の各種
内発的牽制力
少数株式取得の場合など
他の供給者による牽制力
既存の競争者
新規参入者(国内・国外)
隣接市場
市場画定で類型的に外に出したものによる敗者復活
需要者による牽制力
いくつかのポイント
協調的行動が起きやすい市場か
他の供給者の予測が容易
抜け駆けの発見が容易
抜け駆けへの制裁が容易
当事会社同士の競争が特に活発(close competitors)であったか
因果関係
懸念される行動が起こりやすくなる、などの議論にかなりの程度が吸収されているが、
独自の問題もある
もともと弊害が存在した場合
将来いずれにしても弊害が起こる場合
競争を期待できない場合
届出義務
「企業結合集団」の「国内売上高合計額」(10条2項で定義)
10条2項は次のものが混在
届出義務総論
株式取得の届出義務(各論)
企業結合審査
このページ冒頭の図のとおり
もともと事前相談ばかり
平成23年の見直し
第1次審査(30日)
第2次審査(91日)
意見聴取通知期限
当事会社側がその気になれば時計の針で公取委にプレッシャーをかけることができる
最近、
全てを届出前相談の段階で行い、セレモニーとして届出を行う案件の増加?
公表されない
判断が迅速?
平成23年の見直しより前に戻ったことになるが、手続に対する信頼感・安心感があるためか?
参考
「届出一覧」
先端問題
ビッグテックによるスタートアップの買収
違反要件論
どのように捕捉するか
事後の企業結合規制
条文上の疑義はあるが日本でもできることになっている
FTC v. Facebook は、過去の企業結合を他者排除行為の一環と見るもの
本日の後半
水平型企業結合の例
混合型企業結合の例