鳰の海や月の光のうつろへば波の花にも秋は見えけり
詞書
語釈
鳰.icon
鳰がたくさん集まるみずうみなので、「にほのうみ」。
? 他の湖でなく、なぜ鳰の海なのか?
題は「湖辺月」。
琵琶湖が身近な題材だったからか?
定家の歌で琵琶湖を詠んだのを以前目にしたようなcFQ2f7LRuLYP.icon
うつっていく、推移する意味の「移ろふ」と、光が反射して照り映える「映ろふ」の二種がある。両者ともハ行四段活用。
前者の例
後者の例
増鏡〔1368~76頃〕一五・むら時雨「暮れかかる程、花の木の間に夕日花やかにうつろひて」
日本国語大辞典より。花の木の間に夕日が反射している。
白い波頭、しぶきを花と喩える。
秋になると、草も木も色変わりする。しかし、この大海の波の花は相変わらず白いままだ。波の花には秋の訪れはないのだなあ。
『土佐日記』の一月二十二日の条、海が荒れているときにも「波の花」の用例あり。 今日、海荒げにて、磯に雪降り、波の花咲けり。ある人のよめる、
現代語訳
鳰の海よ、水面に月の光が映ると、(あの、秋の訪れぬという)波の花にも、秋が見えるよ。
それを踏まえて、「月の光が映るので、やはり波の花には秋が見えるのです」と新しい情緒を詠んでいるのだ。
波の花に"も"秋は見えけり
仮に波の花にぞとなっていたら、波の花(月の光のうつった)に秋が見えたことを強調することになる
この歌では"も"である
波の花以外に秋の見えたなにかがある
月の光であろうか?
それとも本歌に寄せて草木を念頭に置いているか?
草木も、波の花にも秋が見える
2021-10-31 15:02