台湾型家父長制
台湾における家父長制
約 30 万人の先住民の他は、大多数は 17 世紀以降に大陸から移住した漢民族によって構成される
1949 年以降、国民党 (台湾) 渡台にともなって移住したものを外省人、それ以前の漢民族移住者を本省人という
溝は埋められつつあるが、二・二八事件のような血で血を洗う対立で作られた溝は完全に埋められたわけではない
大多数を占める本省人は福建や広東の中国南方系
家父長制を考えるにあたっても、そこを考察する必要がある
中国では一般に 「男主外、女主内」、「男耕女織」 と古くから言われる → 女性が農作業に従事することは少ない
特に華北でその傾向が強く (1930 年頃の女性の農業従事は 6 % 程度)、華南はそこまでではない (同 30 %)
纏足の普及も華北で強い
女性の農業労働に従事する程度の違いは、戸外での労働一般に従事する程度の違いにそのままつながった
中国は拡大家族 (extended family) の傾向が強い
特に南方はその傾向
中国の中でも、南方は比較的男女平等な傾向
台湾型家父長制形成の背景
1. 中国南方の労働規範を背景としている (もともと中国において辺境であり、文化的にも辺境)
上流階級規範が定着しにくかった
女子労働抑圧などもさほど定着しなかった
日本や韓国と比べて、都市部でも女性の労働力率は高い
子の存在が就労を妨げるような規範や意識はあまりない
子どもの有無にかかわらず、就労すること自体は当然
父方の母が子育てに積極的に参加する (子どもは父系の家系の宝という意識 (中国語で赤ん坊は 「宝宝」 と呼ばれる))
2. 外省人の生活様式
台湾に土地や資産を持たないため、子女の教育により階層上昇 (維持) をはかる
親族が大陸に残っているため、伝統的な考えの親族による束縛も少ない
台湾を含めた中国社会は、トッドの分類でいう共同体家族に属する
親の元に成人後の息子夫婦が結婚後複数も同居するという家族形態
兄弟間で均分相続をする
兄弟間の平等原則があるので、年齢秩序の官僚制型よりも、ボスとの一対一による放射状の人間関係を作りやすい
日本との対比
日本では、非血縁的なイエが倣い拡大して企業一家を形成
台湾では、親族経営の中小企業 (企業の外延を親族へと縮小)
関連
台湾の女性の就労
参考文献
東アジアの家父長制 ― ジェンダーの比較社会学