ねやの上に雀の聾ぞすだくなる出で立ちがたに子やなりぬらむ
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春・詞書は「三月中」。晩春三月の中ごろ、今でいうと三月下旬から五月上旬ごろ。
品詞分解
ねや|の|上|に|雀|の|聾|ぞ|すだく|なる|出で|立ち|がた|に|子|や|なり|ぬ|らむ 語釈
ねや
寝室、寝所。婦女の居室や、深窓を指すこともある。(全文全訳古語辞典)
閨怨(けいえん。妻が夫と別れるうらみ。)という言葉もあり、女性の部屋のイメージが強いcFQ2f7LRuLYP.icon 『蜻蛉日記』の天禄三年(972)二月に、軒にいる雀の描写がある。
屋の上をながむれば、巣くふ雀ども、瓦の下を出で入りさへづる。(新編日本古典文学全集『蜻蛉日記』p.289)
聲
声の異体字。
雀の声の例
https://www.youtube.com/watch?v=qgRTDNR9f0U
どれが子どもでどれが親なのかわからんなあcFQ2f7LRuLYP.icon
すだく(集く)
群れて騒ぐ、集まって騒がしいこと。(全文全訳古語辞典)
かしかまし野もせにすだく虫の音やわれだにものはいはでこそ思へ
『伊勢物語』の異本の一、阿波文庫本にある「虫の音」という話。(新編日本古典文学全集『伊勢物語』p.224)
やかましいことだ。野も一面に集まって、騒がしい虫の音よ。(恋にわずらう)私でさえ、物も言わずにじっと思っているというのに。
恋にわずらう男が、植込みで集まって鳴く虫にいらだって歌った歌。
集まっている、群れている様子をいうこともある。
平家物語の有王に「沖の白洲にすだく浜千鳥のほかは、跡問ふものもなかりけり」という用例があるようだ。(全文全訳古語辞典、「跡問ふ」の用例) なる
聴覚推定の助動詞「なり」の連体形。
係り結びのため「なる」に変化している。
雀の声を聴いて、「集まっているのだな」と推量している。雀そのものの姿は見ていない。
出で立ちがた
出で立つ
巣から出る、という用例が今一つ見つからないcFQ2f7LRuLYP.icon
出立する≒出発するという現代の意味と近い?
がた
2 時に関する名詞や動詞の連用形に付いて、だいたいその時分という意を表す。「暮れ―」「明け―」
デジタル大辞泉
枕草子の一五一「うつくしきもの」の例に、「瓜にかきたるちごの顔。すずめのこの、ねず鳴きするにをどり来る」とある。
昔から可愛かったのかね
現代語訳
ねやの上から、雀の声が集まって鳴いているようだ。いよいよ雀の子らも出でたちのころになったのだろうか。
2021-10-10 20:44 「ウツクシ」でめちゃめちゃ脱線した