いそのかみ布留の早田の穂には出でず心の内に恋ひやわたらむ
『新古今和歌集』
恋歌一・九九三
冒頭四首目
原歌は
石上布留の早稲田の穂には出でず心の中に恋ふるこのころ
『萬葉集』
巻九・一七六八・
抜気大首
初句・二句は「穂」を導く
序詞
いそのかみ
石上
とも
大和国
(今の奈良県)の
歌枕
で、その辺りを「
布留
」とも呼ぶ
布留
は、今の奈良県天理市布留町、
布留川
流域の地名
脇能物
に「布留」という曲がある
→
「布留」(謡曲)
同音の「古る」「降る」「振る」にかかる
石ノ上布留の山なる杉群の、思ひ過ぐべき君ならなくに
(萬葉集・巻第三・四二二・
丹生王
)
石ノ上布留の早稲田を、秀でずとも、縄だに曳へよ。守りつつ居らむ
(萬葉集・巻第七・一三五三)
口訳万葉集より
早田
(わさだ)
わせ
の稲を作る田
早稲
(わせ)は稲の品種のうち、早く成熟するもののこと
石上の布留の早生の田が、穂をまだ出さないように、心の内に思うて恋いわたるのであろうか
2022-07-20
21:17